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解雇訴訟でマスク氏勝訴 旧ツイッター、退職金請求
共同通信
松下 朋弘ユニヴィス法律事務所 弁護士
この訴えですが、連邦従業員退職所得保障法(ERISA)に基づくものですね。ERISAに基づく請求は、企業が具体的に後援する公的年金制度や構築された独自の年金制度を前提に行われるものですが、今回トンプソン判事からは、Twitter社の買収後プランは退職金制度といえるような設計は何もなされておらず、ERISAの適用はできないとされています。 どういうことかというと、日本の裁判でも「退職金を支給する」といった程度の就業規則上の記載では具体的な退職金請求権は発生していないとして労働者側の退職金請求が棄却された事例があり、退職金に関する制度は具体的に構築されたスキームを前提にしない限りワークしないことを示しています。退職金制度は日本でもアメリカでも義務的なものではないので、この結論は妥当です。 おそらくですが、本件は解雇にあたっての合意に基づく金銭請求が証拠上困難であるため、なんとか退職にあたっての解決金が支給されるよう退職金という法的構成を考え、ERISAに基づく請求を立てたのだろうと考えられます。そしてTwitter社にはそういった退職金制度が構築されていなかったので結局負けてしまったと読んでいます。 また余談ですが、アメリカ連邦法の解雇規制は確かに形式上は緩い(Employment at-will doctrine)ですが、組合の弱体化に伴って徐々に不当解雇と判断される事案は増えてきており、州法で上乗せ的な解雇規制が設けられていることや、解雇にあたってのガイドラインができる程度には解雇に気を遣うこと、日本はOECD加盟国でいえばむしろ解雇がしやすい部類の国で、適切な手続さえ踏めば普通解雇は意外とできてしまうところはなぜか誤解されているので知っていただけると嬉しいです。
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花王、販売の差し止め申し立て アイリスオーヤマのアイマスク
共同通信
松下 朋弘ユニヴィス法律事務所 弁護士
結論から申し上げると、花王による侵害の主張が通る可能性は否定できません。 意匠権とは何ですかとよく聞かれることがありますが、工業製品のうち、美的にも優れたデザインに独占権を与えるためのものです。特許権は発明に対する独占権、商標権はブランド自体に対する独占権、著作権は創作物に対する独占権であったため(工業製品でも美術の著作物と判断された裁判例はいくつかありますが)、工業製品のデザイン面を保護するために必要な制度です。 花王が登録している意匠は、パッケージではなくアイマスクの本体で、あの独特の形状に美感が成立し得るとして登録がされています。 意匠権侵害の成否は、登録された意匠(形状等)の要部が同一・類似かで判断され、何が意匠の要部かは物品の性質、用途、使用態様に応じてそれを使用する需要者目線で認定されます。 国内で「アイマスク」として意匠登録されている物品は現状70種類程度がありますが、花王が登録しているアイマスクのデザインの要部が類似すると判断された場合には、意匠権侵害が成立します。 類似する過去の判断例として、美容用シートマスクに関する裁判例があり(大阪地判平成29年2月7日)、結論としては意匠権侵害を否定しているのですが、要部類似性判断においては、①鼻筋の形状、②目や口の形状(侵害を主張された側は単なる楕円ではなくハート型にしていた、③全体の印象(侵害を主張された側の製品は細身の顔をモデルにしており、原告のものよりもシュッとして見えた)などを考慮しています。 花王のアイマスクの意匠は、①耳かけの形状、②鼻筋の切れ込みの形状、③目を覆う部分の形状に独自性があるため、おそらくこのあたりに要部性が認められると思われますが、アイリスオーヤマの製品について見ると、①②はかなりデザインが近く、③についてもアイリスオーヤマ製品の方がのっぺりした印象がありますが、全体の形状は似ています。強いていえば花王の登録意匠は顔を覆う面積を小さくするような工夫がされていると考えていて、面積が大きいアイリスオーヤマ製品はこの点で機能性が異なるくらいの違いはあると思われます。 これだけ類似している部分があれば、意匠権侵害の主張が通る可能性は否定できなくなってくるので、注目です。アイリスオーヤマ側は、意匠に創作性がないとして無効の抗弁で抵抗すると思われます。
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山形県で1日1回笑うことが努力義務に。「笑うに笑えない」条例と反発も
ハフポスト日本版
松下 朋弘ユニヴィス法律事務所 弁護士
10年くらい前からこの手のユニークな条例が流行り始めていますね。今回の条例は、自民党の山形県連が素案を出し、一応パブリックコメントも募集した上で制定をしています。健康維持の推進を宣言するための形式的な条例で、罰則もなく、現状のままであれば特に害のある条例ではないとは思っています。 素案では「県、事業者及び県民は、この条例の実施に当たっては、個人の意思を尊重する。」といった条文もあり、この手の条例は簡素なものがほとんどですが、意外な配慮もされているなと感心しました。ただし、この手のユニーク条例では、今回の件でもそうですが、なぜか市民側に協力義務や努力義務が付されており、反したからといって何か有害なことが起こるわけではないですが、実態として協力や努力を求められるわけでもないので、わざわざ義務に関する規定を入れる必要はないのになとは思っております。 似たような条例で、京都市の「京都市清酒の普及の促進に関する条例」というものがあり、全4条の非常に簡素な条例ですが、第1条で「この条例は,本市の伝統産業である清酒(以下「清酒」という。)による乾杯の習慣を広めることにより,清酒の普及を通した日本文化への理解の促進に寄与することを目的とする。」とされ、第4条で「市民は本市及び事業者が行う清酒の普及の促進に関する取組に協力するよう努めるものとする。」とされています。また、これと似たような条例である「東海市トマトで健康づくり条例」では、トマトジュースでの乾杯を奨励されていたりもします。個人的には清酒での乾杯には協力をしたいところです(京都市民ではないですが)。 こうした、自治体の宣言的な条例制定行為を「税金の無駄」と評価されるのか、「粋」と評価されるのかは難しいところではあります。せっかく条例にしたのであれば、笑いと健康のための条例をきっかけに、「健康」のための実効的な施策の予算をとってくれればいいなとは思っております。
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「やめさせてもらえない」 フリーランス相談開設3年半で2万超
毎日新聞
松下 朋弘ユニヴィス法律事務所 弁護士
新法があってもあまり状況が変わらないというのは取材元の山田先生のおっしゃる通りかと思っていて、フリーランスはこれまでもとにかく泣き寝入りが多く、事業者側もフリーランス側も「普通」の基準が分からなくなってしまっている結果、業界慣行のバランスがバーゲニングパワーの強い事業者側に寄ってしまっています。訴訟をするにしてもフリーランス側の請求では相手方への請求金額が低くなりがちで、弁護士を利用する場合には費用倒れになるケースもあります。 違約金条項については、独禁法上の優越的地位の濫用論やフリーランス新法の一方的報酬減額の禁止規定の適用、不公正な内容の契約条項として当該契約の効力の無効主張、労働者の自由意思論のフリーランスへの準用によって効力を無効にすることも考えられますが、フリーランス新法上違約金条項を設けることが明確に禁じられているわけではなく、毎回通用するわけではなさそうなところが痛いところです。 フリーランス側に不利な契約条項の押しつけは、事業者側で自浄されることはまずないので、フリーランス側で対抗していかざるを得ません(個人で法的手段を取るだけでなく、フリーランス全体での連帯も時には必要になると思われます)。地道に公正取引委員会に情報提供をし続けることも大事ですが、国家のリソースは有限で、「国に情報提供してくれるから何とかしてくれる」と言い切れないのもつらいところです。
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