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牛乳販売店の苦境際立つ、昨年の廃業は過去最多 地域に根差す専業店ほど苦しく
産経ニュース
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
私が子供のころは、牛乳は宅配が当然で、どこの町にも牛乳屋さんがありました。私が育った大阪市内も同じです。紙パックなんて便利なものは無かったですし、我が家にはそもそも冷蔵庫がありません。毎朝届く牛乳を、新鮮なうちに飲ませて貰ったのを覚えています。 ところが冷蔵庫が普及しスーパーマーケットが勃興し、紙パックといった持ち運び易い容器が拡がると、従来の販売ルートが一変し、町の牛乳屋さんの多くが消えて行きました。これまで頑張って来られた牛乳屋さんには申し訳ない言い方ですが、こうした状況下、スーパーマーケットやコンビニで紙パック入りの牛乳を販売することを禁止して、牛乳屋さんを守るでしょうか。もし牛乳配達事業議員連盟なんていうのがあってそれに見合う利権があるなら、衛生面だとかなんだとか様々な議論が持ち上がり、牛乳屋さん以外の牛乳販売が禁止され、今に至っていたかもしれません。 なぜこんな話を持ち出すかというと、最近話題になったカーシェアリングの問題が、私には牛乳屋さんの盛衰とダブって見えてしまうからなんです。タクシーは、専門の運転手と専用の駐車場を備えた事業者に政府がタクシーという名のお墨付きを与えて安全安心を担保する社会インフラです。情報が乏しく安全を守る枠組みが乏しかった時代には、知らない土地で知らない自動車に乗るにはそうした制度が必要でした。 ところが今はGPSが発達しキャッシュレス決済が普及し、走行履歴と決済履歴と客と運転手の相互評価がクラウドに蓄積されてAIがそれを分析し、スマホ一つで安心して乗るべき車と客が選べます。そこで生まれたのが当局の認可に代わってSNSが安心安全を担保するカーシェアリングという名の新しい社会インフラです。社会的な役割を終えたタクシー事業者が日本以外の国で急速に減ってカーシェアリングが拡がる中で、我が国はタクシー事業者を守って新しい社会インフラの導入を認めません。鳴り物入りで始まった”日本版カーシェアリング“は既存事業者の運転手不足を解消する手段に留まって、本来のカーシェアとは似ても似つかぬ代物になりました。 タクシー事業者を守ってカーシェアリングを拒むのは、いわば、技術と時代の変化に掉さして牛乳屋さんの存在を守るようなもの。筋違いの話ではありますが、私には変化を拒んで立ち遅れて行く日本の姿を捉える一つの鏡に見えて仕方がないんです f(^^;
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プーチン大統領、圧勝で5選 87%超、史上最高得票
共同通信
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
真の独裁国家では、投票に行って支持票を投じないと反乱分子と見做されて身が危くなりかねません。ちなみに2002年のイラクの選挙でサダムフセインは100%の投票率で100%の指示を得たと聞き及びますし、北朝鮮の選挙も投票率はほぼ100%だったはず。今回のロシアは投票率が77.44%で得票率が87.3%ということなので、『投票に行かない自由』と他者に投票する自由は若干なりとも残っているということなのか、それとも本当に多くの国民が本当に支持しているということなのか。 投票に行かない人と他者に入れた人を共にプーチン氏への批判勢力と見て支持する国民は67.6%です。これをどのように読むべきか。微妙なところではありそうですね・・・  塩崎先生のコメントに「プーチン政権がロシア領に組み込んだウクライナの領土では、プーチン大統領の得票率が、ドネツク人民共和国 96%、ルハンスク人民共和国 95%、ザポロージェ 93%」とありますが、そうであるとすると、投票率は分かりませんが、これらの占領地域では人々が投票に駆り出され、賛成票を投じざるを得ない環境が生まれていたこともありそうな・・・  (・・;
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日銀が大規模緩和の解除を19日に決定へ、YCC終了-報道
Bloomberg
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
