ホーム
16フォロー
27775フォロワー
「円高が来る」理論的根拠を深掘りして見えたこと
東洋経済オンライン
唐鎌 大輔株式会社みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
久々にやや掘り下げた議論を行っています。恐らくこれから購買力平価(PPP)に照らして円高・・・という議論が出て来そうなので、先に出しておきますが、それはサービスで測った場合の円高圧力の話であって、既に財で測ったPPPは円安に転じているという見方もできます。かねて円高の原因は「製造業の国際競争力の強さ」という主張があり、それは理論的(バラッササミュエルソン効果的に)頷けるものでありましたが、今がその巻き戻しと考えれば腑に落ちる部分もあります。 以下、最も言いたかった箇所の1つです。 ーーーーーーーーーーーー バラッサ・サミュエルソン効果に基づき「製造業の国際競争力の強さが円高の原因」という考え方が事実とすれば、「製造業の国際競争力の弱さが円安の原因」という事実も浮かび上がる。ここではさしずめバラッサ・サミュエルソン効果の巻き戻し、「逆バラッサ・サミュエルソン効果」という言葉が想起される ただし、「製造業の国際競争力の弱さ」というよりも「製造業の輸出拠点としての弱さ」という微妙な表現の違いを意識したいところだ。 というのも、日本の製造業は儲かっていないわけではない。例えば東証プライム市場に上場する製造業の純利益は2024年3月期には過去最高益を記録している。日本の製造業を語るうえでの現実的な問題は「国際競争力の弱さ」というよりも「日本国内における輸出パワーの衰え」である。 長引く円安相場について「製造業の輸出拠点としての弱さが円安の原因」と言われれば、比較的腑に落ちる向きは多いのではないか。
「日本は外貨を獲得しにくくなっている」 唐鎌大輔・みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストインタビュー(サンデー毎日×週刊エコノミストOnline)
Yahoo!ニュース
唐鎌 大輔株式会社みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
限られたインタビューの中で極力、言いたいことをまとめて頂いたと思っております。奇しくもデジタル赤字やCFベース経常収支というフレーズが私の代名詞のようになり、それ自体は有難い話ですが、私はそれがあるから円安になっていると単調な議論をしてきたつもりはないです。それらを無視した日米金利差偏重の議論に疑問があると考えてきました。最近、「デジタル赤字は円安の主因ではない」という言説を断続的に見聞きするのですが、たかだか現時点で6兆円弱しかない赤字が主因の訳がなく、議論が矮小化され過ぎていることを残念に思います。デジタルを筆頭とするサービス収支赤字に関し、私が話題にするまでその存在すら関知しなかった向きは多いはずで、その無意識のうちの外貨流出こそ問題ではないかと感じています。 真の問題はデジタルを筆頭に、コンサルティングであったり、研究開発であったり、保険年金サービスであったりといったサービス収支のあらゆる部分で外貨流出が起きているということであり、それを止める手立てを日本が持っていない、すなわち「拡大可能性が尽きない」という点が一番心配なのです。為替を超えて、日本経済全体を議論するための視点を近刊では提供させて頂いたつもりです。ご参考になれば幸いでです。
3Picks
米国の利下げで日本はどれだけ円高になり得るのか?貿易赤字国に転落した日本の円高反発力に疑問 【唐鎌大輔の為替から見る日本】ポジション調整後、円を積極的に買い進める理由は残っているか?
JBpress(日本ビジネスプレス) JBpress 最新記事
唐鎌 大輔株式会社みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
そもそも貿易赤字国の時に利下げを経験した歴史が殆ど無いというポイントについて押さえていない向きが結構多く、そのサンプルになり得る19年7月末以降の円相場の動きは注目したいということは昨年末からモーサテなどでも強調して参りました(文中のマトリックスも昨年12月の放送で使ったものです)。 とりあえず600兆円の残高が取り崩されて云々という解説は後付け極まりないと私は思っています。だったら、円安が進んでいる時にその数字が使われなかった理由がよく分からないからです。ちなみにコラム中ではデータ更新が間に合いませんでしたが、IMM通貨先物の円ショートに関しては8/6時点でほぼ中立化されています。その上での着地が146円という目線は持ちたいところです。 なお、この手の議論になるとどうしても水準を聞かれるのですが、年内2回米利下げ、日銀利上げ打ち止めという過程では、という話であり、ここが可変的であることはリスクとは考えています。 また、本コラムの主題ではありませんが、キャッシュフロー(CF)ベースで見た経常収支も明らかに改善傾向を辿っているのは事実であり、需給面で見た円相場の脆弱性は過去2年間と比較すればかなり修復されているのも事実です。この改善度合いを見ながら、140円台なのか、130円台なのかを検討しているところであり、この論点には原油を筆頭とする資源価格が相当程度で絡んできます。全てをコラムで語りきれるわけではないことはご了承ください。 ご参考になれば幸いです。
192Picks
NORMAL