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【故人サイト】デジタル時代の「死との向き合い方」を考える
平澤 歩東京大学 中国思想文化学研究室助教
「オンライン上で故人を生き返らせる」というSFめいた話が、実現に向けて動き出しているのですね。すごい時代です。随分と「21世紀感」が出て来ましたね(昭和生まれ的感想)。
ただ、AIの分析精度が低い、もしくはデータ不足のために、およそ故人が発言しそうもない言葉ばかりを発した場合に、遺族の慰めになるのでしょうか。
それだったら、恐山のイタコに口寄せしてもらう方が、よほど良いのではないでしょうか。
その一方で、故人の人格を完全に復元できた場合、今度は「チューリングテスト」(https://www.pasonatech.co.jp/workstyle/column/detail.html?p=8275)の応用版のような問題が生じます。すなわち、故人とそっくりそのまま同じ応答をするAIには、もはや故人そのものとしての人格を認めるべきなのでないか、ということです。
そもそも我々は、生身の人間についてさえ、他人に自我を認めるのはあくまでも、その出力である言動に基づいています。王弼の「言は意を尽くさず」、ウィトゲンシュタインの「カブトムシの箱」(https://zunolife.com/beetlebox/)の喩えにあるように、我々は他者の内側を覗き見ることはできず、内面を完全に表すわけではない言語を媒介して意図を示しています。
つまり、我々が生身である人間に対しても、それを「○○さん」という過去から継続して存在する個人であると認める際には、外在的な言語・行動のみに依拠しているのですから、AIが完全に「○○さん」として振る舞った場合に、同様にその本人として認めない理由がありません。
また、こういった問題をいったん措いておくとしても、
本人とそっくりそのまま同じ言動をするプログラムが完成した場合、「遺産は全て私のコピーに託す。このコピーに運用させよ」という遺言を残す人は出て来そうです。何しろ、遺族よりも遥かに、自分の理念や意志を正確に継いでくれるからです。
こうなって来ると、偉大な政治家や創業社長も、同様に後継者として自分のコピーを指名するようになり、結果的にAIが多くの国家や会社を運営することに……
もはや「21世紀感」を超えて「22世紀感」が出て来ましたね(昭和生まれ的感想)。

【新】故人のブログが物語る、死に直面した人々の「本音」
平澤 歩東京大学 中国思想文化学研究室助教
エリザベス・キューブラー・ロス(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%82%B6%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%BC%EF%BC%9D%E3%83%AD%E3%82%B9)の提唱した、死へ向かう五段階のプロセス(否認・怒り・取引・抑鬱・受容)の最終段階「受容」も、確かに古田氏の言う「死への覚悟と生への希望が共存した不思議な達観」のような内容でした。
もっとも、数多くの終末期患者を看取り、その経験を上記のプロセスにまとめ、ホスピスの起源とも言われるキューブラー・ロスも、彼女自身が死に至る病に直面した際には、「否認」「怒り」を露わにしたそうです。
死について向き合い続けた彼女でさえ、自分自身の「一人称の死」は初めてであり、いきなり「受容」という最終段階に到達することはできなかったのです。もっともこれは、彼女の提唱したプロセスを否定するものではなく、誰もがそのプロセスの最初から歩み始めることを、身を以て示したと言えます。
故人の死に向かうリアルな言葉は、我々の行く先を導いてくれます。明日の続きも楽しみですし、古田氏の著作もさっそく注文しようと思います。
300年伝来の荻生徂徠の資料、子孫が東大駒場図書館に寄贈
平澤 歩東京大学 中国思想文化学研究室助教
荻生家所蔵資料が新たに駒場図書館に寄贈され、徂徠学研究の専門家である高山大毅先生が、資料整理・研究の中心になるようです。
NHKでも紹介されました。(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220516/amp/k10013624711000.html)
今後、日本を代表する儒学者である荻生徂徠について、いろいろなことが新たに分かって行くのではないかと思われます。
今回寄贈された資料のうち、個人的には『広象棋譜』が気になるところです。
「広象棋」というのは荻生徂徠考案の将棋で、囲碁盤を用いた規模の大きいものです。『広象棋譜』はこのルールを解説したものです。
駒の中には「仏狼機」、つまりフランキ砲(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AD%E7%A0%B2)もあるようです。これは「八面射七路、連打二子(縦横斜め八方の七路以内の敵の駒を、二枚倒す)」という、破壊力バツグンの駒。西洋伝来の大砲に対して徂徠が抱いていたイメージが窺えます。
今回寄贈された『広象棋譜』には注釈もついているそうなので、徂徠考案の広将棋について新しいことが分かると嬉しいです。

