ホーム
107フォロー
140フォロワー
ホルムズ海峡の封鎖が世界の原油海上輸送に与えるインパクト:1980年と2023年の比較
林 光一郎日本郵船株式会社 調査グループ グループ長
今回の記事ではホルムズ海峡が通れなくなった場合の日本の原油輸入への影響について、イラン・イラク戦争でホルムズ海峡封鎖が話題になった1980年との比較で分析しました。要点は以下の2点です。
・ホルムズ海峡の内側にある湾岸産油国への日本の輸入依存度は2023年にかけて大きく上昇している。
・一方で世界の湾岸産油国への輸入依存度は2023年にかけて低下し、また世界の中での日本の輸入シェアも大きく低下しているため、「残された輸出量の奪い合い」という観点では数字上は負担が小さくなっている。
本文中にも書きましたが実際の影響には荷動き比率以外の多くの要因が関わってきます。それら多くの要因を評価するために補助線をこういう風に引いていくのだ、という参考にして頂ければと思います。
船はどこまで大きくなるの?貨物船の大きさと経済性との関係
林 光一郎日本郵船株式会社 調査グループ グループ長
コンテナ船のサイズは年々大型化していて、日本の港に寄港できないため釜山などで積み替えになります、という話を耳にすることが多くなってきました。このような大型化は今後も続いていくのでしょうか?
今回の記事のポイントは以下の3点です。
・コンテナ船では最大サイズの更新が着実に続いてきたが、バルカーやタンカーでは状況が異なる
・大型化はコスト削減のメリットと汎用性低下のデメリットを共に引き起こす。また港のニーズや対応も重要
・コンテナ船では現在の2万4千TEUを超える大型船は当面は建造されないだろう
なお、キャプションの写真は史上最大の船、シーワイズ・ジャイアントです。一度生で見たかったですね。
2024年問題 規制強化半年 運送業者の約半数「対応できず」
林 光一郎日本郵船株式会社 調査グループ グループ長
倉庫・物流センター側の時間調整のためにトラックを必要以上に早く到着させたうえで待機させる、貨物の積み降ろしをトラックドライバーが行う、ドライバーの人手不足が叫ばれる中このような商慣習はもはや持続不可能だとは分かっていても、顧客との力関係でなかなか変更を言い出せない運送会社も多いのでしょう。
ですが、顧客との契約条件改善交渉も自社での業務改革もできず、今まで通りの業務を続ける中でドライバーが辞めたり引き抜かれたりして、運送会社で事業継続が不可能になり顧客が慌てて代わりの運送会社を探そうとしても同一の作業条件では運賃の交渉に入る前に門前払い、というような状況は誰も得をしません。何らかの社会的な取り組みが必要だろうと思います。
鉄道保守、AIで効率化 日立、エヌビディアと展開
林 光一郎日本郵船株式会社 調査グループ グループ長
船や鉄道車両などの輸送機材では故障を予防するために交換周期を定めた時間基準保全(TBM:Time Based Maintenance)が行われてきましたが、これには余分な保守費用の発生や運航スケジュールへの影響が発生するという問題があります。この問題を解決する手法が機器の状態を常時モニターして状態に応じて予防的にメンテナンスを行う状態基準保全(CBM:Condition Based Maintenance)です。
私が勤務する日本郵船でも運航中の船に対してCBMを行っており、AIを活用しています。検出した変化が異常かどうか、その異常が何を意味するかを判定するロジックは高度なものであり、新しい技術を採用しながら改良が続けられています。
https://www.nyk.com/esg/does/stories/detail_14.html
海運について知りたい人に触れてほしい書籍と講義
林 光一郎日本郵船株式会社 調査グループ グループ長
今回の記事のメインは松山大学の「海事経済論」公開講座です。松山での会場参加のみで参加できる人が限られることは承知していますが、とても優れた講座で志も高く、ぜひご紹介したいと思ってこの記事を書きました。機会があれば1コマでも参加を検討していただければと思います。
