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送配電会社の完全分離を提言 大手電力と資本関係解消へ
共同通信
竹内 純子国際環境経済研究所 理事・主席研究員
内容的な批判は松尾プロが書いておられる通りですね。大手電力会社を切り刻めば何かいいことが起きるという思考回路から離れられていないのだろうと思います。 そもそもこの再エネタスクフォースは、規制改革推進会議の作業部会化のように報じられることがあるのですが、規制改革推進会議は設置に関する規定が置かれており、委員は首相名で人事通知を頂きます。 この再エネタスクフォースは、規制改革担当大臣が河野大臣だったときに設置されたもので、「座長は俺がやるから要らない。応援してくれる人が4人いれば良い」と仰って、自分と考え方を同じくする方を委員に任命し、担当の参事官は再エネ派・脱原発派(派というか、それ以外に何をされているかは存じ上げないのですが)の山田参事官を配置された、と伺っています。 重要な問題に政治のリーダーシップが必要な場面はありますが、ただ、こんな座組はやりすぎでしょう。この問題に限らず、大事な問題を決めるにあたっては、プロセスは非常に重要です。河野大臣当時、山田参事官が経産省等でずっと議論をされてきた委員会に出て行って、成熟していないちゃぶ台返し発言をされ委員から「ちゃんと勉強してもらいたい」と激怒されたというのは有名な話ですが、新しい場で議論するにしても、法治国家なのですから、既存のプロセスで積み重ねられた議論に敬意は払うべき。 電力自由化のさまざまな行き詰まりや課題が見えてくる中、電力会社の不祥事を契機として、システムを見直すことは私は悪くないと思いますが、これまでの自由化が「電力会社を叩いて留飲を下げる」以外に何か効果があったのか、政策の効果と検証をすべきです。 『電力崩壊』にも書きましたが、日本のように燃料の安定調達が肝の国で、小さな発電事業がたくさん参入するような自由化をやって国民になにかのメリットのある制度になるのか。むしろより大規模化して、電力供給の安定性・燃料調達力の向上を確保すべきではなかったのか。 するなら、より良い電力システムにつながる質の高い議論をしていただきたいと思います。
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4月値上げ、先送りへ=電力5社の家庭料金、厳格審査―政府
時事通信社
竹内 純子国際環境経済研究所 理事・主席研究員
電気料金の上昇は国民生活・経済に甚大な影響を与えますし、加えて電力会社の不祥事も続いていますので、政治的にはこうした指示を出したくなるところです。 ただ、そもそも電力小売り事業の全面自由化を実施したにもかかわらず、経過措置として、規制料金メニューを残すことを義務付けるという、いびつな電力システム改革によって、電力会社は原価を回収できないような価格での販売を余儀なくされてきました。 こうした、商売としての異常事態を長く続けさせて財務状況が悪化すれば、電力会社の資金調達コストが上がります。電気事業は壮大な設備産業ですから、設備投資のための資金調達コストが上がることは、結局電気の原価が上がることになり、消費者に不利益になるわけです。 そのため、戦後の電気事業体制を設計した「電力の鬼」と呼ばれる松永安左エ門は世間からどんなそしりを受けても電気料金の大幅値上げを決行したわけです。 電力会社の不祥事はルール破りであることは間違いなく、許されないものですが、そもそもルール設計の妥当性を問うことも必要でしょう。電力システム改革の中でも安定供給を維持しようと様々な要求が電力会社に負わされている状況であることも確か。例えば、災害時には旧一電の小売り部門は、送配電事業者と旧一電小売部門が協調して、停電の問い合わせに対応しなければなりません。 また、規制料金を抑制すれば、消費者はそちらに流れますから、新電力が顧客を失う流れを加速させます。安定供給の義務を負わない新電力の数を増やすことに私自身はあまり意義を感じていませんが、政府が主導して「不当廉売」をさせることが妥当だとは思えません。 なお、永濱さんご指摘のように、中部電力さんが今期黒字で値上げ申請していないと言うのは、いくつか理由がありますが最も大きなものは、前回の値上げ申請において、中部電力さんが最も出遅れた=化石燃料価格の反映がかなりできていたことが大きいです。
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大手行、東京電力に緊急融資4000億円 燃料高で資金不足
日本経済新聞
竹内 純子国際環境経済研究所 理事・主席研究員
