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【経営企画若手のノウハウ】調整業務ばかり..で終わらせない
高橋 義仁専修大学 商学部教授
私自身、過去にグローバル製薬の本社経営企画で仕事をしたことがあります。やりようにも関係しますが、「度を超えた内向きの調整は不要」という考えを持っている私にとっては、調整主体の悠長な部門の必要性は高くないと思っています。
私が経営企画部門に所属していたのは30代前半から中ごろで、非管理職でした。一方、経営企画部での業務範囲は極めて広く、研究部門統括と欧州製薬事業およびアジア製薬事業統括、関連会社統括の4つの一次統括を一人ですべて行っていました。経営企画部門部員の上は経営企画部長、その上は、直接本社社長というポジションです。威を借りているため、私が経営企画部の仕事で会うのは部門長や次長クラスでした。
「経営企画部員としてみる力(判断力)が養われるか」という点ですが、単に経営企画部員でいるだけで養われる機会は大きくないと思います。部門統括業務の際、報告書や直接の視察やヒアリングには部門が都合の良いことしか書かれておらず、嘘を見破る力が必要です。私の場合、その時点までに学んでいた経営に関するリテラシー、何百本というケースタディーと毎日の新聞記事は役に立っていました。
日本企業は、多くの部署を転々と異動してポジションをあげていくという伝統的な人事制度を有しています。ここでジェネラリストと呼ばれる「大卒文系エリート社員」は、「将来トップを目指しやすいキャリアパス」と言われてきました。社長や経営幹部の目に留まりやすいからというのが理由で、経営企画部のポストに若手をつけるときは将来を期待する場合が多いとされます。しかし、そのような理由だけで有能な人材を経営企画につけると機会損失が発生します。欧米の人事制度のように、部門での現業をマネジャー以上のクラスのポジションでやらせた方が、はるかに実力がつくと思います。
なお、当時経営企画部で先輩社員と話をする機会があり、「経営企画部の仕事とは、経営幹部のみでは知りえないリスク管理と成長の源泉に資するインテリジェンスを提供すること」と説明しましたが、その方に「全く違う」と返されました。曰く、「明言なさらない社長の心中を察してその方向性に絶えず寄り添うこと」と話されるため、私は生意気にも「それは企画の仕事とは異なる」と答えました。仕事の内容を勘違いしている方が多くいる部署ですが、経験として所属するメリットがないわけでもないとは思います。
日本生命、旧ジャニーズの性加害問題で62社に人権問題への対応要請
高橋 義仁専修大学 商学部教授
日本生命のビジネスモデルは、保険会社として加入者(相互会社における「社員」)から保険料を集め、あらかじめ契約された範囲における事故が発生した場合には、対象者に対して保険金を支払う「相互扶助」への介在によって成り立っています。
保険金原資(資産)を増やす仕事は極めて重要で、利殖性が低い投資先(例えば普通預金など)に投資した場合は、安定性が確保できる代わりに、インフレなどのリスクに対応することができません。したがって、安定性をある程度犠牲にしても、株式等のリスク資産に投資する必要があります。このようなことで、投資できる現金を多く保有する「生命保険会社」が大株主に名前を連ねる機会が多くあります。
記事中にあるスチュワードシップ(Stewardship)とは、財産を管理することを任された者の責務(受託者責任)全般を指し、狭義には株主に対する責任として適切な投資先を選定することを指しますが、最近はこれを社会全体に拡大し、社会全体に対する責任を果たそうという流れが取り入れられています。そこで、企業の社会的責任(CSR)への対応として、「ESG投資」という言葉も生まれています。投資先のESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを評価して投資対象を選別し、またESG課題への継続的な配慮を促すことを目指した投資と説明されています。
ESG投資の理念の内、S(社会性の高い企業への投資)を理由とした「大株主の立場」としての良い意味での圧力は、投資先企業を動かす効果があると思います。日本生命はジャニーズ問題が世間の知るところになって、最も早い段階で「今後ジャニーズタレントを起用しない」とした企業でした。
USスチール買収の再申請承認 米当局が日鉄に、選挙後に結論
高橋 義仁専修大学 商学部教授
