廣田 勝年

株主総会が近づくにつれて、新聞でもアクティビストというワードを目にする機会が増えてきた。ただ、欧米の優良投資家とアクティビストと言われるような投資家もいうことが非常に似通ってきていることは、優良企業であれば感じ取っているはず。 時価総額が1000億円未満の事業会社では、この優良投資家と会う機会がそもそも少ないため、何が正しいのか、もっと言うと時代の変化を感じとることができていないと感じるケースが多い。 上場企業の中には、株主の当然の権利をいまだに総会屋への対策をベースとした手法を用いている。投資家目線の吸収から目を背けるのに拍車をかける金融機関やアドバイザーが多いことが実は病巣の一つであったりする。この手のコンサル側では、実は世代交代（総会屋対策⇒企業防衛）が急務！

これは久々に衝撃的なニュース。フォローアップ会議などでもさんざん投資家サイドのエンゲージメントキャパシティの問題がさんざん言われていたが、ここまで迅速に決断されるとは思っていなかった。 このニュースを見て、上場会社のIR部門（特にプライム2100社で時価総額低いところ）は気づいているだろうか。自社の機関投資家株主が激減していく＝上場維持基準を満たせなくなる可能性が激増したことに。。。 現状は、どの企業もIR頑張りましょうの機運が醸成された。ただ、4年後はIRは必要なくなる企業が増加する。

色々な海外の著名投資家のコメントが掲載されているが、自分のコンサル実務も踏まえて最も共感するのはZENNOR ソルター氏の下記コメント。 > 問題は市場が二分化していることだ、と彼は指摘する。トヨタのような大企業は株主のために多くのことをしているが、時価総額20億ドル以下の企業の多くでは充分ではない。 アクティビストや東証が指摘する企業の広義のガバナンス改革は、事業家が理解するのに時間がかかる。投資家とほぼ面談機会がなかったり、PLの質問ばかりの短期業績中心のIR面談ばかりをしている中小企業が全くついていけないのは当然。 NISAにより個人投資家は手元現金が投資に向かい始めた。企業にも配当減税などの施策を持ってしないと、中小型銘柄への資本効率の浸透には時間がかかりすぎる。

議決権行使会社はネガティブチェックするのが仕事なんだろう。しかしながら、経営者のカリスマや独自性が否定されればイノベーションは後退する。画一的な判断によって未来のユニコーンが消されることなんかもあるかもしれない。 そもそも、企業のライフサイクルやバリュエーションや、セクターなどの違いを同一化して議決権行の合理的な方針など生み出せるものなんだろうか。

日本企業の90％以上が事業における営業利益率は20％以下。対してUSでは20％以下なんて事業にはどんどんメスが入る。 報酬の多寡ばかりが報道されるけど、その差の裁定のためには終身雇用をはじめとした労働関連法規や、少し進んできた持ち合いとか、本当に機能するガバナンス体制とかの無駄を破壊できる基盤が整わないと変わらない。

メインバンク制や持ち合いよる安定成長重視の世界観から海外投資が目を光らす投資家目線の時代へ。 これは金融グループ内においてもパワーバランスが崩れるきっかけになるし、金融グループ内のリスキリングが急務。 銀行の企業への影響力を維持しながら投資銀行が金融グループの経営戦略を担えれば良いのだろうけど、色々あってこういうことが起きる気が。。 ただ、実質どの金融グループも銀行、証券間で出向などが盛んであり、どこまでが良くてどこまでが悪いのかは実務上明確な制度が追いついてないんだと思う。

ファシリテーターが重要だというのは納得。ただ、子供相手の「教育」には良いかもしれないということ。実際の「仕事」の場においては、対話をすることによって、自分の能力やスキルが可視化されることを恐れる人は多い。要は対話を避ける、もしくは業務の具体化を避ける。こういう人は多動によって、実績につながらない意味のない仕事を繰り返す。 なので、行動力ではない実行力（リーダーシップ）のある人に裁量権を与えるというボトムではなくトップダウンの方が機能する。

コーポレートガバナンスという言葉。これを聞いて多くの人は「ブレーキ」を想像する。だが、今論点になっていることはむしろ「アクセル」として機能させること。 本来、ブレーキというディフェンスとしての機能とオフェンスの機能を双方任されているという認識のある社外取締役はどれほどいるだろう。ただの名義貸しビジネスは早期に終焉を迎えてほしい。社外取締役は、社内取締役とは全く違うし、監査役とも全然違う。

バイトの時給って昔700円とかだったんだが、最近ファミレスで1300円とか見る。 また、資産運用に多額の資産を注ぎ込んでいる人は実質賃上げみたいなもの。要は、金持ちと最低限の生活は人では不足のサービス業で可能という二極化が鮮明となり、ボリュームゾーンの中間層の賃上げは難しい。 ここら辺は、日本企業の成長分野への設備投資があまり増加していないのと整合的であり、かつ異次元緩和の副作用である構造的な問題だと思う。

何だか細部に論点を絞りすぎるのは良くない兆候だなー。 自社株がどうのではなく、きちんと資本政策できてますか？が論点。いまだにPL開示しかできない企業も多い中で、自社株が正解な企業だっていっぱいある。 それを前提抜きに「自社株は一時的な株価上昇要因」とか言っている人は、なんか言っているようで、何も言っていないに等しい。

異次元緩和で強制的に金利のない世界を作り出したり、株価が下がればそれを日銀が買って支えたり。こんなもことがただで行えるわけがない。 将来世代の負担が増える訳であるが、重要なのはバブル世代は所得が給料で倍増し、資産が貯まった段階で金融緩和などにより自分の資産形成に追い風が吹き続けてきたこと。 この不平等を投票という『モノ言う』行為で是正すること。 政治だけではなく、経済の世界も同様であり、日銀の大量のETFが個人に譲渡され、パッシブファンドの議決権が個人に展開され、皆が経済にも監視の目を光らせればガバナンス改革はもっと進むと思う。 ただ、いつでも文句を言うだけでなく議決権などアクションが伴わなければならない。

企業取締役に経営を受託しているエージェントとしての認識があるか？ ほとんどの日本の取締役は執行役なのではないか？ 経営の監督者と執行の前提が崩れているからこそ、投資家やアクティビストが味方にもなるというよく聞く論点が取り上げられる。要は執行よりも経営を考えましょうという部分最適から全体最適として解釈できる部分は多い。 それにしても昨今は色々な人がアクティビストを語るようになったなーという印象。