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ロシア、決済手段として暗号資産「いずれ」合法化=産業貿易相
岩下 直行京都大学 教授
伝統的金融から締め出しを食えば、暗号資産に向かうというのは今時珍しくない動きだろう。ロシアでも中央銀行は反対するだろうけど、ロシアがそう舵を切ることは既定路線のようだ。
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同じロイターだけど、こちらの記事はより深く状況を描写している。大手暗号資産業者と組んで反体制派の保有コインをトレースしたり、制裁を受けたエネルギーをマイニングに転用するといった議論がロシア国内で行われているらしい。簡単に実現する構想とも思えないけれど。
https://www.reuters.com/technology/how-crypto-giant-binance-built-ties-russian-fsb-linked-agency-2022-04-22/
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本来、暗号資産は個人のプライバシーの保護のための匿名送金をするのが目的で開発されたものであったのだが、何故か独裁政治で経済的に失敗した国の政府に好んで使われるというのは皮肉なことだと思う。ベネズエラやジンバブエにロシアが続くということだろうか。
「マカフィー」創業者が仮想通貨の脱税で逮捕、懲役30年の可能性
岩下 直行京都大学 教授
私は昔からMcAfee社のウィルス対策ソフトを使っていたから、wired誌に載ったジョン・マカフィーの数奇な半生を読んで驚愕したのを覚えている。彼が創業して成功したMcAfee社の事業を売却してベンチャー企業の創業に関わり、リーマンショックで1億ドルもの個人資産の多くを失い、ベリーズに隠棲し、殺人の容疑をかけられて逃亡し、2011年にグアテマラで逮捕されて米国に送還されるまでの話だったと思う。
2010年代後半に暗号資産に賭けて再び大富豪となったジョンは、業界では有名な大口投資家となった。しかし、彼が再び暗号資産をめぐる不正行為や脱税で起訴され、今度は逃亡先のスペインで逮捕されたという。米国に送還されれば相当期間の実刑が予想されていると報じられている。
元々はロッキード社のエンジニアで、新しい技術に目端が利き、ビジネスの才覚もあった人物が、2度も大儲けに成功しながら、波乱万丈の人生の末に刑務所に入ることになるというのも、人生の悲哀を感じる。彼はもう75歳だから、次に収監されたら、たぶん3回目の大儲けのチャンスは巡ってこないだろうが、もしこれから彼が自叙伝を書くのなら、ぜひ読んでみたいものだ。
経産省、全ての押印を廃止へ 2千種類の行政手続きで
岩下 直行京都大学 教授
ハンコ廃止に向けた経産省の取り組み。記事に書いてある通りであるとすれば、正しい方向であろう。原則はオンラインやメールで対応、押印不要とし、対面、書面、押印を要求するのは、どうしてもそれが必要な例外的なものにに限るべきだと思う。
なお、記事中、「手続きのオンライン申請を進める」とあるが、オンライン申請が使い易くないなどの理由でオンライン化比率が低い場合、それを理由に書面や押印が実質的に残ることになってしまっては意味がない。現在のオンライン申請システムは、紙でやっていたことをそのまま電子化しようとして、不便なつくりになっているものが少なくないのが実情だ。
特別なオンライン申請システムが本当に必要かの再検討も必要。要求するセキュリティのレベルによるが、標準的で簡易なフォーム入力やメールへのPDF添付で構わない手続きも多いと思われる。役所と申請者双方において、「役所への申請は正式なものでないといけない」という意識の改革が必要だろう。
東京都の「陽性率」、高止まり 感染収束へ検査拡充急務
岩下 直行京都大学 教授
陽性率が東京で40%というのは、厚生労働省による都道府県別一覧表が元になっていて、京大の山中教授も警鐘を鳴らしています。確かに、これが真の姿であれば、相当に深刻な事態です。
ところが、これは統計の計算式が不適切なための誤解なのです。陽性率38.1% の分母となる「検査実施人数」からは、医療機関から保険適用で民間検査機関に回った民間検査分が除かれているからです。
東京都情報サイトにある「検査人数」と「検査件数」の統計をみてみましょう。最近までの累積値で、人数が1万人で件数が3万件です。検査人数には、民間検査が入っていない一方、検査件数には入っています。また、検査件数は、一人で何度も検査すれば増えます。