「円は年初来でドルに対して5%余り下げており」とありますが、異次元緩和が始まった当初の100円前後から比べると、円は4割近く下げています。日本人が海外に行って感じる物価と外国人が日本に来て感じる物価が同じになる為替相場は90円台後半から110円台前半程度というのが通り相場なので、150円前後の円は如何に何でも安すぎます。その結果、ラーメンが海外に行くと2~3千円もして、餃子とか何とかつけて昼飯にすると4~5千円もするといったとんでもない話が出ているのです。 物価に責任を持つ、言い換えれば通貨の価値に責任を持つのが中央銀行。円相場は財務省の管轄で日銀は関係ないと黒田日銀は主張し続けて来ましたが、異次元と言う名の異常な金融緩和が円の価値の毀損策であるのは明らかです。まして、マイナス金利はともかく、YCCもETFの買い入れも、世界のまともな中央銀行は禁じ手とする奇策です。普通の感覚をもつ人なら、早くなんとかしたい、なんとかして欲しいと思うんじゃないのかな・・・  とはいえ長く続いた異常な金融緩和の結果、日本経済の背後には、欧米で起きたような金利の上昇に耐えられない構図ができています。仮にこの3月に1%という長期金利のめどを撤廃しても、政策金利を低く留めるとともに国債の買い入れを継続して長期金利を低く抑える政策は続けざるを得ないでしょう。市場が利上げを催促する状況に陥らないよう念じます。 いまの我が国の状況を斟酌すると、インフレ率を名目金利が下回る状況を脱する状況を作るのは容易なことでなく、政策変更で円が幾分高くなることがあるにせよ、円が本来持つべき購買力を取り戻すことは今となっては難しそう。残念なことではありますが、たとえ政策の変更があっても、日本人にとって海外旅行は高嶺の花、いや高値の花に留まることになりそうな気がします。
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EU、凍結ロシア資産の利益をウクライナに提供する法案を策定
Bloomberg.com
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
主要7カ国(G7)、EU、オーストラリアが凍結する約2600億ユーロ相当のロシア中銀資産のうち3分の2以上を占めるとされるEUの意向がこの問題で大きく働くのは確かでしょうが、ロシア国内には独・仏はじめ欧州企業を中心に西側諸国の資産、なかでも欧州諸国の資産がたぶん同額程度残っているはずで、ロシア向け資産が相対的に少ない米国のバイデン大統領が主張する通り凍結した資産を差し押さえてウクライナに回してロシアが報復に出れば、EUは相当な返り血を浴びるはず。そんな状況下、凍結した資産から生じた利益に課税する(つまり資産本体と利益そのものは没収しない)形で落としどころを探るといったところでしょうか。 国際法に詳しい訳ではないですが、直截的な交戦状態にあるわけでない国の資産を第三国が没収することが前例になると、それでなくとも世界の分断が進む中、グローバルな資金移動は難しさを増しそうです。もし仮にこれが成立すると、ロシアから敵対国家と見做されている日本企業がロシア国内に持つ資産はどのような影響を受けるのか、そして我が国は差し押さえた数兆円の資産を巡ってどう動くのか。EUの動きに関する記事ではありますが、我が国も埒外にはいられぬ内容を含んでいそうな気がします。 (・・;
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東証急反発、終値1032円高 円安で今年2番目の上げ幅
共同通信
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
1989年末の過去の史上最高値から20年以上下げ続けた日経平均株価が反転上昇に転じ、10年かけて過去最高値を更新したわけですが、上昇に転じるきっかけは、安倍政権の誕生で金融が大胆に緩和されて円安になり、大企業を中心に輸出企業が儲かるとの思惑でした。 日本人が海外に出て感じる物価と外国人が日本に来て感じる物価が同じ程度になる相場(≒購買力平価)は90円台後半から110円台前半程度と見るのが大勢です。日銀が円を大量にばら撒き金利を抑えて円の価値を毀損した結果、ドル円は150円前後といった極端な円安になっているのです。 円安で輸出企業が儲かるとの思惑で株が上がること自体に文句はないですが、これだけ極端に安くなった円が、日銀が異次元緩和の出口を探っているにも拘わらずちょっとした要因で円安に振れ、円安で円建て利益が膨らみそうな企業の株が買われる現象に、日本の未来にとって危ういものを感じないでもありません。いずれ円高に戻ることを想定して円が安い今のうちに買っておこうという外国勢の動きならまだしも救われるところがありますが、円安の継続が期待されているなら、安い日本、換言すれば国民の購買力が世界の中で極端に下がった日本の現状が固定化すると見られているわけですからね・・・ (・・;
