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東京都民は全国で一番「食道がん」にかかっているその「驚きの理由」と「都民がほとんど食べていないもの」
現代ビジネス
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
この記事のデータの解釈には注意が必要です。本記事は、残念ながらほとんど誤誘導に近い内容になっていると思います。 ここで語られているのは、都道府県ごとの食生活などの違いと発がんリスクの違いから関連性を導く論法で、ecological studyというタイプの研究で用いられる手法です。地域の食生活とがんのリスクとの間に関連性が見られる可能性はあるものの、これは因果関係を保証するものでは全くありません。さらに、これを個人レベルに落とし込むのはもってのほかです。 このようなデータから、特定の食生活が発がんリスクに寄与していると言ってしまうのは教科書的な誤解であり、統計学の世界では、”ecological fallacy”と呼ばれています。 このようなトリックを知っている反ワクチン活動家は、同様のecological studyを根拠にコロナワクチン接種回数が高い国ほどコロナ感染率が高いとして、人々にワクチン接種をしない方がいいと説明してきました。 このワクチン接種の例は実際には、因果関係がecological studyの示す「関連性」と全く逆になる場合があるということを示す好例です。それを証明するためには、個人レベルの因果関係を示すための研究を行う必要があります。 立場のある方が、このような初歩的な誤解を導くようなコメントを繰り返されており、残念に思います。
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マイクロプラスチックが健康に影響することがわかった血管疾患を起こす可能性が高い
Business Insider Japan
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
もちろん一つの研究が全てを明らかにできるわけではないものの、これは比較的重要な研究だと思います。 これまで他の動物で指摘されてきたように、人間でもマイクロプラスチックやナノプラスチックが健康リスクにつながる可能性が前向き試験で初めて示唆されています。 マイクロプラスチックやナノプラスチックはその小ささから容易に血流にのって全身の臓器に取り込まれることが知られています。その「臓器」には血管も含まれるわけですが、血管におけるマイクロプラスチックの存在が、心臓の病気のリスクの2倍以上の増加と関連するということがこの研究で示唆されています。 これはもちろん、他の交絡因子の存在を否定できるわけではなく、直接的な因果関係を保証するものではないですが、今後の研究を促進し、プラスチックの使用拡大に警鐘を鳴らすのには十分なものかもしれません。今後、発がんリスクなどについても明らかにしていく必要があるでしょう。私たちは、手遅れになる前にプラスチックとの付き合い方を真剣に考え直さなければならないのかもしれません。 参考文献 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2309822
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首相、老害発言「極めて不適切」 成田悠輔氏巡り
共同通信
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
老年医学を専門とする医師として、ここでは言葉遣いに焦点をあててコメントさせていただきます。「老害」という言葉の使用自体が、いわゆるエイジズムにあたると考えます。エイジズムとは、年齢に基づく偏見や差別を指します。 「老害」という言葉は、老いと害という言葉をくっつけることで、年齢に基づく社会的な分断を促進するものになりえます。特定の年齢層を否定的な方法で一括りにすることで、世代間の理解と協力をマイナスの方向に促進します。多くの人にとってより身近な性差別で例えれば、例えば女性に対して「女害」という言葉を作り公に使うようなものです。 当然すべての高齢者が社会や組織に害を及ぼすわけではないにも関わらず、このようなラベリングが個々の多様性を無視する方向に働き、年齢に対する一方的な見方を促進するのです。 その下流にあるものとして、この種の言葉の使用が広がることで、職場や社会生活における高齢者の機会を制限する可能性があります。結果として経済的損失にもつながるでしょう。また、高齢者自身の自尊心や自己効力感に悪影響を及ぼす可能性があります。自身が社会に負の影響を与えているとみなされることは、実際そうでなくても孤立感や不安を高め、健康に悪影響を与えるでしょう。年齢差別のこうした影響は、すでに数々の研究で示されていることです。 「老害」という表現を使用することだけでも、十分差別を助長する行為であり、年齢差別という観点から全く許容できるものではないと考えます。
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はしか感染者相次ぐ 空気感染も ワクチン接種が必要な世代は…
NHKニュース
仏大統領、「人生の終末」法案を支持すると表明
Reuters
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
一般的に「安楽死」に相当する行為は、「医師による自殺幇助」や「積極的安楽死」などに大別されます。 「医師による自殺幇助」は、長い確認のプロセスを経て全ての条件を満たす場合、末期の重い病気に苦しむ患者が自分の意志で生命を終わらせることを選ぶ際、医師がその手段を提供するというものです。この場合、医師は自殺を実行するための薬剤を処方することはできますが、直接的な行為は行いません。医師が直接患者の生命を終わらせる「積極的安楽死」とは区別されます。 現在、米国連邦政府はその両者をみとめていません。しかし、一部の州は前者のみを州政府単位で認めています。ただし、州によって条件や手続きには違いがあります。一般的に、患者は成人であること、終末期であると医師に診断されていること、自分の意志で決断していることなどの条件が求められます。基本的には、重い苦痛に直面している終末期患者の自己決定を尊重するという理念のもとに成立します。 このような話題が出ると、「医師が人の命を決めるのか」といった疑問が呈されることがありますが、それは上記のコンセプトや違いを十分理解できていないかもしれません。 すでにヨーロッパではオランダやベルギーといった国で同様の法整備があり、差異はあれど医師による自殺幇助が認められています。フランスがそれに続くことになるのか注目されていました。そうした中での大統領の鍵となりそうな発言です。
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【知識】頭痛薬飲みすぎるとどうなる?
