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割安なロシア産原油で精製した石油製品を国際価格で売りつけるインドの商魂 迂回ルートで間接的に原油をEUに輸出するロシア、身を削る売買はどこまで?
土田 陽介三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 副主任研究員
かつて景気予測をする際は「段階的接近法」という手法が主流でしたが、ある意味で、一種の特殊な現象論を捉えるに当たっては、様々な統計を用いて段階的に接近するしかないのが現状です。これはAI時代だろうと何も変わらない人間味がある作業でしょう。
ロシアが「制裁逃れ」の一環で、インドを通じてEUに石油製品を輸出しているという見方は、その実として「結果論」的な理解であると私は考えています。インドは確かに米ドルで利益を得ますが、OFACの規制がある以上、ロシアが得る利益はあくまでルーブル建であり、ルピー建てであるはずです。
米ドルであれば様々な国との取引に活用できますが、ルピーであればインドとの取引でしか利用できない通貨です。人民元でもUAEディルハムでの決済をという話もありましたが、オフショア市場が小さいので、インドでは目詰まりを起こしているという話です。
欧米と対立していなければ100得られた利得を、今は60しか得られず、かつそれがソフトカレンシーでしかない、というイメージでしょうか。これではロシア財政が思ったより潤わないのは当然かもしれません。
新興国の脱ドル化は「白昼夢」か。「南米共通通貨」構想はアルゼンチン離反で崩壊へ
土田 陽介三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 副主任研究員
アルゼンチンでドル化を主張するミレイ氏が大統領選で勝利したわけですが、経済政策面と共に注目されるのが、外交政策面です。
まず、来年1月の拡大BRICSへの参加が見送られる可能性が高いということがあります。仮に参加しても、アルゼンチンはかなり引いた立場から、BRICSと付き合うことになるでしょう。BRICSにはその実、新興国に対する求心力が強くないプラットフォームであることを明らかにするものです。
また、この流れで経済政策に目を転じると、ブラジルのルラ大統領が提唱していた南米共通通貨構想も破たんするということになるでしょう。アルゼンチンがドル化すれば、ブラジルとの間で共通通貨を導入することが不可能なためです。
欧米と対峙する新興国を中露がまとめ上げる、といった構図や、米国の凋落を好む構図もありますが、その実、新興国の事情は多岐にわたり、複雑であるということを、アルゼンチンの事例はよく示していると考え、このエッセイを書きました。
極右リバタリアンの大統領が誕生したアルゼンチン、何が起きているのか?
土田 陽介三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 副主任研究員
闇市場に相当するブルーダラーのセルレートは、11月17日時点で1米ドル=950ペソでした(公式レートは350ペソ程度)。18ー20日と休日であるため更新されていませんが、21日には一段と暴落するのではないでしょうか。
本当に公式にドル化をするのか、といっても非公式には高度にドル化していますので現状の追認となりますが、ミレイ新大統領は早くスタンスを示さない限り、ペソの闇相場は下落に歯止めがかからない状態となるでしょう(国民が闇市場でペソを投げ売りして米ドルの確保に努めるため)。
金本位制やドル化に次ぐ究極の固定相場制ともいわれる「カレンシーボード制」の運用にも失敗した経験が示すように、アルゼンチンの当事者能力は、非常に低い状況です。マクロ経済政策の運用そのものを米国に委ねることでしか改善が見込めないという悲劇です。
本エッセイでは、通貨主権の回復を謳ってきたペロニスタたちの失政が、かえってアルゼンチンの通貨主権に不可逆的なほどの打撃を与えてきたことを簡単に述べています。いわゆる民主化は、確かに左派勢力によって実現することが往々にして多いわけですが、その後の経済運営を誤ると(つまり成長よりも分配を重視すると、供給が追い付かない中で需要を刺激し続けると)取り返しがつかなくなることを、アルゼンチンの事例はよく物がっています。

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