167Picks
「賃金上がりすぎ」で負のスパイラルに陥り始めたドイツ。「賃上げ」課題の日本との違い
Business Insider Japan
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
世上、賃上げを伴うインフレが起きれば国が栄えて国民が豊かになるかのような議論が横行していますけど、生産性が向上しない中で起きる賃金と物価の共振が、実質賃金を継続的に上げる好循環になるとは限りません。強い企業が日本を逃げ出す中で起きる賃金上昇と物価上昇のスパイラルは、インフレで起きる円安圧力が交易条件を悪化させ、中長期的に実質賃金を下げる方向に働くこともあり得ます。そうなれば、賃上げ圧力とインフレ圧力の共振は、賃金と物価の悪循環に陥ります。 賃金と物価の好循環は、企業が生産性を高めて利益の一部を従業員に還元して需要が増えて消費者物価が上がる傍ら、企業に残った利益が生産性を更に向上させる投資に回って生産コストが抑制され、消費者物価と生産者物価の上昇率の差が企業に更なる利益を齎して賃金を上げ成長資金を企業に与える形で起きるのです。日銀と政府が手に手を取ってカネをバラ撒いて起こすインフレがこうした好循環を起こす保証はありません。ドイツで起きたインフレと物価の共振が生産性の向上によるものでない以上、「賃金上がり過ぎ」という事態が賃金と物価の悪循環を招くのは理の当然。 円安で輸出企業を中心にドル建ての利益が水膨れし、価格転嫁が容易になって儲けが膨らむ一方、賃上げが物価上昇に追いつかず実質賃金が下がり続けているのが我が国です。その結果、労働分配率は大企業を中心にインフレ渦中で目に見えて下がっています。記事が示唆する通り、これを取り戻して実質賃金を上げ需要を喚起することの重要性は論を待ちませんが、それがインフレと賃上げの“いたちごっこ”に陥れば、ドイツ流の悪循環に陥らぬとも限りません。 記事の趣旨から外れはしますけど、インフレ・デフレが実体経済を動かす主要因であるような認識は、そろそろ改めるべきであるように感じる昨今です。
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名目GDP1000兆円、努力継続で21世紀前半の達成視野=岸田首相
Reuters
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
年間3%のインフレを続ければ、実質的な生産が全く増えなくとも今世紀前半に名目GDPは1000兆円を優に超えるはず。しかし、それでは意味がありません。国を富ませ国民を豊かにするには実質的な成長力を高める必要があり、そのため「生産性の向上、労働参加の拡大、出生率向上などに構造的に対応していく必要がある」ことは論を待ちません。 しかし、異次元の少子化対策が成功して出生率が向上しても、その効果が労働力の増加として現れるのは今世紀半ばも近づく20年以上も先の話です。労働参加率にしても、高齢者と女性の活用に努めた結果、現時点で日本はG7中2位の位置にあり(ILO調べ)、高齢化が今後40年続くことを勘案すれば、引き上げは物理的に見て容易なことではありません。残された道は設備投資を促し技術力を高めて生産性を向上させることですが、ガソリン代を抑えてインフレ率を糊塗するために昨年9月時点までで6兆円、今年4月にはおそらく10兆円を超えるカネをバラ撒く傍らで、日本のビジネス環境を改善して生産性を向上させる施策に回す税金は微々たるものに留まります。異次元の少子化対策やインフレ対応と称して家計にばら撒くカネもまた然り。どこまで日本の未来を考えて施策を打っていらっしゃるものなのか・・・ 岸田総理も今世紀半ばには90歳を超えている。逃げ切り世代の政治家はばら撒き策で足元の景気を糊塗して国民の歓心を買えば事足りるでしょうが、20世紀半ばを人生の盛りで生きる今と未来の若者は堪ったものではないでしょう。生産性が我が国で向上する環境を如何にして作って行くものなのか、抽象的な話に終始せず、投入する資金と施策を具体的に列挙した答弁が聞きたいな ( 一一)
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日銀のマイナス金利解除へ秒読み、リクルートHDなどトップの反応は