経営状態が危機に瀕しているのに「活発な活動を行う労働組合」を抱えるという、米国における経営上のハイリスク企業(USスチール)を、相当な譲歩をして買収したいと日本製鉄が考えている点について、買収後はそのリスクを引き継ぐ救世主という見方をしています。この合併は、もともとUSスチールの株主側に有利なディールだと思います。一時、バイデン氏、ハリス氏、トランプ氏の相次ぐ発言により、期待されていた合併が実らないと見られるや、USスチールの株式が暴落した経緯からもそれは明らかでしょう。
対米外国投資委員会(CFIUS)は、日本製鉄とUSスチールの合併に経済安全保障等の問題が許容範囲内か否かに対して、調査し判断する一次的な権限を有しています。現職大統領のバイデン氏の発言は、先の権限移譲のシステムに圧力をかけることになり問題がありました。また、ハリス氏、トランプ氏のいずれも、「USスチールはアメリカの企業であり続けるべき」といった言動を選挙戦で繰り広げていますが、このような「買収阻止」公約下で当選した場合は、買収阻止に動くことが予想されました。
各大統領候補あるいは特定の大統領候補との意見交換の上、CFIUSは独立した権限を発揮し、大統領選へのUSスチールに対する政策論争を回避するような対策をとったのだと思います。民主主義にとってポピュリズムは脅威となり得ますから、これをわかっているからできる英断で、この対応は称賛されるべきでしょう。
米国の制度では、すべての最終権限は大統領に集中しますから、仮にCFIUSが買収を承認したとしても、大統領が拒否権を使うことは可能です。しかしながら、今回の事案(友好国であり、国防の多くを米国に依存している国家)に対し、国防上の理由で反対するということであれば、もう、外国企業は一律に「重要産業を買収できない」とする基準を設ける必要すらでてくると思います。そうなると、外国に米国企業による買収を拒否する理由を与えてしまいます。これまで企業買収で成長してきた国家である米国にとって、長期的には悪手となるはずです。
なお、 企業合併後の独占の懸念については、米連邦取引委員会(FTC)が、反トラスト法(独占禁止法)の視点から別途審査を行います。
日鉄のUSスチール買収再申請へ、米政府の判断は大統領選後に
高橋 義仁専修大学 商学部教授
経営状態が危機に瀕しているのに「活発な活動を行う労働組合」を抱えるという、米国における経営上のハイリスク企業(USスチール)を、相当な譲歩をして買収したいと日本製鉄が考えている点について、買収後はそのリスクを引き継ぐ救世主という見方をしています。この合併は、もともとUSスチールの株主側に有利なディールだと思います。一時、バイデン氏、ハリス氏、トランプ氏の相次ぐ発言により、期待されていた合併が実らないと見られるや、USスチールの株式が暴落した経緯からもそれは明らかでしょう。
対米外国投資委員会(CFIUS)は、日本製鉄とUSスチールの合併に経済安全保障等の問題が許容範囲内か否かに対して、調査し判断する一次的な権限を有しています。現職大統領のバイデン氏の発言は、先の権限移譲のシステムに圧力をかけることになり問題がありました。また、ハリス氏、トランプ氏のいずれも、「USスチールはアメリカの企業であり続けるべき」といった言動を選挙戦で繰り広げていますが、このような「買収阻止」公約下で当選した場合は、買収阻止に動くことが予想されました。
各大統領候補あるいは特定の大統領候補との意見交換の上、CFIUSは独立した権限を発揮し、大統領選へのUSスチールに対する政策論争を回避するような対策をとったのだと思います。民主主義にとってポピュリズムは脅威となり得ますから、これをわかっているからできる英断で、この対応は称賛されるべきでしょう。
米国の制度では、すべての最終権限は大統領に集中しますから、仮にCFIUSが買収を承認したとしても、大統領が拒否権を使うことは可能です。しかしながら、今回の事案(友好国であり、国防の多くを米国に依存している国家)に対し、国防上の理由で反対するということであれば、もう、外国企業は一律に「重要産業を買収できない」とする基準を設ける必要すらでてくると思います。そうなると、外国に米国企業による買収を拒否する理由を与えてしまいます。これまで企業買収で成長してきた国家である米国にとって、長期的には悪手となるはずです。
なお、 企業合併後の独占の懸念については、米連邦取引委員会(FTC)が、反トラスト法(独占禁止法)の視点から別途審査を行います。
薬剤耐性菌の死者3900万人超 50年まで、抗生物質適切使用を
高橋 義仁専修大学 商学部教授
