原田 洸

高齢者や基礎疾患がある方、医療従事者などは依然として感染した場合のリスクが高いと言えます。秋にインフルエンザワクチンを接種する際に同時に最新のコロナワクチンを接種する方法が患者にとっても医療者にとってもわかりやすく、このタイミングでFDAに承認されたのは大きな意味を持ちます。

エムポックス（サル痘）には異なる型のウイルスがあります。重症化しやすいクレード１（コンゴ盆地型）と比較的軽症なクレード２（西アフリカ型）で、2022年に世界中で流行したのはクレード２でした。クレード２では感染者数が約47000人であったのに対し、死亡者数は100人程度でした。現在アフリカで流行しているのは重症化しやすいクレード１のタイプで、感染者数が2800人（疑い症例 17000人）に対して500人以上の死亡が確認されており、重症化率が高いことがわかります。クレード１のタイプはアフリカを中心に最近流行していましたが、欧州などアフリカ外の国でも確認されており、東南アジアでも何件か報告されるようになりました。コロナのような検疫が必要な事態にはならないことが予想されていますが、公衆衛生上の脅威であることは間違いありません。

エムポックス（サル痘）には異なる型のウイルスがあります。重症化しやすいクレード１（コンゴ盆地型）と比較的軽症なクレード２（西アフリカ型）で、2022年に世界中で流行したのはクレード２でした。感染者数は約47000人であったのに対し、死亡者数は100人程度（致死率0.2%）でした。現在アフリカで流行しているのは重症化しやすいクレード１のタイプで、感染者数が2800人（疑い症例 17000人）に対して500人以上の死亡(致死率3～18%)が確認されており、重症化率が高いことがわかります。このウイルスが欧州や世界中に広がると、公衆衛生上の大きな懸念になるでしょう。

「エムポックス」よりも「サル痘」の方が馴染みがあるかもしれません。サル痘の名称はサルへの偏見につながる可能性があることから、WHOの名称変更に伴い日本でも今年５月に「エムポックス」に変更されています。 エムポックスウイルスはオルソポックスウイルス属の中のウイルスの１つです。接触感染や飛沫感染、性的な接触などにより感染がじわじわと広がります。症状は発疹のみの場合もあり、感染していたも気づかない場合も多く、注意が必要です 2022年から世界的な流行がみられましたが、その後一旦収束傾向になり、2023年5月にWHOはエムポックスの「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を終了する宣言をしていました。しかしながら今年に入ってからアフリカで再流行がみられ、1万5000人以上の感染と500人以上の死亡が確認されています。今後この感染が拡大し、再度世界的な流行にいたる懸念があります。

マイコプラズマ肺炎はマイコプラズマという細菌によって肺の炎症が起こる病気です。小児から若年者がかかることが多く、学校でも時々流行がみられます。記事にあるように頑固な咳が特徴ですが、その他は普通の風邪の症状とあまり変わりありません。一般的な風邪のウイルスと違って抗生剤による治療が可能であるため、咳が普通の風邪よりもひどかったり長引いたりする場合は病院で検査を受けるのが良いかもしれません。

子宮頚がんは若い女性を中心に罹患し、年間約2800人が無くなっている社会的インパクトの大きい疾患です。HPVワクチンを接種することでがんの発症を予防できることから、先進国のほとんどで接種が当たり前に行われています。日本は一時的に積極的な接種勧奨が中止になっていたことから、根拠に基づかない医療政策を行っていると、諸外国から批判されてきました。 記事に登場する中島さんはHPVワクチン接種を逃した世代にあたります。この世代の方は、本来であれば予防できるはずのがんが予防できなくなってしまった「被害者」とも言えます。この当事者の方々が声を上げて、正しい情報発信をすることは大きな価値があると思います。

最近数週間でコロナの感染者報告数は右肩上がりに増えています。しかしながらこの報告と実際の感染の流行は数週間のタイムラグがあります。身の回りでコロナに感染した方が増えてきた、というのが最も敏感に流行を反映している指標かもしれません。対応はこれまでとは変わらず、手洗いやアルコールによる手指消毒、定期的な予防接種などが感染予防や重症化予防に有効です。

理想的な睡眠は、休日でも平日でも同じ時間に寝て同じ時間に起きるという生活リズムを維持することです。そのためには、休日前の夜のスクリーンタイムを減らす、休日も朝同じ時間に起きる、といった工夫が重要かもしれません。 曜日ごとの突然死の割合に関するデータは興味深いですね。様々なバイアスがありますが、仕事に対するストレスが心筋梗塞などの心血管疾患に関連している可能性を示唆しています。 以下引用 「ドイツでは65歳以上の人はほとんど退職していますが、日曜日に対する月曜日の突然死の増加率は、65歳未満の人（23.6％）のほうが65歳以上の人（15.7％）に比べて大きいことも分かりました」

熱中症は暑くなり始める６月・７月に増えます。７月は特に猛暑の日が多かったことから、熱中症に関連した救急搬送が多くなったものと思われます。またコロナや手足口病などの感染症が増えたことも要因かもしれません。いずれにしても、救急車を呼んでもすぐに来なかったり、搬送先が見つかりにくくなっている可能性があることに注意しておいた方が良いでしょう。

認知症と関連する要因を体系的にまとめた内容の論文が発表されました。高血圧や肥満、運動不足、喫煙、過度の飲酒など、他の病気の原因にもなりうる生活習慣が認知症のリスクと関連することがわかっています。また、社会的な孤立といった他者との関わり方が認知症リスクに大きく関わることも述べられています。今行っている生活習慣の改善が将来の認知症を減らすことに繋がると思えば、より良い生活習慣に結びつくのかもしれません。 元の論文はこちらです https://www-thelancet-com.us1.proxy.openathens.net/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(24)01296-0/abstract

レカネマブによる脳の浮腫などの副作用の問題は今に始まったことではなく、臨床試験の段階で懸念されていたことです。認知機能低下を遅らせる効果よりも副作用の懸念が大きいというのは妥当な判断と言えます。米国FDAが承認した薬がEUのEMAで承認されないというのは珍しいことではありませんが、この判断はすでにレカネマブを承認した日本での使用にも影響が出るかもしれません。

飛行機の利用による健康の問題で最も有名なのは、エコノミークラス症候群と言われる、「深部静脈血栓症」です。これは、長時間座位で同じ姿勢でいることで、足に血の塊ができやすくなり、それが肺の血管まで移動して致死的になることもあります。長時間のフライトほどリスクが高いとされているため、長時間のフライトでは定期的に立ったり軽く体を動かしたりすることをお勧めします。