木下 智博

記事の途中にある「２年超で余力なくなる」という試算の前提に問題があります。 まず、日銀の国債買入れの月額が、現状６兆円からいきなり３兆円に減ることなど、あり得ません。植田総裁のおっしゃる「相応の規模」の減額は、最終的にそうなるだろうという類いの話だと市場関係者は理解しています。白川日銀の包括的金融緩和の時代でも、年間30～40兆円の国債買入れをしていたのに、それすら下回る金額にまで、いきなり減額することはとても考えられません。 次に、新規発行が年間35兆円という前提は、国債発行残高の純増額という意味で記事を書いておられるようですが、これは多過ぎます。2025年度にプライマリーバランスが黒字化するならば、利払い費用の10数兆円しか、国債発行残高は純増しないはずです。 三菱UFJ銀行さんのかなり保守的な見積りのとおりの民間銀行保有余力だったとしても、余力を使い尽くすのに、４～５年はかかるのではないでしょうか。

桂畑さんがご指摘のとおり、輸入関税や保護主義は、米国内のインフレ圧力を強める方向に働きます。トランプ候補は大頭領時代に、関税は輸出する中国側が全額負担していると強弁しましたが、輸出価格の設定に織り込まれてしまえば、同じことになります。 とはいえ、今回の大頭領選でトランプ候補は、バイデノミクスの惹き起こしたインフレの惨状を酷評してきました。2016年の大頭領選のように、ナバロやボルトンなど極端な政策思想を持つ人々がブレーンにはいないように見受けられます。 富裕層減税は行うでしょうが、そのことが理由になって長期金利が上昇し、むしろ米国の経済活動にブレーキがかかり、インフレ圧力を弱める可能性はないでしょうか。

ユーロ圏では、賃上げがサービス価格に転嫁されるインフレ圧力がまだまだ強いという判断のようですね。現にこのところの月次のインフレ率は、2.5％前後のところを行ったり来たりで、下げ渋っています。

神田財務官の「一部の国における長期にわたる高金利の継続が実体経済を脅かし、「金融・資本市場の不安定化につながるリスクにも留意が必要」とも指摘」とは、暗にアメリカの高金利政策のことを批判しているようですが、こうした「攻めた」発言は、大丈夫ですかね。 インフレ退治のために必要があって高金利を維持しているわけですので、余り他国の金融政策のことを批判しないほうが賢明かと思われます。 後任の三村財務官や植田日銀総裁が、イエレン財務長官からしっぺ返しを食らうのが少し心配です。

今度こそ黒字化目標を達成した実績をみてみたいですね。 もう一つ、あわせて「政府債務残高のGDP比を安定的に引き下げる」という目標もありましたね。

米国の投資家は、日銀が国債買入れ減額計画の決定と発表を難なくこなしていけると「過大評価」しているようですが、そこが最大のリスクです。市場流動性の細い、日本の国債市場の特殊性が、よくわかっていないのかもしれません。 万が一、日銀が国債買入れ減額についての情報発信に失敗し、中長期金利が急上昇するようなことがあれば、超短期の0.15％利上げどころではないインパクトがあります。 ボラティリティが高まり、インプライドレートの計算など一気に吹き飛んでしまうのではないでしょうか。

このリオのG20会議出席を最後に退任される鈴木財務官へのはなむけのお言葉でしょうか。

短期売買の投機筋の動きはうつろい易く、正直よくわかりません。 でも、月次のヘッドラインCPIインフレ率の数字について米国と日本の差を見ますと、 2022年には７％ポイントも開いていたのが、先月は0.2％ポイントまで狭まってきています。 米国と日本のインフレ率の差が小さくなれば、先行きの金利政策の違いも小さくなると市場関係者が予想するのも自然ですよね。ここ数年の円キャリートレードの大前提が崩れつつあるのでしょうか。 オット、物言えば唇寒し。

6月失業率が4.1％に達し、FOMCの24年末見通しを超えたばかりか、FOMCの考える長期的な（自然）失業率の水準に近づいてきました。このように、米国経済が緩やかに減速していることを示すデータは揃いつつありますので、9月利下げは十分に考えられます。 9月利下げは、トランプ陣営から「民主党におもねる政治的な動き」と指弾されるリスクはありますが、もともと、当のトランプ候補から「パウエル議長は再任しない」と公言され失うものは何もないパウエル議長は、脅しに屈しないはずです。「ほぼトラ」だった政治情勢も、一気に流動化してきましたので、なおさらです。

不交付団体の数が３年度連続で増えたとは言っても、コロナ前の令和元年度、すなわち2019年度の86は超えていません。 交付される総額は前年度比1,7％増加しています。物価高や名目経済の成長を反映して地方税収が伸びたお蔭で、メリハリの効いた配分が少しはできるようにはなったと評価できます。

株式市場とか上場とか、情報開示による投資家保護の意味とか、不動産取引の複雑さとか、いろいろなことを深く考えさせられる有益な動画でありながら、柳橋さんとの掛け合いが面白く、このまま学生に見せたい教育コンテンツです。 大酒さんがアルデプロの二代目社長さんに発した「何で上場したんですか」というご質問が、まさに本質を突いているように思いました。 アルデプロのビジネスモデルや収益性は、権利調整の対象となっている旧耐震の不動産物件の個別事情に左右される側面が強いので、非上場が最適です。アルデプロにとっても、東証にとっても、一般投資家にとっても、収まるべきところに収まったように思います。 今後は、アルデプロにお金を貸している金融機関が、経営に対するガバナンスを利かせることを期待しましょう。

藤代さんお考えの「個人消費を回復させるための利上げ」というロジックは、説得力があります。 ただ、これを実際に行うと、この後の効果波及経路の中で、消費者物価指数で図ったインフレ率が低下することになります。円安を防ぎ実質所得の増加率を下支えするために利上げしたわけですから、これは日銀の狙いどおりということになるわけです。 しかし、ここで、表面的には、物価安定目標の達成が遠退いてしまうように見えます。日銀が基調的なインフレ率は高まってきていると抗弁しても、政府や国民から、時期尚早の利上げで失敗した、と批判されるリスクがあります。