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の脅威は、1980年代にすでに問題になっていました。当時は、「(病態悪化を引き起こす)病原菌を抑えるためにはとにかく抗生物質で抑えればよい」という使用方法を製薬企業が販売合戦で広げ続けたことが原因の1つです。1980年~90年代は、たくさんの抗生物質が使用され、耐性菌の発生もしましたが、製薬企業は「その耐性菌に効く(抗菌スペクトルを有する)種類の抗生物質の研究開発を競って行う」というマッチポンプ状態でした。当初は、広い菌種に効く(広い抗菌スペクトルを有する)抗生物質が優れた製品と考えられてもいました。
その後、多剤耐性菌が問題になり始め、原因解明が進むと、「広い抗菌スペクトルを有する抗生物質の大量使用」が原因であることが確定的になりました。つまり、「病原菌だけを短期間で適切に抑えないと、中途半端に抑えられた菌種が抗生物質に耐性を獲得する可能性が高まる」という不都合な真実です。製薬企業のかつての販売合戦は批判され、現在は、「(多剤耐性問題を引き起こす)原因としての抗生物質の使用はできるだけ少なくする」という点については、医学生の教育からしっかりフォローされていることから、不適切に使用されることはほとんどなくなっていると思います。
一方でその後、抗生物質の販売額が激減し、製薬企業はこの市場を敬遠しています。つまり、標準的な抗生物質しか使われないから、改良品を出しても第一選択薬としては売れないし、新薬が標準的な抗生物質に置き換わることがなく、多くを使われることがないため、この研究領域に関して、極めて多くの製薬企業が新規医薬品の研究開発を終了しています。
もはや現在は、製薬企業に抗生物質の研究開発能力が蓄積されていないため、万が一強力な耐性菌が出現した場合でも、新薬をつくって対応できる企業は皆無に近い状態だと思います。(少なくとも短期的には誰も得にならないことに対して)誰も動かないため、放置されているのが現状です。その間、記事に書かれているように、不幸にして耐性菌に当たった場合の治療薬に乏しく、命を落とす危険性は高まっています。新型コロナウイルスで経験したワクチンのケースと非常に似ており、リスクマネジメントのためには、継続的に研究を続けるインセンティブを与える必要がある分野です。
小林製薬、脱「創業家」表明 紅こうじ被害再発防止へ新部署
高橋 義仁専修大学 商学部教授
同社は、これまでもESG経営を意識して、コンプライアンスにはしっかりと向き合う体制をつくるということにはなっていました。
https://www.kobayashi.co.jp/contribution/governance/compliance.html
記載にある方針の限りにおいては、何を言ったか(何が言われているか)が、誰が言ったかよりも優位に立っているようには、企業の広報上の資料からは読み取れます。今回の報道が正しいのなら、実際には「誰が言ったかが極めて重視される(創業家を筆頭に)」社風だったということになります。
このようなタイプの企業は、リスクマネジメントに問題を抱えることになり、重大な問題を引き起こす頻度が高いように思います。創業者、創業家のリーダーシップは、調子が良いときは「スピード経営」などと良い方向でとらえられ称賛のポイントにされることが多いのですが、常に「両刃の剣」であることを理解し、「超えてはいけないとされるポイントを超えている」と判断されるときには、社外取締役等の役員がこれを是正する役割を担います。
今回は、上記の点を含め、コーポレート・ガバナンスが十分に機能していなかったことが、悲劇を抑止できなかったということになると思います。
小林製薬、再発防止策を公表 「創業家依存の経営」から脱却へ
高橋 義仁専修大学 商学部教授
いまから25年ほど前、小林製薬の上級幹部様から、
「製薬」という名称はつけているが、今後も医薬品の事業はしない。なぜなら、医薬品の定期監査や医薬品に求められる危機管理体制の整備、医薬品レベルでの製品の開発や製造の問題に対処する専門知識の蓄積をする予定がないからである。
という趣旨の意見を伺っていたことがあります。その方は、その後、サプリメント事業を推進する中心人物となって采配を振るったと思っています。
ご本人は十分にわかっていたところ、医薬品のような商品の魅力に取りつかれ、一方ではその体制は費用が掛かるのでぎりぎりまで避け、そのうち、ほぼ医薬品という性格の商品(薬効類似成分の高含有商品)の販売を進めるも、ずるずると品質管理のコストを後送りにしたというのが、問題の本質の内の1つと思います。
「工場での定期監査の導入や社長を中心とする危機管理体制の整備を明記。製品の開発や製造の問題に対処する専門部署の整備」は、医療用はもとより、一般用医薬品を製造する企業には不可欠です。「備えない限り事業は許可されない」といった最も基本的な要件として設定されています。
「AirPods Pro 2」が「補聴器」として普及するかもしれない理由