自由化したのに、大手電力には規制料金制度による電力供給義務が残される「経過措置」と言われるこの状況をいつまで続けるのでしょうか。 機動的な価格修正ができないことで、「赤字で電気を売る」という異常な状態が長く続き、その結果電力会社の資金調達コストが上がれば、それは電気代の上昇という消費者の不利益に繋がります。 銀行も、融資しなかったから電力供給が止まった!と言われることになるのは避けたいでしょうが、回収の見込みが無ければ貸せません。それには料金値上げがきちんと進むこと、そして原子力の再稼働が進むことなどが必要で、それを「前提」として貸すということになるのでしょう。 私は電力自由化と言うのは少なくとも日本があのタイミングでやることではなかったし、やり方もあまりにリスクに対してナイーブだったと思っていますが、自由化したなら市場に任せるべきでしょう。(提供する価値に応じて、めちゃめちゃたくさんの市場を創らないといけないのですが)。 ただ、電力というものは、その安定供給やコスト上昇が国民生活に直結するので、いざとなると政治が「市場に任せていますんで」とは言えない=政治が介入するということになりがち。当初経過措置は2020年に解除という方針でしたが、これを解除するという判断を、日本の政治はできるんでしょうかね。
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政府、GX基本方針を閣議決定 原発推進へ政策転換
毎日新聞
竹内 純子国際環境経済研究所 理事・主席研究員
メディアでは「拙速な議論」や「突然の方針転換」などという言葉が使われますが、原子力の必要性は、長くエネルギー関係の様々な委員会で指摘されてきたことです。いまのような化石燃料価格の高騰や調達の争奪戦になれば、日本国民の生活や経済に甚大な打撃を与えることが避けがたいからです。 むしろ、議論していただけのこの長い期間に、化石燃料に何十兆もの国富が流出し、原子力技術の継承も難しくなりました。メディアで良く使われる「拙速」は、なんもしないことに言い訳を与えるだけなんですけど、そういうことわかってこの言葉を使ってるんですかね?むしろ政府がすべきは、政策の転換の必要性を国民に丁寧に説き、コミュニケーションをとることだったでしょう。 皆さん電源構成の「比率」の話ばかりされますが、これからデジタル化や社会の電化に伴って、電力使用量は増えていく可能性があります。2050年にカーボン・ニュートラルを達成するのであれば、電力需要は1.5倍に増えるという試算もあります。それをできる限り脱炭素電源で賄わなければならない訳ですが、再エネがここまで「迷惑施設」と認識され、利権がらみの悪い話も多くなると、この10年のように太陽光が急増することも難しいでしょう。日本が原子力なしでできるのであれば、誰もしんどい原子力の話はしたくないですが、避けて通れない話です。そして、放射性廃棄物の最終処分問題についても進めることが明言されています。 「聞く力はどこへ行った」という声。菅直人元首相が震災直後、孫正義さんの声に対して「聞く力」を発揮してできたFIT法で、何が起きているか、メディアのプロピッカーの方は一度現場を見てきた方が良いと思いますね。ソフトバンクさんは再エネ子会社を豊田通商さんに売却しましたが。 そして、原子力政策の話ばかりが注目されるのですが、むしろ国民生活にとって影響が大きいのはカーボンプライシングだと思います。 導入時期はだいぶ先ですが、現在のガソリン・電気・ガス代の補助とは真逆で、エネルギーの利用に対する税(賦課金あるいは排出量取引と言っていますが、要は炭素税です)ですので、設計によっては生活・経済に直結します。 排出量取引の制度は、CO2の排出量を政府が設定するので計画経済そのものなんですよ。なので、対象セクターのロビーイングが激しくなることは、EUでも経験済みです。
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【竹内純子】料金高に悲鳴、電力自由化の「設計ミス」を問う
NewsPicks編集部
竹内 純子国際環境経済研究所 理事・主席研究員