Bloomberg
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
賃金上昇を伴うインフレに見通しが立ち、異常な円安を招いて日本国民の購買力を落とす異常な政策が漸く出口を見出せるのは良いことですが、生産性の恒常的な上昇を伴わない限り、賃金と物価の共振が良い循環になるとは限りません。強い企業が日本を逃げ出して、円安が資源を輸入にたよる我が国の交易条件を悪化させかねない状況下、円安の原因になるインフレの定着が、継続的に実質賃金を上昇させて庶民を豊かにするとは限らないんじゃないのかな? インフレが激しくなってから2年に亘って実質賃金が下がり続けたのがその証左。 円安でドル建ての利益が膨らみ価格転嫁が容易になって利益が上がって労働分配率が下がっているので、今年は過去の実質賃金低下を補う形で一時的に実質賃金が上がる可能性はあるのでしょうが、生産性の上昇を伴わない限りそれは一時的なものにとどまって、実質賃金の継続的な上昇は期待できないような気がします。規制で無理な賃上げと下請け企業の価格引き上げ容認を迫れば、強い企業がますます日本を離れそう。 実質賃金を落とさない形で進む賃金上昇を伴うインフレは、マクロ経済スライドで公的年金の支給を抑え、インフレ下でも金額が増えない企業年金の実質的な価値を下げ、円建ての預金を目減させる形で企業と政府の負担を軽くします。そういう意味では現役世代にメリットはあるのでしょうが、せいぜいその程度のことでしょう。生産性の向上がない限り賃金と物価の共振が好循環になるとは限らず、生産性の向上を日銀が金融緩和で演出することができないことは、意識に留めておく必要がありそうな気がします。 とはいえ異常な緩和の出口はいずれ通らざるを得ない道。賃金と物価の悪循環が起きず、異常な緩和の見直しが水面下に溜まったリスクを顕在化させる形で景気を冷やさないことを念じるばかりです。
235Picks
国が衰退しているのは明らか─それでも日本人の「平和ボケ」はいまも健在 | どうしてそんなに無頓着?
クーリエ・ジャポン
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
「いまの生活状況にはかなり満足」、「自分の生活が充実して健全である限りは、結構幸せ」そして選ぶ政治家は「現状維持の使者」 (*゚0゚)。_。)"ウンウン 医療機関、新聞社、タクシー会社、政府の音頭取りを起点に○○業協会を構成して規制と助成で保護される大企業から様々な補助金と税制で守られる中小企業に至るまで、あるいは実質無税で使えるカネを合法的に手に入れる立場の政治家から終身雇用のサラリーマン、末は政府の保護を手厚く受ける弱い立場の人々に至るまで、皆がそれぞれに持つ小さな既得権益を守ることにのみ汲々として変化を好まないのがこの国の今の国民の特性じゃないのかな・・・  昔は良かった式の年寄りの繰り言に聞こえるかも知れないけれど、私が物心ついたころの我が国は、燃え滾る戦後復興の意欲に突き動かされた人たちが、規制も助成も及ばぬ混沌の中で変化を求めて必死に学びかつ働いていたように感じます。私が高校と大学に通って働き始めた当時でも、そうした雰囲気はまだそれなりにありました。しかし、日本が急速に豊かさを増す中でそうした雰囲気は次第に薄れ、官僚組織が国民の利益より自らの安定と利益を優先する形で規制と助成を蔓延らせ始め、豊かさに慣れた国民は助成と規制に頼って国への依存心を強め、政治家とメディアも矜持を捨ててそうした雰囲気に乗っかって、今では変化を嫌い変化が起こせぬ文化が我が国に定着したように感じます。 戦後復興を牽引した世代が昼夜を分かたず必至で頑張る原動力になった刻苦勉励・勤勉努力といった戦前の教育の価値観は、今ではむしろ白い目で見られるに違いない。 1990年のドルで測ったGDPと今のそれとを比べると、中国は45倍、韓国は6倍、米国は4倍、ドイツ、イギリス、フランス等の欧州諸国も3倍弱になっています。片や我が国は僅か1.3倍に過ぎません。ドルで測ったGDPは、国民が稼ぎ出して政府と国民が世界の中で分けて使える日本の所得です。それが我が国だけ停滞しているということは、世界の中で日本人が相対的に貧しくなり続けていることを意味します。しかし、いまのところ食うに困るわけでない人々は、行く先に待ち受けるリスクに気付かない。逃げ切り世代と言われる化石のオジイの余計なお世話かも知れませんけれど、変化を嫌い、小さな既得権益をそれぞれに守り続けていて大丈夫 (・・?