【必読】ニュースでよく聞く「共同富裕」って何だ?
平澤 歩東京大学 中国思想文化学研究室助教
「共同富裕」とは何かという問題提起に対して、やや表面的な考察でとどまっている。もう少し思想史的に踏み込んだ解説が欲しいところ。
このスローガンには、習近平が毛沢東に並ぶ、もしくは毛沢東をも超える偉人として歴史に名を残すための野望が垣間見える。そして、我々はこれをイデオロギーの対立として考え、対抗して行かなければならない。
そもそもマルクスの理論では、その社会の物質条件や生産力に応じて社会体制・経済体制が規定されるとしていて、具体的には社会全体の生産力が向上するにつれて原始共産制→奴隷制→封建制→資本主義→社会主義と移行する。最初から社会主義をやれば良さそうなものだが、生産力が足りない段階で社会主義に移行すると、「みんな貧乏」にしかならない。
だから一旦は資本主義体制で社会全体の生産力を増やしておいてから、そこで生じた社会矛盾(富の偏在、社会分業の機能不全)を解消するために社会主義に移行し、「みんな裕福」になる。これが社会主義革命。
1949年の共産党政権誕生は、中国共産党にとっては「社会主義革命の成功」ではなく、単に旧体制の打破でしかなかった(毛沢東は「新民主主義革命」と表現)。
当初の計画では、まずは産業を発展させてから社会主義体制へ移行するというものだったが、何故か毛沢東は突如として社会主義化を急速に推進するようになり、1950年代の大混乱と毛沢東自身の失脚を引き起こし、そして60年代の毛沢東復権・文化大革命へと続く。
その反省から、いったんは資本主義的な発展段階へ戻したのが鄧小平の改革開放路線で、以後30年間経済が成長し続けて、中国の富はアメリカに迫るまで成長した。
そこでもう一度、社会主義的方向へ大きく振ろうというのが習近平の「共同富裕」。もしこれが成功すれば、習近平は毛沢東が失敗した社会主義革命を実質的に成功させたことになり、毛沢東をも超えてマルクスに並ぶ偉人として評価されるだろう。
これだけ大きな話なのだから、規制強化や規則変更などの政治リスクによって多少の不景気が生じようとも、習近平は意に介さないだろう。
そして、そのうち彼らは我々が自国の貧困を放置していることを批判するようになるだろう。下手をすると、我々の国の貧困層が彼らと「連帯」する可能性すらある。イデオロギーの対立なのだから、当然起こり得ることだろう。

【解説】強硬派が政府トップに。香港に希望はあるのか
平澤 歩東京大学 中国思想文化学研究室助教
林鄭月娥氏が途中で辞めなかったのも、再出馬しなかったのも、後任に強硬派の李家超が就任するのも、いずれも倉田先生が「なぜ香港では、弾圧が続くのか」の2番目に挙げている「反対勢力を相手に妥協できない」ということ、つまりメンツの問題が大きいです。
デモによって長官が辞めれば、デモに譲歩した、もしくはデモが起こったこと自体を「失敗」と認めることになります。これは出来ません。とはいえ林鄭氏が続投するのも、更なるデモを許すという意味になりかねません。そこで李家超氏が強硬策を取ることで「デモをやれば、デモ隊の要求から現実はむしろ離れていく」という結果を見せつけるわけです。
西洋的民主主義は「市民の権利を契約によって政府が代行する」という思想に基づきますが、中国の統治思想はそれと異なります。
表向きはマルクスレーニン思想や、共同富裕や、いろいろなことを言っていますが、根底としては「優れた王者が人々の父母として、人々を教化し、人々のより良い暮らしを実現する」という伝統的な思想に基づいています。
取り締まり強化はいわば、「駄々をこねて暴れる子どもを、しつけ直す」というようなものでしょうか。要するに人々を大人として扱わないわけです。だから妥協も交渉もしない。
もっともイギリスにも少し問題があり、それまでさんざん植民地として適当な扱いをして来たのに、中国への返還が決まった途端に急速に民主化を進め、人々に近代西洋的市民としての意識を芽生えさせました。
返還後の摩擦の種をまいておいたわけです。なかなか悪いやつです。