民間検査が始まったのは3月6日です。検査件数と検査人数の比率をみると、3月6日までは検査件数の7割が検査人数となっています。つまり、保健所だけが検査を行っていた時には、保健所の検査の3割は、退院者などへの複数回の検査のために利用されていたことになります。民間検査はそういう目的では利用されないと考えられるので、検査件数を、保健所を利用した検査人数(a)、その3/7を重複検査(b)、残りの検査件数が民間検査(c)だと考えることにしましょう。このように検査件数を分類したときに、実際にコロナ感染を疑ってPCR検査を受けた人数は、a+cとなります。
感染者数(d)に対し、陽性率を保健所の検査人数のみで計算すると、d/aであり、これが厚生労働省の資料の計算式です。しかし、分子の感染者数には民間検査で検知されたものも含んでいますから、これだと分子分母のベースが合わないのです。
陽性率をd/(a+c)で計算すると、直近で17%と、約半分になります。実態はこちらに近いでしょう。
普通に考えると、人数が1万人で件数が3万件ですから、一人平均3回も検査するのか、と思っていたのですが、検査能力の不足が指摘される中、そんな贅沢な使い方はしていないでしょう。やはり、その差は民間検査が中心だと考えられます。だとすれば、検査人数を利用して計算した東京の陽性率だけ異様に高いことの理由が説明できます。
本当は、こうした誤解を生む数値を厚生労働省が公表するべきではありませんでした。また、原データを持っているはずの東京都がこうした計算を公表してくれれば、誤解を生まなかったのにと思います。
リブラへの参加希望、1500社を超える──PayPal、VISA離脱でも方針変わらず:リブラ協会が表明
岩下 直行京都大学 教授
まあ、こういうステートメントが出てくるだろうとは思っていたけれど、興味深いのは「1500を超える企業・組織が同協会への加盟を希望している」のに、同協会が定める条件を満たしているのが「約180の企業・組織」にとどまるということだ。現在のLibra backers 21社の中にも、あまり知られていない企業・組織が含まれているけれど、希望者の9割近くが「条件を満たしていない」というのは、どういう状態なんだろう。
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AML対策や利用者保護についての規制当局からの要請は、今のLibraの仕組みでは容易に対応できないと思われる中、そんなに多くの企業・組織が参加を希望するのは、いったい何を求めてのことなのだろうか。みんながみんな、Libraによる金融包摂に賛同して参加を求めているとは考えにくいのだが。
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この辺の動きを見ていると、Libraが「金融包摂されていない途上国の人々に利用される決済手段」を目指しているという主張を疑わしく感じてしまう。やはり、Libraは、ビットコインの亜流として発行体に値上がり益をもたらすものだと思われているから、参加を希望する人が多いのではないか。そうであれば、いかにリザーブを持とうが、値上がりした後の価格は安定せず、通貨としては使い物にならないと思うのだが。
【創業者独白】あの日、コインチェックで本当に起きたこと
岩下 直行京都大学 教授
何やらこの二人を称賛するコメントが多いようだが、私はどうかと思う。
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580億円の被害を受けても、こうやって二人そろって同じ仕事を続けていられるんだから、被害に遭った後の運命としては幸運だったのだろう。顧客への被害は補償したとはいえ、犯罪者側に巨額の資金が渡ったまま資金洗浄されてしまい、未だに事件が解明されていないことや、その後の市況や関係者に与えた影響を考えると、こんな風にニヤけた顔でメディアに登場していることに、私は強い違和感を覚える。
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1月26日11時のslackで残高の不整合を知ったというが、犯罪が起こったのはその11時間も前であり、犯人は深夜、早朝、午前中と何度も不正送金を繰り返していた。それに気づけなかったのは、専門業者として恥ずかしいことだと思う。動画の演出や編集の関係もあるかもしれないが、それらがまるでごく軽い失敗のように語られており、しかも二人が同じ会社で同じ事業を続けていることに、この業界の異常さを感じる。
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週刊誌には、こんな報道があることも指摘しておきたい。
https://bunshun.jp/articles/-/10203
■「コインチェック」騒動の後始末 和田前社長が手にした大金はいくら?(文集オンライン、2018/12/30)
近畿大、全教員が「Slack」利用へ “お堅い”やりとりなくす
岩下 直行京都大学 教授
