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【解説】「アリババvs共産党」は、まだ終わっていない
西村 友作中国 対外経済貿易大学 国際経済研究院 教授
「中国政府が本当に何をしたいのかというと、目的は経済成長です」(記事引用)
確かに経済成長は重要な目的の一つですが、規制を緩くして比較的自由な環境でイノベーションが起こりやすくしている大きな目的に「社会問題の解決」があると思います。
猛スピードで発展してきた中国社会には、先進国に住む日本人では想像もつかないような問題が山積しています。中国政府としては、新しいビジネス、サービスを通じて、政府の力だけでは難しかった社会問題が解決することを期待しているのです。一般市民が「不便」「不安」と感じる問題の解決はビジネスチャンスとなりえますし、市民にとっても、これまで不便だった問題が解消するのは大歓迎でしょう。
例えば今回のテーマとなっている銀行に関しましては、以前コラム(※)でも書きましたが、中国では国有商業銀行が圧倒的な地位を築いており、信用リスクが比較的低い大企業向けに、低金利でも多く貸し付けることで収益を上げてきました。一方、信用調査に手間も時間もかかる上、融資規模も小さい中小・零細企業向け融資は敬遠されがちでした。
従来の金融機関だけでは対応しきれていなかった中小・零細企業融資や農村金融市場などに存在した多くの課題も、アントの金融サービスによって解決へと向かったのは事実です。
この他にも、去年話題となったライブコマースは、農村にいながら販売ができ農民の所得向上につながるなど、都市と農村の格差是正に寄与しています。このような事例は枚挙にいとまがありません。
中国は「質の高い経済成長」を目指しています。このような「社会問題」分野に大きなビジネスチャンスがあると思います。
※アリババ傘下アント、上場資金3.7兆円で「世界展開」へ
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00109/00024/

【図解】共産党が恐れる、アリババの「ヤバい」ビジネス
西村 友作中国 対外経済貿易大学 国際経済研究院 教授
昨日コメントしたABSについてはこちらの記事で採用されたようです。図を使って説明するとわかりやすいですね。
上場延期となった背景に、「習近平国家主席の怒りを買った」(記事引用)かどうかは不明ですが、上層部が動いていることは間違いないと思います。
中国は様々な分野で市場化を進めています。今回の措置は市場に与えるインパクトが大きく、中国のイメージダウンにつながるのは当然わかっているが、それでも断行しました。
このレベルの決定は一管理監督機関独断では出せないと思います。上場は証券監督管理委員会マターで進められてきましたが、もし単独で上場の承認、延期を決定したのであれば、責任問題が浮上してもいいはずです。
一旦上場してしまうと、ステークホルダーが国内外の投資家にまで広がってしまいます。規制強化はアントの業績悪化を招き、株価下落につながります。その批判の矛先が規制をかけた当局に向いてしまうことを懸念したのかもしれません。
以前コラム(※)でも書かせていただきましたが、フィンテック企業に対する定義があいまいで、「テック」企業なのか、「フィン」企業なのかはっきりしませんでした。今後は「フィン」企業とみなし、全面的に監督管理に組み込み規制を強化していくとみられます。
アントは金融企業として上場を目指すことになりますが、実現にはかなりの時間を要すると思われます。
※アントはなぜ「上場延期」に追い込まれたのか?
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00109/00026/

【熱弁】ジャック・マーの「問題スピーチ」全文
西村 友作中国 対外経済貿易大学 国際経済研究院 教授
ジャック・マー氏の講演について解説させていただきました。
内容を読んでいただくとわかりますが、ジャック・マー氏が展開したのは、金融業界に対する痛烈な批判でした。
マー氏の講演を要約すると、「中国の金融は未熟」で「銀行は考えが古い」だから「イノベーションが必要」だと説いています。そのうえで、中国は「管理能力は強いが、監督能力が欠乏している」、「昨日の方法では未来は管理できない」とし、古い規制で新しい取り組みを縛るとイノベーションは生まれないという考えを示しました。先進国におけるリスク管理手法を真似すべきではない。導入すればフィンテックの発展にマイナスになると言いたかったのでしょう。導入されれば、当然アントの業績にも悪影響を及ぼします。
一方で、基本的な考え方として知っておかなければならない事は、フィンテックの発展にルール整備が追いついておらず、当局は規制強化を進めようとしていという点です。
今回の記事にはなりませんでしたが、アントの金融商品を裏付けとしたABS(資産担保証券)が以前問題になりました。貸し出し債権を担保に資金を調達し、それを原資に再び貸し出しを増やしABSを発行…という方式で事業規模が急拡大しました。米国のサブプライムローンを彷彿させるシステムで、資本金に対する融資残高、つまりレバレッジが高まり、信用評価のアルゴリズムもブラックボックスで外から見えないという問題もあって、当局が規制を強化しました。それに代わって出てきたサービスが、記事にある「協調融資」です。
