前嶋 和弘

あるエコノミストと話したのですが、「今回の話はあまりにも政治的でついていけず、市場を見ているものには過去と同じように危機は回避されると思えた」とおっしゃっていました。政治をみていると「今回こそ、本当にまずいかもしれない」でした。何とか回避でき、安堵ではあります。

債務上限法案は下院を通過。賛成314、反対117。反対票の内訳は、共和党71、民主党46。想定通りでしょうか。久しぶりにC-SPANでずっと見ていました。 上院は「必ず通す」とマコーネルが行っているので、これで終わり。

ようやく光が。ただ、「デフォルトやむなし」だった共和党強硬派の一部はマッカーシーが妥協したことに対して不満は消えず。民主党としては過去2年に既に立法化させた様々な政策が止まります。いずれにしろ、アメリカの国内の分断は、世界にとって非常に大きなリスクであることが改めて顕在化。 民主党側としては、過去2年で法制化したコロナ対策の未使用分放棄、気候変動対策の一部、学生ローンの徳政令などを諦めるため、痛手ではあります。「デフォルトやむなし」だった共和党強硬派の一部はマッカーシー解任動議を進めるのかもしれません。何とも後味の悪い合意。 争点化していたIRSの国際的な脱税を監視する予算削減も果たしてよかったのかどうか。 共和党としては「民主党の無駄遣いをやめさせた」。民主党側としては「危機を救った」。2年後には再び危機に。

「数日延びた」のですが、それでもたとえ合意となっても「ぎりぎり」でしょうか。

債務上限問題が最初に政治的争点となった11年からいつも大ぶりな演技の跡、幕引きとなる「政治的なカブキ」。記事の通りでその後が重要ですが、ただ、今回はそもそも「幕引き」となるかどうか。

ようやく出馬。支持率ではトランプとかなりの差がありますが、「トランプより右」に出て、何とか予備選に行く熱心な保守層の取り込みを狙っています。「若さ」でどれだけ差を詰めることができるかどうか。 イーロン・マスクとの関係の深さから出馬宣言はツイッターで。ツイッターは、FOXニュースを辞めさせられたタッカー・カールソンを受け入れて、新しい発信の場とすることも決まっており、保守の情報発信の基盤になりつつあります。

フランスから見ればそうなるのかもしれませんが、G7全体では立場の差は目立たない程度かと思います。

日米韓台湾の半導体同盟「CHIP4」に対する中国の揺さぶり。米・マイクロンへの規制でライバルの韓国のサムスン電子とSKハイニックスにとっては中国での販路拡大に。ただ、米国からの圧力も懸念。

ゼレンスキー大統領の参加と平和公園での献花、さらにスピーチを通じて「広島」という単語に含む「平和への希求」の意味が、さらに現代的なメッセージに昇華したのではと思います。

極めて異例ですが、それだけG7の各国の立ち位置が一致していることを象徴。ロシアのウクライナ侵攻や中国の現状変更の動きへの対応、コロナ禍からサプライチェーン回復への課題など、各国の差はあったとしても目立たず。 2018年のG7では米国の鉄鋼関税の発動を「保護主義」としたカナダなどとの対立が目立ちました。トランプ前大統領は首脳宣言を承認しないよう米代表団に指示し途中退席。

「広島ビジョン」という非核化の方向性を確認することはここまでの岸田外交の到達点かと思います。G７全体では対中国、対ロシアの対応やウクライナ支援、気候変動などのグローバルイッシューなどが大きな課題ですが、広島開催ということもあり、まずは核軍縮の方向性を確認することが大きな成果。現段階では2008年のオバマの「核なき世界」のようなスローガン的なものなので、どこまで現実的にさせていくかは今後の大きな課題。

今回のG７期間中の具体的な「最大の成果」。ゼレンスキー参加でセレモニー的にも十分。