私の勤務先も最近、AWSとG Suiteなどに移行した( https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1906/13/news077.html )。大学の情報システムは、公的機関の融通の利かない業務要件と、利用環境の多様性もあって、民間企業のような柔軟なシステム更改はなかなか進まなかったようだ。しかし、公的機関もITを活用して生産性を向上していくことは急務であり、こうした変化はもう避けられないだろう。とはいえ、基本ツールを変えたとしても、それに魂を入れるためは、ユーザー側が新しいシステムを活かす業務の見直しを行うことが不可避である。ツールの見直しにつづいて、利用者側からの新システムを活かすような創意工夫が必要となるだろう。
セブンペイ5500万円不正被害 新規登録停止、900人に補償
岩下 直行京都大学 教授
今回の7ペイ事件、問題の本質は7ペイというスマホ決済を独自に作ったのではなく、既存のomni7というECサイトをベースに7ペイの機能を建て増ししたところにあるのではないか。omni7は単なる通販サイトであり、決済機能を担うプラットフォームとしてはかなり手を抜いた仕組みのようだ。例えば、現時点ですら、omni7にログイン状態したからIDやメールアドレスはパスワードなしで変更可能だし、その結果通知も、何を変えても同一内容で、確認のしようがない。そのIDやパスワードやメールアドレスが7ペイと共用されているのだから、セキュリティが弱くなるのは当然といえる。既存の建て増しで急いで構築した構想に無理があったのではないか。
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150万人の7ペイ利用者のほとんどは、スマホから新規に会員登録したと思われるので、そもそもomni7と認証情報が共有されていることすら知らないだろう。記者会見で「海外からの不正アクセスを止めた」とあったが、理解できない人も多かったはずだ。omni7のセキュリティ要件は、ネットバンクのそれとは比較にならないくらい緩いが、ECサイトで決済機能が別建てであれば、たいして悪いことはできないから、問題にならなかったのだろう。
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今回の攻撃は、アプリの利用開始の翌日に、かなり大規模に行われている。多分、攻撃したグループは、omni7に7ペイが建て増しされることを事前に察知して、omni7への攻撃方法を周到に準備していたのではないか。だとすれば、店頭でタバコなどを買った実行犯は「出し子」に過ぎず、全容解明は容易ではないかもしれない。
仮想通貨「リブラ」で、フェイスブックがメガバンクを壊滅させる日…
岩下 直行京都大学 教授
これからどう展開するか分からない「リブラ」については、想像力をたくましくして自由に未来を語ってくれても構わないと思う。でも、「メガバンクが崩壊」とか「世界の金融業界の覇権が一気に変化」と書くときには、金融に関する正確な知識が必要だろう。その意味では、この記事の筆者の現状認識には大きな問題がありそうだ。
例えば、記事には「銀行が現金を取り扱うコストを収入としている」と書かれているが、今の時代、銀行にとっても現金のハンドリングは、その費用が回収できない不採算な業務だ。だからこそ、自らもキャッシュレスに参入しようとしたり、インターネットでの送金に顧客を誘導しようとしているのだ。それを知ってか知らずか、「リブラ」が銀行の顧客基盤を奪うという説明の辺りでは、記事の説明はいかにも苦しげにみえるが、そういうシナリオでないと困るのだろうか。
既存の金融機関の海外進出は、「アフリカや南米 .. アジア諸国も当然ながら、各国の金融行政の規制という巨大な壁に阻まれる」ので望み薄だという。しかし、もし世界的な金融機関の進出すら拒むほど、新興国の金融規制が壁になるのだとすれば、Facebookだって進出できないだろう。Facebookがやるならば、規制を無視して良いという主張は理解できない。
現実を見てみよう。新興国の金融包摂は、ITを活用した新しい決済手段によって着々と進んでいる。すでに、成人の口座保有率は、中国、インド、ケニアで8割を超えた(世界銀行のデータによる)。それらはいずれも、各国の金融規制と整合的な、各国の国内通貨での決済を提供するサービスであり、各国の銀行はそのネットワークの構成要素として重要な役割を果たしている。どの新興国でも、金融包摂が進んだために既存の銀行が崩壊するといった現象は起きていない。
「リブラ」の動き方や今後の展開についても、私とはかなり異なった見方をしている記事だけれど、実態がない部分は、どうなるか分からないから、何が正しいとも言えない。しかし、実態がある部分については、是非、正しい認識を持ってほしいと思う。
