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イケア、着替え時間の賃金払わず 9月から支給へ
西脇 巧元労働基準監督官・弁護士・社会保険労務士・労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタント
上記の判例では、①実作業に当たり、作業服及び保護具等を着用するよう義務付けられ、②その着脱を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされており、③これを怠ると、懲戒処分や成績考課に反映され賃金の減少につながる場合があるには、所定始業前及び終業後における作業服及び保護具等の着脱時間について使用者の指揮命令下にある労働時間と判断されています。
一方で、同判例では、当日の作業終了後に事業所内の施設において手洗い、洗面、洗身、入浴を行い、またその後に通勤服を着用する時間については、特に使用者からこれらの行為を行うことは義務付けられておらず、当該行為をしなければ通勤が著しく困難であるとまではいえないとして使用者の指揮命令下にある労働時間ではないと判断されております。このことから、仮に、①のように実作業を行うにあたり作業服等の着用が義務付けられているとしても、②の着脱行為について事業場内において行うことが特に義務付けられておらず、あるいは事業場内で行わざるを得ないという特段の事情がないのであれば、着脱行為及びこれに付随する移動時間については、使用者の指揮命令下にある労働時間ではない、と整理する余地もあると考えられます(なお、③は①及び②の補強要素と考えられます。)。
このあたりは労基署でも事実認定と評価が分かれるところであり、記事を受けて、着替=労働時間でないことは含み置く必要があろうかと思います。
「派手な髪色もOK」で従業員にどんな変化が? ユニーが50年ぶりルール緩和で経験したこと
西脇 巧元労働基準監督官・弁護士・社会保険労務士・労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタント
リーガルの話で恐縮ですが、身だしなみのうち、特に頭(髪)や顔(髭)については、職場のみで変えることは難しく、従業員の私生活上の自由や人格にも影響することになりますので、これに対して服務規律を適用し、また人事措置を行うには厳格に審査される傾向にあります。つまり、会社ルールで従業員に牽制はできるが、過度に制限もできないし、不利益取扱いには慎重に対応ということですね。掲載記事のように、社会的に受け入れられるようになると(顧客からの信頼や職場秩序への影響も特段ないとなると)、そもそも規律する必要があるのか、必要があるとしても、その適用範囲はより狭くなっていくのかもしれませんね。
過労死ライン未満でも労災、労基署が判断見直す 深夜勤務など考慮
西脇 巧元労働基準監督官・弁護士・社会保険労務士・労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタント
本件については,労災不支給の決定で行政訴訟を提起され係争中であったものの,令和3年9月15日に脳・心臓疾患に関する労災認定基準改正施行されたことを受けて,行政官庁が改めて当該基準に即して検討し,自らの処分を取り消した事案と思われます。
もっとも,厚労省の見解及び報道内容では,新認定基準が適用されたような記載がされていますが,旧認定基準においても,月80時間未満でも認定されている事例はありますし,深夜勤務等の不規則な勤務は労働時間以外の負荷要因として従前から考慮されておりますので,本件の時間外労働の水準に鑑みれば,旧認定基準に即して検討しても,労災支給の決定がなされた可能性があったと考えられます。
いずれにしても,検討会報告書及び厚労省の留意通達に照らせば,月平均65時間~80時間未満の水準でも、労働時間以外の負荷要因と総合して労災認定される可能性がより高まったといえますので,今後の労災による調査・決定,裁判への実務の影響が注目されます。
コロナ感染死で勤務先提訴 遺族「予防義務怠った」
西脇 巧元労働基準監督官・弁護士・社会保険労務士・労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタント
職場でクラスターが発生した場合には、感染経路が特定されるため、現行の労災認定の基準に従いますと、原則業務上災害となると思われます。コロナによる業務上の災害統計によると、圧倒的に保健衛生業が多いのですが、製造業、建設業、接客娯楽業、商業についても比較的多い傾向にあるため、安全配慮には特に気をつける必要があると思います。労災=安全配慮義務違反にはなりませんが、厚労省が出しているチェックリスト(※)に基づき、法律上は最低限として、労使協力して感染予防に取り組むことが望まれます。
※https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00145.html
違法な時間外労働 厚労省が立ち入り調査の事業所の37%
西脇 巧元労働基準監督官・弁護士・社会保険労務士・労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタント
まず、ここ5年の数値から。
2016年度 2万3915→違法1万272(43%)
2017年度 2万5676→違法1万1592(45.1%)
2018年度 2万9097→違法1万1766(40.4%)
2019年度 3万2981→違法1万5593(47.3%)
2020年度 2万4042→違法8904(37%)
今回はここ5年で初めて違反事業場数が1万を下回り、違反割合が40%を下回っている。数値だけでみると働き方改革関連法の効果が出ているようにも思えるが、コロナ禍で労働時間自体が減っている可能性がある。また、調査の母数自体が減少しており、当局もコロナ禍もあり、従前に比べて十分に調査できなかったのではないか。コロナ禍が比較的落ちつくと、その反動などで労働時間が増大する可能性もあり、社会全体で規制強化の抑止効果が出ているかは、次年度以降の動向をみる必要があるだろう。
全米労働関係委員会がグーグルを従業員の監視やその他の労働違反で告発
西脇 巧元労働基準監督官・弁護士・社会保険労務士・労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタント
米国の集団的労使関係法による手続は救済の申立がなされた場合、かなり多くが任意に解決されている印象がありますが、記事を見る限り、お互い言い分があるようです。
いずれにしても、このように広く報道されることによって、企業が労働者に優しくない、あるいは権利をないがしろにしているのではないか、といったような疑いが生じるだけでレピュテーションに影響を及ぼすことには留意する必要があります。
人材が企業経営や戦略に大きな関わりがあるとすると、いかに労使関係の問題を顕在化させないようにするか、しても最小限に抑えられるか、といった人的リスクマネジメントがますます重要になってくるのではないかと思います。
NORMAL
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