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NASAの深宇宙光通信、最長距離を達成しました
早崎 公威忠北大学 天文宇宙科学科 准教授
1600万キロメートルというと地球と太陽との間の距離の約1/10なので距離はかなり短いなという印象。この距離を深宇宙と呼ぶにはあまりにも地球から近いので、ここでいう深宇宙は月以遠という定義なのかな(?)。この光通信に用いる電磁波は従来の電波よりも波長の短い近赤外帯域なので、ある範囲にある波の数が電波よりも多い=データを載せる量が多い=データ伝送量が多い、となる。加えて、通常の電磁波とは異なり指向性と収束性にすぐれたレーザー光なのでデータ伝送効率が向上する。レーザーはコストがかかるのと技術的な難しさがあるが、将来の探査計画を見据えるとデータ伝送上のメリットが大きいという判断で開発が進んでいるのだと思われる。
宇宙望遠鏡「ユークリッド」が撮影した星雲など画像公開 「馬頭星雲」など鮮明に
早崎 公威忠北大学 天文宇宙科学科 准教授
ユークリッドは近赤外線で宇宙を捉える宇宙望遠鏡であり、人工衛星として地球を周回しながらから主に遠方銀河の観測を行う。地球と銀河の間に、銀河からの放射光を曲げるぐらい重力の強い何か(すなわちダークマター)があると地球に届く銀河の像は歪んで見える。この歪みの補正を逆に利用してダークマターの分布を調べてやろうというのがユークリッドの主なサイエンスミッションの一つである。観測する銀河の数が多ければ多いほど、歪みの統計処理の精度が向上し、ダークマターの分布の精度が向上する。ユークリッドの観測対象の天体は近赤外線で明るい天体であれば銀河に限らない。今後のユークリッドの成果には要注目である。
「日本の研究は、もはや世界トップクラスではない」科学誌『ネイチャー』のウェブ記事が指摘。国際競争力が落ちた要因とは?
早崎 公威忠北大学 天文宇宙科学科 准教授
冷静に見れば、このネイチャーの記事の図に表されているように日本の順位が多少落ちた最も大きな要因は20年前までは目立たなかった中国やインドなどの台頭ではないか。つまり研究力の絶対的な低下というより相対的に下がったと解釈できる。さらに、これらの指標だけで国の研究力を判断するのは危険だが、その指標でもなおトップ10位前後以内にいるので記事のタイトルは釣りに聞こえる。IFの高いジャーナルに出版された引用数のみで論文の質を評価しているのも短絡的である。どこの国が発行したジャーナルで、さらに引用は誰からどのようにされているのかを深掘ると印象がかわってくる可能性が高い。内情とは必ずしも一致しない(ネガティブに)インパクトのあるタイトルをつけてあおる手法は、一般誌であるならともかくサインエスコミュニュケーションとして適切なのかはやや疑問が残る。
ノーベル物理学賞に「アト秒物理学」スウェーデンの大学教授ら3人
早崎 公威忠北大学 天文宇宙科学科 准教授
全く予想できなかった今年のノーベル物理学賞。フェムト秒は10のマイナス15秒、アト秒はさらに三桁短く10のマイナス18秒。アト秒という時間間隔を制御できるようになると何が嬉しいのか、それは電子を確率の波としてそのまま捉えることが可能になったことを意味する。フェムト秒だと粒子としての電子の性質(波動関数の二乗、つまり確率波の振幅のみ)しか測れなかったが、アト秒では波の振幅だけでなく波の位相差を計測できるため、電子の波動関数そのものを計測可能になった(振幅は同じだが位相が異なる場合を区別できるようになった)。このようにアト秒の物理学により、量子力学の非直感的で不思議な世界をより鮮明に捉えられるようになったのは大きいと思います。
>追記
アト秒の物理学については、下記のサイト(早稲田大学 応用物理学科 新倉研究室)に詳細がまとまっています。ご参考ください。
https://www.f.waseda.jp/niikura/
https://www.f.waseda.jp/niikura/NHdenshi22.pdf
巨大ブラックホールが自転 噴出ガスが首振り運動、新証拠
早崎 公威忠北大学 天文宇宙科学科 准教授
イベント・ホライゾン・テレスコープを使用した電波観測で、M87銀河の中心に太陽の約65億倍の質量を持つ巨大ブラックホールが見つかったのは記憶に新しい(2019年4月の出来事)。実は、このブラックホールの付近からジェットと呼ばれるガスが噴射されているのもその前から観測されていて、そのジェットがまっすぐ噴射されているのではなくウネウネと曲がりながら噴射されていることも知られていた。今回の研究ではそのウネウネを過去から現在にわたる観測データと最新の数値シミュレーションの両方から詳細に解析した結果、約11年周期でウネウネしていることがわかり、その原因はブラックホール周囲のガス円盤の首振り運動(歳差運動)にあると主張した、というのが要点。ただ、ジェットの噴射と降着円盤との間に明確な因果関係があるかどうかまだ詳細なところは不明なのが大きな問題(宇宙物理学上のオープン問題)であり、今後の進展が待たれる。
>参考文献
https://www.nature.com/articles/s41586-023-06479-6
UFO研究チーム新設 「地球外生命の痕跡探す」―米NASA
早崎 公威忠北大学 天文宇宙科学科 准教授
UFOやUAPやはほとんどが自然現象か人工現象または目撃者の勘違いであり、宇宙人起源の可能性はかなり低いとみています。
特殊相対性理論は、物質や情報伝達の最大速度は光速でありかつ光速度は一定であると規定しています。光速で移動する乗り物ができたところで、我々の太陽系から最も近い恒星系であるアルファケンタウリでさえ光速で4年以上かかります。さらには宇宙人が地球にきてなにか情報を得てそれを発信して母星で受信するのに往復分の年数かります。かりにアルファケンタウリから宇宙人がやってきたとしても8年分のコストを消費せざるをえません、この間に生体や情報も劣化します(コールドスリープなど生体の劣化を防ぐ技術はありますが、情報の劣化は防げません)。故障のリスクもあるのでこのような宇宙探査にはもっと長い年月が必要でしょう。せいぜい数十年が合理的な飛行時間だと思えば、地球から数十光年以内にある系外惑星に居住する宇宙人に限られます。しかしそんなに近い距離に地球より高度な文明を持つ宇宙人がUFOやUAPのこれまでの発生頻度を説明可能な確率で存在するとは考えにくいです。
さらには時間やエネルギーといった物理的なコストだけでなく、もし高度な文明をもっていれば経済的政治的なコストもあるだろうなと想像できます。それらのコストをかけて宇宙人がわざわざ地球にやってくるでしょうか?こういったそもそもの動機は何かという問題もあります。高度な文明を持つ宇宙人が地球に来るのに無駄なコストをかけるとは考えにくく、可能性があるとしたら彼らがコストのかからない方法を知っている、です。たとえば、物質を使ってとかではなく人類がまだ解明していないなんらかの方法で宇宙規模で離れた二点の物理的距離を合理的な時間内で縮めることができる方法など。。。
地球内に宇宙人の痕跡を探すよりも、UFOやUAPをきんと科学的に検証したいというのがNASAの態度ではないでしょうか。一足とびに宇宙人(=地球外知的生命体)というよりもまずは地球外生命体、太陽系外生命体というふうに段階をふんでゆく研究に力を注いだ方が現実的な気がしています。

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