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令和の日本は「バブルの豊かさ」を取り戻せない株価最高値を更新しても | 英紙が1989年との違いを徹底検証
クーリエ・ジャポン
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
以下は、日本中が高揚感に溢れていた時代を生きた化石世代のオジイの感想に過ぎません。昔は良かった式の繰り言と捉えられればそれまでです f(^^; 日本の外貨資金繰りが改善して海外渡航時の外貨買入が自由になって、いつでも海外旅行に行けるようになった1973年に働き始め、バブルに至る兆候が出た1985年に投資顧問会社の設立に参画して日経平均株価が史上最高値をつけた1989年12月末まで勤め上げ、米国民の誇りの一つであったロックフェラーセンターを三菱地所が買収した直後にニューヨークに移り住んで日本経済の頂点とその後の凋落ぶりを海外で体験し、外貨資金繰りに苦しみ始めた日本の銀行に90年代の終わりに戻って国際金融法人相手の部署を担当し、逼迫する外貨与信枠を絞らないよう、当時は多くの日本人が“怠け者の国”と見下していたイタリアにまで頼みに行かざるを得なかった私には、「バブル期にみなぎっていた陶酔感も達成感もなかった」との評価が実感として良く分かります。「かつて家電と半導体分野で築いた地位を韓国と台湾の競合企業に奪われ、『米国の競合』という称号は中国のものになった」という慨嘆もまた同じ。 戦前の教育で刻苦勉励、勤勉努力の精神を叩きこまれた親の世代が復興の意欲に燃えて戦後の焼け野原でナベ・釜・ミシンを作り始めて先進国の技術を貪欲に吸収して世界に挑戦し、それを引き継いだ世代も日に夜を継いで学び働くことを厭わない雰囲気がありました。自分と家族のメシ代は自分で稼ぐのが当然で、明日は今日よりきっと良くなると信じて頑張ることが美徳とされた時代です。その背景には、生産性の高い産業で働く人口が急増し、可処分所得の25%近くに達した家計の貯蓄が民間企業の成長投資に回り、技術が急速に伸びる或る種特殊な環境があったのも事実です。 円安でドル建ての利益が膨らみ、極端な円の毀損策で労働力と日本が生み出すモノとサービスを安売りし、インフレを錦の御旗に価格を引き上げて企業は儲けていますけど、その代償として賃金の価値が世界の中で下がり続けているのは間違いのないところでしょう。誤解を恐れず言えば働かない、働かさない、頑張らないことを美徳とする風潮が広まって、国への依存心も増しているような気がします。株価が史上最高値を更新したといっても、その価値も背景にあるものも違うことは残念ながら間違いなさそうな・・・ (・・;
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アングル:内需株にフォローの賃上げ、中小への広がり懸念 上値に不透明感も
Reuters
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
長く続いたインフレで、総合的な物価は2年前と比べて8.8%上がっています。一方、定昇とベアを含む連合の賃上げ率の集計値は昨年が3.58%、今年が5.28%です。 定昇は高給の高齢者が退職して低賃金の若手が入社して年齢が一歳あがることによる賃金の上昇ですから、インフレをカバーする原資にはなりません。定昇部分は極めて控えめにみても2年で3~4%程度ありますから、インフレをカバーするベアの部分は2年間でせいぜい5%台半ばといった程度です。輸入に頼る資源価格の上昇と円安による交易条件の悪化で我が国が生み出す価値の一部が海外に流出していますから、賃上げがインフレ率に追いつかないのは当然です。 円安でドル建ての利益が大きく膨らんで労働分配率が下がった大企業でさえ、2年合計してこの程度の賃上げですから、円建ての収益が主体で価格転嫁もままならぬ中小企業が持続的に賃上げするのが難しいだろうことは想像に難くありません。ここ2年で急速に下がった労働分配率を旧に復す形で実質賃金が一時的に上がるにしても、社会保険料の増加や増税が話題に上るなか、消費者の紐がさして緩むとは思えません。 コロナ渦中で急進した2020年とその余波が残る2021年に日本の家計は貯蓄を大きく溜め込みました。賃上げでムードが変わればそれが取り崩されて消費が盛り上がる期待が持てますが、今の諸般の情勢下では「賃上げと消費の連動性は限られるとの見方」的を射ていそうに感じます。株価を囃したい証券関係の人たちの熱い期待はわからないでもないですが・・・ (・・;ウーン