【デジタル副大臣】日本は、根本のシステムから書き換えよ
平澤 歩東京大学 中国思想文化学研究室助教
昨日の記事(https://newspicks.com/news/7065574/body?utm_source=newspicks&invoker=np_urlshare_uid7465205&utm_medium=urlshare&utm_campaign=np_urlshare)へのコメントで、予算や権限について言及しましたが、そのあたりもさすがに考えられているようですね。
また、ルールメイキングについて積極的に動いていることも、大変すばらしいことだと思います。与党の支持基盤だけでなく、中小企業やスタートアップも含めて、産業全体でルール作りに関与して行くべきです。
ただ、こうしたことをどんどん発信して行って欲しいものなのですが、それにも人手が必要というのが痛いところです。

【新教養】私たちのゲノムは、なぜ一人ひとり違うのか
平澤 歩東京大学 中国思想文化学研究室助教
遺伝子的変異が「ヒトの集団や種の維持のため、あるいは進化するために生じている」という間違った考え方は、一歩間違えると優生思想になります。
記事中にある通り実際には「生存に有利な変異はわずか」であるため、上記の考え方だと、集団や種の維持に不利な変異や進化に役に立たない変異は淘汰されるべき、ということになりかねません。
記事で述べられている、「集団のメリット・デメリットに関係なく、多様な個人を尊重することこそが重要」という考え方を支持します。
そして、我々がなぜ多様性を重んじるべきなのかというと、それは自然科学だけでなく、やはり人文学の視点からも検討しなければなりません。
ただ、医学を始めとする科学技術や社会インフラの進歩によって、もともと有害だった変異(たとえば近視など)が中立化して集団に固定され、有害遺伝子がゲノム中に多数蓄積していった先に人類がどうなるのか。
これは大変気になるところです。
沖縄復帰50周年記念式典 首相式辞全文「新たな時代の幕開け」
平澤 歩東京大学 中国思想文化学研究室助教
心に響かないというのは、総花的にバラバラと「〜〜します」「〜〜して参ります」というだけで、ビジョンも数値目標も優先順位もないからのように思われます。
たとえば、沖縄科学技術大学院大学はバイオや量子などについて研究していると言いますが、それと沖縄で開業やインフラ投資の多い飲食店や観光業とどう関係するのか? それらを進めることと「万国津梁」の精神の発揚とどう関係するのか?
また、基地負担について、どのようにどのくらい何を軽減するのでしょうか? 基地の跡地を活用するというけれど、それは普天間を退去する既存路線(辺野古移転の是非については議論がありますが)からすれば、当たり前のことです。
結局、各方面への気配りに終始しています。

【深刻】アマゾン「翌日配送」が人と地球に与える影響
平澤 歩東京大学 中国思想文化学研究室助教
Amazonは配達速度にこだわりがありますが、それによって色々なところに負荷をかけています。
たとえば、注文の際に到着日時の指定をできない商品が多く、不在時に届いてしまうことがあります。これは出品業者の問題ではなく、システムの問題です。
出品業者に問い合わせを送って、出荷日の変更を依頼することもできますが、その日付が機械的に設定される「配送予定日」よりも後の場合、出品業者がAmazonから「発送作業が遅れた」と見なされてペナルティを受けます(検索に出にくくなる。繰り返すと出品が停止される等)。
前職で通販をしていた時、日時指定を希望するお客さんがいたので、Amazonの運営に「顧客の都合で出荷を遅らせるのでペナルティを課さないで欲しい」と言ったのですが、
「それは出来ません」「顧客に連絡して、注文をキャンセルして、システムで機械的に設定される「配送予定日」が希望の日になるタイミングで再度注文してもらってください」という返答。
なんだかえらそうだなー、と思いました。

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