高橋 義仁専修大学 商学部教授
ノイズキャンセリングの原理は、その場で拾った音の逆位相波をつくって音を打ち消すことによるため、ノイズキャンセリング機能=マイクが内蔵されていることになるので、同種のイヤホンのすべてにおいて、「補聴器として使うための機能」は、電気回路の追加・変更のみで加えることが可能になるはずです。
ただし補聴器は、世界各国で医療機器として扱われていることが多く、補聴器機能搭載の許認可権は各国が独自に有することになります。日本では、医療機器クラスⅡ(管理医療機器)に区分されています。ですから、医療機器のルール上は、エアポッドに補聴器機能がついてしまうと、医療機器の認可を受けるまで国内販売ができなくなります。従って日本で認可が下りるまで、米国とは別商品が販売されることになります。
米国補聴器メーカーの株価が急落したのは、単純に「補聴器の価格下落に直面しているから」という理解になると思います。補聴器は、日本においては医療保険の適応外ながら、保険組合や地方自治体の規約により、難聴の程度に応じて補聴器購入の際の金銭支給の適応になっていることがあります。また所得税等の控除(医療費控除)の対象です。これらの規約・規則において、エアポッド等の補聴器機能付きノイズキャンセリング付きイヤホンが、今後どのように扱われるかにも興味があります。
アスリート遺伝子の研究を停止 国立スポーツ科学センター
高橋 義仁専修大学 商学部教授
この研究成果は「費用をかけるべきアスリートの事前選別」を目指したものととれることから、研究の継続に疑義が生じているようです。この研究が成果を示した場合の行きつくところからみて、反対者の主張がわからないでもありません。
一般の医学研究の場合でも、「特定の遺伝子が存在する場合の病気の発症・治療に対する効果」の研究は、医薬品の保険使用対象の判別のために、成果が期待されています。
生命保険会社は、このような遺伝子情報の個人レベルの情報を、喉から手が出るほど欲しがっています。その目的はハイリスクの人物を特定し、その人物の保険加入を認めさせないためであることは想像がつきます。現時点で、保険事業におけるその手法の適用は認められていません。一方、保険会社の主張は、「加入希望者だけが遺伝子検査によりリスクを把握している状態」は著しい不公平で、今後、「保険会社の事業が成立しなくなる恐れが生じる」というものです。
個人を特定して行う遺伝子研究の難しさは、技術よりも倫理面だと思います。公益をうたいながらの私利性も問題です。
変わるカプセルホテル、データ解析でビジネス-「睡眠」は謎だらけ
高橋 義仁専修大学 商学部教授
紹介されている「睡眠の質」のモニターから、生活の質の改善につながる可能性があり、面白いと思われる方がいるのはわかります。参考になる点もありますが、少なくとも心拍数の補足に関しては、医療で使用できるレベルには至っていないと思われます。その他の項目も医学検査のクオリティの質の保証を受けていないため、現状ではエンターテイメントか参考としての使用にとどまると思います。
ナインアワーズのヘビーユーザーですが、自身の経験としては、「おまけ」としてついてきた、このデータ解析を10泊分ほど受けたところ、ほとんどで突然の心拍数の上昇と直後の正常化が記録されました。さらにそのうちの1~2回については、「非医療検査の精密検査」をすすめるメールが送られてきました。費用は確か1~2万円程度と書かれていたと思います。
異常波が出る頻度が多かったため、データを持参して専門医の先生に相談し、念のため医療機関で正規の医療機器を使っても検査したところ、全く問題は出ず、先の非医療検査の異常波については、心臓疾患に特有の特徴も見られないため、「少なくとも一連の波形の異常はノイズが原因(誤作動)」と結論づけました。
サービスを実施されている側にも、把握していただければと思います。
小林製薬、糸ようじ販売一時休止 歯科医師会が推薦取り消し
高橋 義仁専修大学 商学部教授
もともと歯科医師会に寄附金を出すなどの条件のもと、形式的な審査を行って「推薦」の文字を入れさせていただいたという類の話で、企業と団体双方の利害の一致によって進められたものです。もともとの審査の対象に企業自身も含まれていたはずで、今回はこれに疑義がつき、「歯科医師会推薦」のブランドを維持するための歯科医師会の対応だと思います(「推薦」価値低下への予防策)。
推薦は、元来、一方的な行為です。「寄付行為への対価として『推薦ブランド』を得ている」と言ってはならないわけですから、歯科医師会が「現時点では推薦しない」と決めたのであれば、企業は従うしかありません。中身に問題があるわけではないので、回収はせず、現行品に対する当該部分の目隠しシールを小売各社様に配布し、貼付をお願いする対応が良かったと思います。
