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コンテナ運賃決定メカニズム・フーシ派攻撃直後の運賃上昇要因(スエズ運河迂回とコンテナ運賃)
外航海運・国際物流インサイト:多角的な視点で読み解く
松田 琢磨拓殖大学商学部国際ビジネス学科 教授
「コンテナ運賃の決まり方:需要、供給、擾乱要因 」の図2のコンテナ船の需給比率が小さくなっている=コンテナ船一隻当たりで運ぶ貨物の量が減っている,というのが明確に見えていて面白いです. また,この図を見る補助線として,海運サービスに対する供給曲線が普通のものとは異なる点を指摘したいと思います. https://www.jpmac.or.jp/img/research/pdf/A201573.pdf 図1を見てください.以下の説明は上の図を見ながらだと分かり易いと思います... 海運では船舶が輸送サービスを提供できる水準までは費用は大きく上がらないと考えられています(空いているスペースに荷物を積み込んでも,追加費用はほとんど発生しないためです).一方で運べる限界に達すると,急速に追加費用が上がります.したがって,海運サービスの供給曲線は逆L字型になると考えられています. 通常はキャパシティにまだ余力があるため,供給曲線の平坦なところで需給均衡が定まります.しかし,ひとたび攪乱要因が発生して需要が急増する(需要曲線が右にシフトする)と供給曲線の角度が急なところへと需給均衡が移り,輸送量に対して急激な運賃上昇が起こります(※) (※)海上輸送サービスは,貿易をしたいという本源的需要に支えられて発生する派生的需要という側面を持ちます.そのため需要が運賃の変化に対して鈍く(非弾力的,と言います)需要曲線の角度がきつい特徴があり,これも運賃の上がりやすい要因です. 紅海情勢の問題では,供給がそこまで絞られることはないと考えられていたのでパニックが落ち着くと需要曲線が元に戻り,運賃は下がると思われていましたし,一時期は運賃が落ち着く傾向がありました. しかし,その後明らかになったのが,林さんがいうように,輸送距離が長くなっており,供給が絞られて供給曲線が左にシフトしました. (迂回に加え,南米方面や南アフリカ方面の航路の輸送量が伸びていたことも背景にあります) この需給の変化の順番は,コロナ禍では①需要の減少,②供給の絞り込み,③需要の拡大,④供給の制約という順番になっていましたが,紅海情勢以降では①と②がない状況であったと解釈できます.
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