【1分解説】新仮想通貨「リブラ」の今知っておくべきこと
岩下 直行京都大学 教授
Facebook のリブラがどのようなサービスとなるのかはまだ分からない。各国の金融規制とどう折り合いをつけるのか、これからの議論だろう。ただし、暗号資産だから、ステーブルコインだから、ブロックチェーンを使うから、特別なことができるとは考えない方がいいだろう。
もしFacebookのユーザー間でドル建てで自由に送金ができる仕組みができて、それが国際的にも可能になるのだとすれば、当然、犯罪や脱税やテロ資金調達を目的としたマネロンに対する対策が必要になる。Facebookを使えば国際送金し放題となったら、それはそれで便利だろうが、犯罪や脱税に使う側にとっても便利になる。したがって、現在の国際送金で要請されているマネロン対策と同等以上のものがなければ、規制の尻抜けになってしまう。それは、技術の問題ではなくて、社会の秩序をどう維持するかという問題だ。
インターネットで世界中が繋がったことは素晴らしいことだが、ことお金のやり取りに関しては、国境の壁が存在する。一定の規制に従うならば、国際的な送金ができないわけではないが、コンプライアンスを維持するにはある程度のコストは掛かるものだ。現在の各国の国家の枠組みを前提に、犯罪防止や消費者保護といった目的を考えれば、それは仕方のないことだろう。
金融包摂は社会的課題、高齢者向け新サービスはチャンス=日銀総裁
岩下 直行京都大学 教授
「金融包摂」という言葉は、途上国や新興国において多くの人々が金融サービスにアクセスできない状況を改善する、という意味で使われていたのですが、ITの進展の結果、新興国の多くでは既に先進国並みになってきています。
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もちろん、まだ途上国の多くでは金融包摂は深刻な問題なのですが、むしろ高齢化が進む日本において、インターネットを活用した新しい金融サービスにアクセスできない高齢者が増えているという、別の金融包摂問題が生じています。
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中国では、アリペイが身体障碍者や高齢者にスマホQR決済を可能にするための教育やシステム開発を進め、万人がアリペイで決済できる環境を作ろうとしています。日本でも、高齢者のDigital Divide問題に対処していくことが、伝統的な金融機関やFinTech企業にとっての新しい課題となるのでしょう。
フィンテックで「金融システムに混乱も」、IMF専務理事が警鐘
岩下 直行京都大学 教授
私は福岡の会場で直接この講演をお聞きしていたので、ちょっとこの報道には違和感を感じました。ラガルド専務理事のスピーチは、もっとフィンテックをポジティブに評価したものであったからです。
専務理事のスピーチは、IMF自身のサイトで日本語版が読めますから、是非こちらを読んだうえで、記事がポイントをついているかどうかを判断するとよいと思います。
https://www.imf.org/ja/News/Articles/2019/06/07/sp060819-lagarde-the-next-steps-for-international-cooperation-in-fintech
確かに、「金融環境の大きな混乱のひとつ」(A significant disruption to the financial landscape)が、大手テクノロジー企業に起因する可能性が高いとは指摘しています。しかし、この混乱とは、既に全世界で生じつつある古い金融と新しい金融との競争、新しい金融への規制が及ばないことなどを指しているのだろうと私は考えます。GAFAによって金融危機が引き起こされると警告しているわけではないのです。
ラガルド専務理事は、その一方で、「フィンテックの潜在力を活かして金融の包摂性を高め、一層の発展を実現」するために、「暗号資産、ノンバンクのフィンテック仲介機関、データ・ガバナンスの面で、国ごとに異なるアプローチを調和させることが非常に重要です。」とも述べています。そして、「石橋を叩いて渡れ」という日本のことわざを引用して、慎重に変革を進めていくべきだと結んでいるのです。
会場では、この「石橋を叩いて渡れ。でも安全が確信ができないなら渡るな」の一節で、笑いが漏れました。でも、実際には、渡らないでいることは難しいことは、聴衆も理解していたと思います。
問題は、事態が進展してしまう前に、「国ごとに異なるアプローチを調和させること」ができるか、ということでしょう。専務理事のスピーチは、そのための各国金融当局の協調を鼓舞するものであったと思います。
NORMAL
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