医療の未来のために…患者に寄り添う“調整役”治験コーディネーターの仕事とは
高橋 義仁専修大学 商学部教授
治験コーディネーター(CRC)は、臨床試験を実施する主体である製薬企業からのコーディネート受託企業である医薬品開発業務受託機関(CRO)の従業員で、製薬企業から臨床試験を委託される医療機関の従業員である医師や医療従事者をサポートします。
最初は、医師が臨床試験に適合すると思われる患者さんに声を書けますが、日本では25年~30年前までは、その後の説明も主に医師が行っていました。臨床試験の参加者に対しては、通常の診療に比べると圧倒的に説明する内容が多く、多忙な医師の通常業務を圧迫します。この点がネックになり、臨床試験の参加者を集めにくいことが指摘されていました。
かねて米国はチーム医療が進み、日本と比べ権限が分散していました。CROは、製薬企業のアウトソーシング企業として早くから米国で発展してきました。日本には相当遅れて入ってきたイメージです。
しかし現在、日本で製薬企業が臨床試験を行うには、CRCはもはや不可欠な存在です。医療機関の許可を得て、医療機関内で臨床試験参加者や候補者と向き合われます。
7&iHD、クシュタールの提案は議論を行うための根拠・材料なし
高橋 義仁専修大学 商学部教授
7&iの取締役会の役割は、株主の委託を受けている立場上、株主利益の模索であり、具体化された内容を伴う場合は門前払いという対応は非難されます。仮に頑なに門前払いを続けた場合、善管注意義務違反が取締役に対し問われます。もちろん、企業の社会的責任も考える必要があり、その点の公益性の認識は必要ですが、安全保障上の規約をクリアするための提案も断っているように読み取れます。
安全保障上の懸念の判断は国家が行うものですから、取締役会として、これを門前払いの理由にするのには無理があります。このような返答を続けると、逆に株主からここを突かれて、「取締役は株主の味方になっていない」という主張を招くことになると思います。
三菱ケミカル、田辺三菱製薬の売却報道を否定 「あらゆる選択肢念頭」
高橋 義仁専修大学 商学部教授
非公式な内容のため、このような報道が出ると企業は株式市場に対して「決定事項ではない」と否定します。しかし、確定する直前までこのような公式見解を出すのであって、絶対に行わないという類の否定ではありません。
日本の製薬企業を取り巻く外部環境をみると、日本市場は以下の特徴を持ちます。
(1)日本の薬価制度の仕組みにより企業が決定できず政府が決定、長期に売り続けるほどに概ね下がり続ける構造
(2)それでも政府は、医薬品の安定供給をさせるために、品目からの撤退を許さず、許されるのは製品ごとの他社への移管か企業ごとの他社への移管のみ。倒産しそうな場合は、日本製薬工業会を通じて傘下のどこかの企業に製造を引き継がせるように要請する(医薬品の許認可権は政府が有するため、これを断りにくい構造)
(3)日本では臨床試験に参加する方が集めにくく、他国と比べ従事する人も少ないため、試験ができないことが問題化。そこで近年、海外の臨床試験のみで事実上日本での医薬品の認可が取れるように制度改正済
したがって、長期販売品の多さから不採算事業を多く抱え、海外で認可を受けて日本に導入できる新しい医薬品を有する見込みが低い企業は大変困難な状況を抱えているはずです。そこで、政府からの要請に「努力する」と答えながら「最低限の義務にとどめ赤字を少なくしたい」といった面従腹背の状況になっているとみられます(業界関係者は否定するでしょうが・・・)。これが、現在の医薬品不足の主要な要因の一つだと考えています。(他にも主要な要因はあります)
大きな影響を受けているのは、長期に販売されている医薬品の売上高比率が高い企業、海外での臨床試験ができない企業です。そのような企業を売却できるチャンスがあるのなら、企業戦略としてその選択が見えてきます。
特に企業グループ傘下の事業子会社の場合、親会社の企業戦略は資本の効率化ですから、先の状況に子会社が該当する場合には売却への合理性があります。このような企業を買いたい企業は、日本での基盤が弱い新興企業、新興国企業などで、その営業チャネルが欲しいところにとっては、不採算品目があっても買収したいと思うでしょう。
化学品の企業グループは、1970~80年代に医薬品産業の将来性を見出し、企業買収などで製薬企業を子会社化してきた経緯があります。逆転が起こったとしても違和感は感じません。
NORMAL
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