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日銀、マイナス金利解除で調整=高水準賃上げ、物価2%実現に自信―連合集計踏まえ最終判断
時事通信社
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
「マイナス金利を解除すれば07年以来17年ぶりの利上げとなる」とのことですが、2016に導入されたマイナス金利政策は、銀行が日銀に預ける当座預金の一部にマイナス金利(一種のペナルティー)を課して預入を抑制する政策で、基礎残高には今でも0.1%の金利が付き、マクロ加算残高の金利はゼロパーセントです。マイナス金利の見直しに合わせて日銀が大半の預金に金利をつける昔の構造に戻すなら影響は大きいですが、今の構図のままマイナス金利部分の利率をゼロに戻すだけなら、投機的な動きは別にして然程大きな影響が出るとは思えません。今月の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除に手をつけるとして、どこまで踏み込むことが出来るのか・・・ それにしても、多くの企業の決算前という微妙なタイミングであるにも拘わらず、4月なり7月なりを待たず解除を急ぎ始めたのは何故なのか。過去2年累計で8.8%も物価が上がっていますから、今年の春闘で仮に足元のインフレ率を超える賃上げが為されたとしてもインフレで縮んだ消費マインドの好転には限りがある可能性がありますし、中小企業を含めた全体の賃上げ率が思いのほか伸びないことがはっきりすれば、日銀は異常な金融政策の出口を探るきっかけを失うこと無きにしもあらずかも。下衆の勘繰りに過ぎませんけれど、仮に3月に見直すとすれば、高率の賃上げが喧伝されているうちに手をつけておきたい心理が多少は働いているんじゃないのかな (・・?
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マイナス金利解除へ「環境整った」 日銀関係者、春闘情勢受け
毎日新聞
日銀正常化で迫る「金利のある世界」、市場や家計に起こる変化に注目
Bloomberg.com
辛坊 正記(株)TOASU特別研究員(経済評論家・コンサルタント)
欧米で起きたように僅か2年ほどの間に短期金利が4~5%、長期金利が3~4%も上がれば、政府の利払いが膨らみ日銀が債務超過に陥り、変動金利ローンで高騰したマンションを買った家計や短期転がし借入で設備投資と長期運転資金を賄う企業が苦境に陥り、カネ余りで集まる資金の運用先に困って長期の債券を積み増したりした地方銀行が立ちいかなくなって、日本経済が大変な事態に陥ることは想像に難くありません。長く続いた財政拡張と異次元緩和の組み合わせで、日本経済の背後に金利上昇に耐えられない構図が出来ているのは確かです。 とはいえ日本は欧米諸国のように9%だ11%だといった極端なインフレに陥ったわけでなく、政府と民間を併せた日本全体の外国との取引、即ち経常収支は黒字を保っていますから、政府は国債を発行して一定程度財政赤字を賄い続けることができますし、日銀も時間をかけて金融正常化の道を探ることが可能です。そういう意味で、金融政策が正常化に向っても金利が急上昇する可能性は僅少で、金利はインフレ率を引き続き下回り続け、名目GDP対比の政府の借金が“インフレ税”の効果で寧ろ軽くなることすらあり得ます。金利がある世界に戻っても、今と変わらず国民がじわじわ貧しくなる状況が続くに過ぎないように感じます。 水面下で溜まった金利上昇に耐えられない構図、いわば灰色のサイが暴れ出す可能性があるとすれば、今は想像できない何らかの要因で円と国債への信認が急落し、一時の欧米並みのインフレに我が国が襲われ、経常収支が赤字に転落して政府が外国から借金せざるを得なくなった時でしょう。滅多に起きることはないでしょうけれど、万が一にもそういう事態になったら大変です。日銀がマイナス金利政策を解除しイールドカーブコントロールを緩める程度のことでそうなることはないにせよ、水面下で灰色のサイを育てる行為は早急になんとかすべきであるように思います。
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