「新経済」など新しいビジネス分野においては、中国では比較的規制を緩やかにしてイノベーションが生まれやすい環境を作り、後に問題が出てきた時点で徐々に規制を強化していくというスタイルが基本です。
昨年10月31日、国務院金融安定発展委員会はフィンテックに対し「法に基づき金融活動を全面的に監督管理に組み込む」と表明しました。つまり、フィンテック企業を金融企業と位置づけ、金融規制の対象としたわけです。
今後、中国のフィンテック企業に対する規制はさらに強化されていくと考えられます。
中国GDP 前年比+2.3% 主要国で唯一プラス成長保つ
西村 友作中国 対外経済貿易大学 国際経済研究院 教授
年間では+2.3%ですが、足もとで成長速度がかなり加速しており、第4四半期は去年の成長率を超えました。
具体的には、1Q-6.8%、2Q+3.2%、3Q+4.9%、そして4Qは+6.5%でした。
分野別にみると、固定資産投資が+2.9%、工業生産が+2.8%、輸出入総額が+1.9%と伸びる一方で、消費は-3.9%となり、コロナで蒸発した需要の影響は大きかったようです。
GDP倍増計画達成となる5.6%には届きませんでしたが、今年は9%近い成長を実現し「2年で押しなべて達成」を目指すのではないかとみています。
少なくとも、共産党結党100周年の7月まで、つまり2021年上半期ではかなり高い経済成長を目指すと考えられます。
ビジネス関係者らの往来停止 原則外国人の入国を全面的に制限
西村 友作中国 対外経済貿易大学 国際経済研究院 教授
「外国人の入国」ではなく、日本人(在留資格をもつ外国人)も含む「外国からの入国」を制限すべきです。
外国から帰ってきた日本人が感染を広げるケースも起こっているのに、これを制限しないのは問題です。
コラム(※)でも書きましたが、中国では入国停止はしていません。自国民、外国人とも平等に、2週間(一部の地域では3週間)の隔離を実施しています。航空チケットも高額で、隔離ホテル代やPCR検査も自費。これを受け入れることができる人だけ入国しています。
我が国においても、外国から帰国する日本人を含めた水際対策を実施すべきだと思います。
※中国入国、水際対策のリアル。日本人専用ホテルの14日間
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00109/00027/
『SLAMDUNK』新たにアニメ映画製作 井上雄彦氏の電撃発表にファン驚き
西村 友作中国 対外経済貿易大学 国際経済研究院 教授
『スラムダンク』映画製作のニュースは中国でもとても話題となっています。
日本のアニメは中国でも評価が高いのですが、『スラムダンク』はその中でもものすごい人気を誇っており、現在私が教える大学生も男女を問わずほとんどが知っています。
私も授業中で「基礎の重要さ」を話すとき、必ず『スラムダンク』の様々なシーンを紹介します。
その一つが山王戦の最後に試合を決めた花道のショット。タイトルにもなったダンクではなく、安西先生や仲間と共に1週間で2万本の練習を積んだジャンプショットでした。辛い時や厳しい時に助けてくれるのは、コツコツと地道に積み上げた「基礎」だと、話すとみんな目を輝かせて聞いてくれます。
新しいアニメーション映画にもとても期待しています!
中国3社の上場廃止再決定 NY証取、財務省指示受け
西村 友作中国 対外経済貿易大学 国際経済研究院 教授
中国では90年代から約30年間、香港市場や米国市場を中心に、多くの企業が海外上場を果たしてきました。
2000年代、中国企業による海外上場をめぐって批判の声も上がりました。
中国国内企業による海外上場の増加は、中国の証券取引所からみると上場企業の流失を、多数の国内投資銀行からみると業務の減少を、国内投資家からみると投資機会の減少を意味しているからです。
特に、今回上場廃止が決まった通信大手3社のような国内市場を独占している国有企業の海外上場に関しても、「国内で多額の独占利潤を獲得している企業が海外上場するとなると、その利益の一部は海外投資家へと流出する」という声が聞かれました。
今回の上場廃止により、中国国内においても海外上場の是非の議論が再燃し、中国企業による米国市場撤退が加速することも考えられます。
飲食店に休業指示、応じない店名を公表…緊急事態宣言に合わせ政令改正
西村 友作中国 対外経済貿易大学 国際経済研究院 教授
中国ではフードデリバリーの配達員が至る所で走り回っており、レストランの出入り口を行ったり来たりしています。一方で、座席は比較的空いています。
それを見ていて思うのは、我が国においても、飲食店を単純に休業させるのではなく、もともと我が国の文化であった「出前」を強化する政策を考えてもいいのではないでしょうか。
例えば、店内での食事を禁止すると同時に(休業と同じ効果)、補助金で固定費を負担。一方で、デリバリーの配達業者側にも補助金を投入し、配達料無料でサービスを受けられるようにすると同時に(消費者に利点)、配達員の配達料引き上げることで人員を増やす(失業者対策にも)。
単純に「お金あげるから休んで」と言うより、もっと違う施策を考えたほうがいいのではないでしょうか。
三井物産、中国テンセントと提携 日本企業の販促支援
西村 友作中国 対外経済貿易大学 国際経済研究院 教授
日本の大手商社と中国IT大手のタッグ。非常に興味深いです。
拙著『キャッシュレス国家~「中国新経済」の光と影』の最終章でも書きましたが、日本と中国の企業は、それぞれの持つ強みが補完関係にあります。