自由化は、制度改正を続けていくものであり、問題があれば柔軟かつ迅速にそれに対処していけばよいわけです。ただ、日本は既存制度の問題点に柔軟かつ迅速に対処することが苦手なことに加えて、エネルギーインフラ事業は投資回収が非常に長期なので頻繁に制度が変われば事業参入しづらくなったり、資金調達コストの上昇という弊害が出たりということも懸念されるので、そこは難しいところ。 これまでの制度は、安定供給確保に向け、あらゆる面でバッファーが薄いことへの配慮が不十分だったと思います。また、そもそも日本の電力価格のコスト構造を見れば発電および燃料調達については事業者の集約が必要だったのではないでしょうか。 バッファーの薄さは欧州と比較するとわかりやすいのですが、欧州は隣国と電線もガスパイプラインも接続していますし、天然ガスは古い油田や岩塩層などの巨大な地下貯蔵施設に数か月分貯められます。日本は液化天然ガスで輸入するので2週間分がタンクにあるだけです。国土の形状も北海道、本州の東と西、四国、九州と小さな島の集合体なので、送電線の増強も進められていますがあちこちにボトルネックがある。 そしてそもそも日本で電気代を下げようと思えば、燃料調達の交渉力をあげるのが極めて重要なのですから、小さな発電事業者にちまちま競争させて本当に電気代が下がると思っていたのか?と思います。 新著『電力崩壊』にも書きましたが、わが国の電力システムはどうあるべきかという議論より、福島原発事故を起こした電力会社への懲罰的なかたちで(事故を起こしたのは東電のみです)改革を進めたのであれば、国民にとって「良い制度改正」になっていないのはむしろ当然でしょう。自由化の議論を政治的なところからスタートさせたことは反省されるべきだろうと思います。 コメントありがとうございます。蓄電に期待する声が多いのでちょとだけ補足。確かに蓄電池の導入も期待されていますし、日本は世界で一番家庭用蓄電池が売れている国です。さらに定置用蓄電池ではなく、EVのバッテリーも活用させてもらえれば費用対効果が高まります。ただ、こうした分散型資源をつないでコントロールすることに課題があるのです。その公益的意義を果たそうと、会社設立しました! https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000049175.html
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【ゼロ解説】「なぜ値上げ?」がすぐ分かる、電気料金の超基本
NewsPicks編集部
竹内 純子国際環境経済研究所 理事・主席研究員
タイミングも良いですし、内容もわかりやすい良記事ですね。電力各社の値上げ申請の報道を見て、反発を持つ方も多いでしょう。特に今、電力各社の不祥事も多いので、なおさらです。この点は本当に電力各社さんにはしっかりしていただきたいと思います。(公益事業の担い手でありながら、10年以上「悪者」扱いなので、組織のモチベーションが低下するのはある程度仕方がないとも思いますし、公益事業の担い手をサンドバッグにするような風潮は変えたいと思いますが、だからと言って今の数々の不祥事の言い訳にはならない) ただ、欧州各国で電気料金が昨年後半から何倍、十何倍という激しい価格上昇をしていたなかで、ここまで日本の電気代がそれほどには上がらなかったのは、電力会社が燃料の長期契約を多く確保していたことと(その燃料長期契約に対しては、2015年以降の原油価格下落局面では「殿様の買い物」と批判・揶揄されていたわけですが)、さらに、燃料高騰分の上昇を転嫁する限界を置くことで「売れば売るほど赤字」という商売の基本に悖ることを強いていたからでしかありません。 社会の基盤たるインフラを「売れば売るほど赤字」などという不健全な状態におけば、我々の社会自体が不健全で不安定な状態になるわけです。このことは理解すべきでしょう。 電力価格の上昇は国民生活・経済に多大な影響を与えるので、原子力政策も、再エネ政策も、電力自由化政策も慎重さを要するのですが、福島原子力事故直後の民主党政権でのエネルギー政策は、そうしたリスク管理の観点を欠いていたと言わざるを得ませんし、自民党政権になっても大きく見直されてきませんでした。ただ、国民の側も自由化には光だけでなく影の部分があること、原子力は使うリスクもあるが、使わないリスクもあること、再エネにはメリットもあるが限界もあることなど、知る努力が必要なのだろうと思います。 そうしたニーズに応える記事だと思います。 全然編集部ではないのに口出しをして恐縮ですが、平澤さんの「アクアエナジーは値上げか?」にお応えすると、今回の値上げ申請からは除かれると認識しています。水力発電だと燃料不要なので。ただ、水力による発電量には限界ありますので、どこまでも売れるわけではないです(電力全体そうですが)
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東電、3割値上げを申請 燃料高で6月から、2611円増
共同通信
竹内 純子国際環境経済研究所 理事・主席研究員