NewsPicks編集部
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
薬の話をするときに、リスクばかりを語って薬を悪者にするのも頭でっかちです。「自動車やタクシーは自動車事故に遭うリスクが高いので、自動車にはならべく乗らない。移動はなるべく徒歩か自転車でする。」と言っているようなものです。この例えであれば、多くの人がリスクに頭でっかちな様子が理解できるのではないでしょうか。 どんな物事にもリスクが必ずあるように、どんな薬にも必ずリスクがあり、身体にとって悪い作用は副作用と呼ばれています。副作用の可能性があるにも関わらず薬を使うのは、その薬のメリットの可能性が害の可能性を上回ると判断される時です。そういうときには薬を使った方が良いと判断できます。自動車で迅速に移動するメリットが大きいとき、事故のリスクを上回ると判断して自動車を使うのと同様です。 痛いときにその痛みを抑えることは、生活の質を向上します。痛みどめを使わずに我慢していたら、あるいは抑うつ傾向になってしまうかもしれません。メリットが大きいときには、遠慮せず薬を使ってください。痛み止めにも様々な種類がありますし、片頭痛であれば、発作を予防する「予防薬」という選択肢もあります。医師は個々人に合った薬、使い方を考えるお手伝いもできます。ぜひ医療機関でご相談ください。
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米CDC、新型コロナ感染ガイドライン緩和-熱なければ職場復帰可能
Bloomberg.com
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
このような変更を、過去にやっていたことが間違っていた、コロナが感染伝播しにくくなったなどと捉えるのは大きな誤解です。それでは、なぜこのような変更が行われるのでしょうか。 公衆衛生策を成功させるためには、最善の科学的根拠に基づく計画と同じぐらい、一般市民の理解と協力("buy in")が不可欠で、両者の最善のバランスを図る必要があります。根拠があるからと言ってそれを強引に押し通しても、効果は得られません。 具体的な例として、科学的根拠に基づき、マスクの着用義務やソーシャルディスタンスなどが推奨されてきましたが、これらの対策が、当初は一般市民のコロナへの不安などから来るニーズと合致し、「三密回避」に代表されるようなわかりやすいコミュニケーション、なぜ重要であるかが理解されることで、広く受け入れられ、感染流行の抑制に有効でした。しかし、そのような不安が軽減した2024年時点で同じことを推奨しても、おそらく理解は得られず、効果は得られないばかりか、不信感だけを買うことになり、百害あって一利なしになってしまうでしょう。 また、政策の柔軟性も大切な要素です。公衆衛生の状況はダイナミックに変化するため、新しい科学的知見が得られれば、推奨事項を速やかに更新し、それを市民に明確に伝える必要があります。例えば、パンデミック初期のガイドラインでは、マスクの供給不足やエビデンスの不足もあり、マスクの普遍的な使用は推奨されませんでしたが、ウイルスの伝播に関する理解が深まるにつれて、ガイドラインは更新され、マスクの使用が広く推奨されるようになりました。 このように、公衆衛生策の成功には、科学的根拠、一般市民の協力、そして状況の変化に応じた柔軟性の全てをうまく組み合わせる必要があります。このため、こうした変更がなされますし、妥当だと考えられるのです。当然全てを満たす100点の回答はなく、反対意見が出るのは当然のことです。
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オズワルド・畠中悠、初期の腎臓がんを公表「みんなも検査して!」
ORICON NEWS
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
このタイトルの意図やお気持ちはよく分かるものの、がんの早期発見というのはそんなにシンプルなものではありません。報道のケースのように、腎臓がんの早期発見がもし上手にできたら、救われる方はたくさんいるでしょう。しかし、現状では残念ながらこれが上手くできません。 例えば、腎臓がんの早期発見をするために、10万人の人に検査をしたとして、5人に腎臓がんが見つかるかもしれません。この5人のうち、2人はもしかすると検査のおかげで救われることになるかもしれません。一方、10万人のうち、1000人ほどには本当は見つけなくてよかった画像上の異常を見つけてしまうかもしれません。この1000人は不安で眠れない夜を過ごすことになるでしょう。また、この方たちは高い確率で精密検査が必要になり、中には針を刺す検査が必要になる人が出てきます。 針を刺す検査をした場合、一定の確率で出血などの合併症のリスクが生じます。腎臓がんの精密検査の場合には、1%程度で輸血が必要になるほどの大出血が起こることが知られています。こうして、例えば2人を救う間に、10人を命の危険に晒すことになるというような事態を生む可能性もあります。 このように、闇雲な検査は益よりも多い害を生む可能性もあり、だからこそ、どのような検査をどのような人に行うか、賢い選択が求められます。腎臓がんについては、残念ながら今のところ上手な早期発見の方法が確立されていません。
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