中国では、先端技術に長けた新興企業が、チャレンジ精神に満ちた若きリーダーたちのもとでトライ・アンド・エラーを繰り返しながら、多くのイノベーションを生み出しています。
日本企業には、技術や経営理念なども含めた、有形、無形の資産が数多くあります。
三井物産が蓄積してきたビジネスのノウハウやネットワークと、テンセントが有するのデジタル技術やウィーチャットでつながる約10億人のユーザー。互いの長所を掛け合わせることでプラスのシナジー効果を発揮できるのではないかと思います。
三井物産には友人も多くいますので、今後も注目していきたい案件です。
アリババ創業のジャック・マー氏が行方不明?「金融規制は老人クラブ」批判が契機か。欧州メディア報道
西村 友作中国 対外経済貿易大学 国際経済研究院 教授
私もジャック・マー氏の講演録をすべて読みましたが、金融業界に対してかなり痛烈な批判を展開していました。
先月のコラム(※)でも書きましたが、私が注目したのも「バーゼル合意は老人倶楽部のようなものだ」と、多くの国で導入され、中国でも採用されている銀行規制を批判した点です。
自己資本規制の圧力をかけていた当局に対するけん制だったのかもしれませんが、完全に裏目に出てしまいました。金融当局の大物たちもその場にいましたし。
講演の内容はマー氏が自ら考えたもので、アント内部の金融専門家が目を通していないという中国メディアの報道もありました。事前に専門家がみてアドバイスしていれば、もう少し違った結果となったのかもしれません。
※アントはなぜ「上場延期」に追い込まれたのか?
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00109/00026/

【新連載】ハーゲンダッツを超えた、中国の「高級アイス」の正体
西村 友作中国 対外経済貿易大学 国際経済研究院 教授
海外では「安かろう悪かろう」というイメージが強い中国ブランドですが、中国国内ではここ数年で着実に存在感を高めています。
もともと「世界の工場」として国内で製造し世界各国に輸出していたので、モノづくりのレベルは相当高いという優位性は持っていました。サービスレベルも近年かなり高まっています。
一方で、グローバル展開はまだハードルが高そうです。「安いけど質が悪い」とバカにされていた我が国の自動車や電気製品メーカーが、世界的に受け入れられるまでには相当な年月と努力を要しました。
『バック・トゥー・ザ・フューチャー3』のシーン
1955年に生きるドク
「故障するのも不思議じゃない。『日本製造』って書いてある(No wonder this circuit failed. It says, “Made in Japan”)」
1985年からタイムスリップしたマーティの返答
「どういう意味?日本製は最高だよ(What do you mean, Doc? All the best stuff is Made in Japan)」
このシーンからも、日本企業が数十年の時間をかけ徐々に世界の信用を得てきたことがわかります。
日本企業のこのような歴史をしっかりと学んでる中国企業も少なくありません。14億人を有する激戦の国内市場で実力と知名度を高めた中国ブランドが、グローバル市場を席巻する日が来るかもしれません。
中国、12月の景況感51.9 2カ月ぶり減、回復一服感
西村 友作中国 対外経済貿易大学 国際経済研究院 教授
記事にはありませんが、非製造業PMIの落ち込みの方が大きくなっています。
製造業PMIは0.2ポイント下落の51.9でしたが、非製造業PMIは0.7ポイントマイナスの55.7でした。
最近では北京や大連などで新規感染者が見つかっており、外食などサービス支出を減らす傾向が出てきているようです。私が勤める大学でも、学生との期末パーティや会食を控えるようにとの通知が出されました。
地方によっては「戦時状態」を宣言し、濃厚接触者を探し出し、市民全員にPCR検査を受けさせるなど、感染拡大防止を徹底しています。感染が最小限で抑えられるか否かが、今後の景気にも大きく影響しそうです。
アントが持ち株会社検討、金融事業は銀行同様の規制対象に-関係者
西村 友作中国 対外経済貿易大学 国際経済研究院 教授
アントはここ数年で、融資・投資・保険分野の事業を急拡大させてきました。
アントの代名詞ともいえるアリペイを含むペイメント事業の売上推移(全体に占める比率)をみると、17年54.9%→18年51.8% →19年43.0%→20年上期35.9%と一貫して低下傾向にあります。
一方で、融資・投資・保険を含む「デジタル金融テクノロジープラットフォーム」事業は、17年44.3%→18年 47.4% →19年 56.2%→20年上期63.4%と、足元で急拡大していることがわかります。
コラム(※)でも書きましたが、アントは自ら貸し付けを行うのではなく、あくまで与信枠や金利などを提携金融機関に提供して技術サービス料を得て稼いでいます。
一方で、実際に融資を行い、信用リスクを負うのは銀行です。アントが最終的なリスクを負わず、金融規制の対象にもなっていないという歪みに対する批判は以前からありました。
最近の一連の規制強化は、この「歪み」の是正に向けた動きと理解することができるかと思います。
※アントはなぜ「上場延期」に追い込まれたのか?
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00109/00026/

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