電気料金の上昇は国民生活・経済に多大な影響を与えるので、極めて慎重にあるべきですし、値上げ申請に反発する声が上がるのは当然です。説明を尽くす必要がありますが、消費者側も基礎的な状況は理解する必要があります。 同社が示した原価構造を見れば、燃料費や購入電力料といった「電源調達費用」が8割を占めています。電力用LNGは2年前の2倍強、石炭は5倍程度に上昇。 2016年にわが国は電力小売りの全面自由化をしましたので、皆さんがどこから電気を買うのも自由、逆に電力会社も値段設定の自由や顧客を選ぶ自由があるはずです(地域独占は過去の制度)が、大手電力会社には引き続き、規制料金で電気を供給する義務が残されています。 自由化した当初は、もともと大手電力事業者が独占していた市場を開放したわけなので、新規参入企業が競争相手として一定のプレゼンスを持つまではの間、大手事業者による「規制なき独占」になってしまうことが懸念されました。それを防ぐために、大手事業者には自由化してからある程度の期間、政府が認可した規制料金のメニューも用意することが義務付けられました。こうした「経過措置」は、2020年には終わるはずでした。今電力会社が規制料金での供給義務を負っていることは、実は制度として歪んでいるのです。 東京電力がこれまで利益出してる、という声もあるのですが、福島第一原発事故の賠償金を返済するため(今は政府から無利子で借金)、利益が出る状態にせねばなりません。 東電をつぶすべきだったという意見はごもっともで私もつぶせばよかったのにとは思いますが、「死に体となっても賠償金を払う組織として残り続けろ」と、民主党政権はつぶれることを認めなかったわけです。 日本の首都圏の電力供給を担い、GXを進めるべき組織が非常に不健全な状況にあることは憂慮すべきことです。 なお、これでも値上げ幅を抑制するために、柏崎刈羽原発の再稼働を織り込んでいます。再稼働しなければ(可能性大)、この値上げ幅の前提が崩れてしまうということです。 化石燃料市場はコントロールできないので、日本が電気料金を抑制するには、再エネ・原子力といった燃料(ほぼ)不要の電源を活用するしかありません。再エネの導入は進んでいますが、現状まだ多額の賦課金(=補助)を必要とします。原子力を活用しなければ、化石燃料価格に振り回される状況は続きます。
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「GX推進法案」の概要判明 炭素課金の制度設計、施行後2年以内に
朝日新聞デジタル
竹内 純子国際環境経済研究所 理事・主席研究員
この会議に委員として参加していたので少し解説を。 やはり「増税」「賦課金」に反発が強いですね。それも当然でしょう。資源価格の高騰で政府はいま、ガソリン補助金に続き、電気・ガス代の補助という、ネガティブな(マイナスの)炭素価格を付与しています。これと180度逆のことをしようとしているのですから、「なんのこっちゃ」となるのも当然です。 ただ、CO2削減を費用対効果良く進めるのであれば、カーボンプライシング(炭素への価格付け。以下、CPと略します)が有効というのは、議論の余地がほぼ無く、数十年前から環境NGOはもちろん、経済学者の多くが導入を主張してきました。その主張に沿って導入したい環境省と、日本の国際競争力をそぐことを懸念する経産省の構図は長年のもの。 ここにきて議論が本格化したのは、複数の国や地域においてCPの導入が進んでいること、そして、欧州が炭素国境調整メカニズムの導入検討を進めていることによる影響が大きいと言えます。(欧州は2030年のGHG削減目標を1990年比40%以上削減から55%以上削減に引き上げ、それに伴って、国際競争にさらされる産業に与えていた無償の排出枠を段階的にすべて有償にすることを決定。域外との競争の公平性の観点から、同程度のCP負担をしていない地域からの輸入品に炭素関税をかける=国境調整導入を決定。ただ、中国やインドからはWTOルール違反に加えて、パリ協定違反も指摘されるなど激しく批判されており、実際の導入は相当のハードル有)。 日本は炭素税や排出量取引といった明示的CPの導入は避けてきたのですが、一方で、多額のエネルギー諸税や再エネ発電賦課金などの実質的な(暗示的)CPは導入しています。主な自動車用燃料税と再エネ発電賦課金を足すと6~7兆円にもなります。CPが費用対効果の良いCO2削減に寄与するためには、まず、既存の制度のスクラップ&ビルドが必要というのは私も委員会で発言したところですが、既存制度のスクラップ、特に税制となるともはやそれは無理筋。ということで、私が第5回委員会で提案したのは、CPの課税にあたり、自動車用燃料税と再エネ賦課金を考慮して調整するという案(差っ引くとマイナスになってしまう規模なので「調整」)。 なおCP導入は当面先にして、それまでに省エネ投資をして自衛しましょうということになっています。
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