書籍は下記の3冊を簡単にご紹介しました。
・「日本の海運 SHIPPING NOW」(※無料でDL可能)
・「マリタイム・エコノミクス」(マーティン・ストップフォード著、日本海運集会所)
・「コンテナ物語」(マルク・レビンソン著、日経BP)
気楽に手に取ることができるが海運のメカニズムをある程度理解することができる新書レベルの入門書が抜けています。いつかそういう書籍が出てほしいですね。
バイオ燃料24%混合15万トン利用、日本郵船がGHG排出削減を加速する
林 光一郎日本郵船株式会社 調査グループ グループ長
海運の世界ではGHG排出量削減のための次世代燃料としてアンモニア、メタノール、LNG、バイオ燃料、合成燃料など複数の候補が存在しています。これらの燃料は貨物の種類や船の大きさごとに有利不利が異なることに加え、今後どのタイミングで利用可能になるか、競争力を持つかも異なってきます。
海外の海運会社は特定の貨物の種類(例えばコンテナ基幹航路)に特化しているのが一般的です。ですからその分野で優位性のある次世代燃料にフォーカスして、例えば「我が社はメタノールでゼロエミッションを目指します!」というメッセージを発信することが可能です(実際には他社から船やサービスを借りることもあり、最近はこの種の一点突破的なメッセージは後退しつつあります)。
一方で日本の総合海運会社は貨物の種類や大きさが異なる複数の船のポートフォリオを持っているため、複数の次世代燃料を組み合わせてどの時期にはどの船の種類でどの次世代燃料を利用しようか、というポートフォリオ管理が必須になります。足元ではすぐに使えるLNG船を発注しつつ既存のディーゼル燃料船で使えるバイオ燃料の燃料を拡大、その一方で将来を見据えてアンモニア利用のための技術開発や社会実装に取り組む、ということが必要なのですね。
海運業界の外の投資家や世論に対するメッセージとしては一点突破型のほうが力強く分かりやすくなってしまうので、こういった場所で総合海運会社の取り組みの意義や長期的な視点をを発信していこうと思っています。
数字で見る海運の変化:1980年代から世界の荷動きはどう変化したか
林 光一郎日本郵船株式会社 調査グループ グループ長
今回の記事は前回の続編で、1980年代からの海上荷動きの変化について解説しました。記事のポイントは以下の2点です。
・2024年の外航海運の姿は1986年の姿からかなり変化している(規模が3.4倍になりコンテナのシェアが3倍になった)
・コンテナや鉄鉱石・石炭など品目別の伸び率はこの期間の間に不連続に変化している
特に注目して頂きたいのは後者で、ぜひ図3をじっくり眺めていただければと思います。海運の世界でこのような構造変化が生じていたことはあまり知られていないのではないでしょうか。海運会社は短期的なマーケット変動だけではなくこのような構造変化にも対応して生き延びてきました(なおこの期間の手前には在来船からコンテナ船含む専用船への転換というさらに大きな構造変化が起きています)。この記事が海運業界のダイナミックさを知るきっかけになればと思います。
なぜ海運大手の日本郵船が宇宙を目指すのか
林 光一郎日本郵船株式会社 調査グループ グループ長
日本郵船が取り組む宇宙関連新規事業の紹介記事。洋上でのロケットの打ち上げや回収の事業化を目指しています。こういうムーンショットな案件にも取り組んでいる会社だということ、ぜひ多くの方に知っていただければなと。
この記事に書かれていないポイントとして、日本郵船は気象条件の厳しい海面でも船の位置を安定して保持する技術を持っています。日本郵船は北海など気象条件の厳しい海域で原油を洋上生産設備から陸上の製油所までピストン輸送するシャトルタンカーという特殊タンカーの事業を行っていて、そこで利用しているのですね。船の位置を安定して保持する技術を使ってロケット(Space Xなどをイメージしてください)の洋上発射/着陸のための船を提供しようということです。
NORMAL
投稿したコメント