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パウエルFRB議長、「利下げの時が来た」-ジャクソンホール
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
パウエル議長の講演は、政策運営に関して顕著に新たな材料を示した訳ではなく、今後の利下げ方向での対応を確認した印象を受けます。
前回のFOMC以降に物価や雇用が激変した訳ではないという意味では、唐鎌さんが指摘したように、この内容は前回の記者会見で明示してもよかったように思います。
一方で、記事が指摘するように、利下げのペースや程度についてはデータ依存の姿勢を堅持して、金融緩和の内容に関する柔軟性は維持した訳です。
しかし、パウエル議長がこれ以上の労働市場の軟化は許容しないと明言してしまったことは、今後の金融緩和に相応の制約をかける可能性があります。
つまり、パウエル議長も示唆したように、現在の失業率はコロナ前に最大雇用と整合的とされていた水準よりも明確に低い訳です。それが新たな政策目標になってしまうと、長い目でみて金融政策の緩和バイアスが恒常化する可能性が生じます。
これに対し、FRBが今回の労働市場の変化は将来に向けても持続的であり、最大雇用と整合的な失業率は以前より低いと考えているのであれば、過度な金融緩和を招くことにはなりません。
今回のジャクソンホール会議のテーマに照らすと、パウエル議長には、むしろ最大雇用の政策目標に関するFRBとしての現在の理解やそれが今後の政策運営に与える意味合いについても、きちんと語ってもらうことが有意義であったように思います。
「大多数」の当局者、9月利下げ適切との見解=FOMC議事要旨
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
今回の議事要旨のポイントは、記事が指摘する通り、経済が見通し通りに進めば次回会合での利下げが適当との意見が、大多数(vast majority)を占めたことです。
その背景としては、労働市場が足元では依然として強いものの、雇用増のペースや賃金上昇率に鈍化の見通しが強まってきたとの見方が大勢になった点が挙げられます。
また、足元の雇用者数の増加が過大評価されているとの議論もあって、BLSによる年次改定の内容をある程度知っていた可能性もあります。
このため、FOMCメンバーの間では、dual mandateの達成において、インフレ目標を上回るリスクが低下する一方、最大雇用の目標を達成できないリスクが上昇したとの認識が共有されました。
ただし、次回以降の利下げペースをどうするかについては、少なくとも前回のFOMCの時点では意見が分かれていたことも示唆されています。物価の先行きにはなお不透明な点が残るとの意見があっただけでなく、現在の金融引き締めがどの程度強すぎるのかについても、様々な理解が示されたからです。
PayPay、国内初の給与デジタル払い「PayPay給与受取」発表
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
既に他のピッカーの方々が指摘された通り、少なくとも短期的には、事業者にも利用者にも明確なメリットが生じるとは言えないように見えます。
ただし、長い目で見れば、本制度の第一号案件を担う事業者には、利用者の行動特性(どの程度の金額を振り分けてくるか、それをどんな用途に振り向けるかなど)に関するノウハウを先行的に蓄積することができます。加えて、金利水準が上がってくれば、利用者の未使用残高による運用益の増加も展望できます。
こうしたある種の社会実験が可能であるのは、この事業者の企業グループが多くの雇用者を抱えているからである点も重要です。その一方で、電子商取引の運営業者のように、利用者の決済ニーズをより広範に満たすことのできる事業者が、今後にこの制度をどう活用しようとするか、あるいは地域通貨との連携はどうなるかといった点も興味深く思います。
日銀7月会合主な意見、委員ら物価上振れを懸念 1%へ段階的利上げ提唱も
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
今回の「主な意見」は植田総裁の記者会見のポイントと概ね一致しており、大きなサプライズはないように感じます。
その上で、景気に関しては慎重論も見られた一方で、物価についてはコメントの数自体が少なかったことに加えて、今後の上昇リスクを指摘する向きが支配的であったことが印象的です。
その結果、利上げについても物価の上振れリスクに対応すべきという「積極的な支持」と実質金利の点で低位である政策金利の調節は妥当という「消極的な支持」が相応に混在していたことが注目されます。
つまり、植田総裁が記者会見で主張した「早期利上げによる経済の負担の軽減」というロジックが両論を結びつける形でコンセンサスを形成したのだと推測されます。
電報廃止へ議論提起 NTT社長「どこかで終了を」
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
電気通信については全くの素人ですが、デジタル通貨の将来像を考える上で興味深い議論だと思います。
朝の某ラジオ番組でも、もはや「サクラサク」という表現を知らない世代も多くなっている一方、依然として年間300万件強の需要があるとか、慶弔のニーズは根強いという話が紹介されていました。
支払・決済の世界でも、デジタルな手段の活用が加速している一方、現金に対するコアな需要は根強く残存することが考えられます。また、通貨の場合は、価値が喪失しないという意味での安全性も求められます。
少なくとも現金に関しては、廃止か否かという以外にも、利用者とのコスト分担のあり方を見直すとか、新たな技術を有する新規参入者によるシナジーに期待するといった対応も検討に値するように思います。
市場不安定なら「利上げない」、現行水準で緩和続ける必要=内田日銀副総裁
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
市場で「タカ派」と見られている内田副総裁の発言なので、それだけ「効果的」であったと思います。
そのうえで、大変難しい局面での発言であるとは思いますが、記事が伝えるように「金融資本市場が不安定な」下では利上げを行うことはないと発言されたのであれば、今後に金融市場が過度な期待をもつ可能性もあるように思います。
日銀を含む政策当局が阻止すべきことは金融システムの不安定化の方であり、しかも、既に株価も為替相場も落ち着きどころを探り始めていたところです。昨日の政府・日銀連絡会議のタイミングも含めて、賛否の分かれる対応であったように思います。
株安・円高に歯止めかからず、マネーが逆回転 米景気後退に現実味
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
欧州や中国の株価調整が、日本や韓国、台湾に比べて小さい点を考えると、今回の株価下落の主因の一つが米国の景気後退懸念にあることに異論は少ないと思います。
また、別なピックでも指摘したように、大幅な円高の進行には、株安に伴うリスクオフとともに、日銀による継続的な利上げ方針の明記が影響している点も同様に異論が少ないと思います。
今後については、これらのメカニズムが働くとしても、市場は株価水準や為替相場について、新たな落ち着きどころを模索することが期待されます。
そのためにも、こうした調整局面の間に金融システム面での圧力が生じないようにすることが極めて重要です。
少なくとも現時点では、予て高値で推移していたセクターの株価が大きく調整していることや、長期金利がむしろ急低下していることからみて、パニック的な換金売りのリスクは抑制されていますが、そうしたリスクの顕在化を防ぐうえでは、政策当局は一時的かつ臨時的な対応も示唆することが有用と成り得ます。
日銀が政策金利0.25%に引き上げ、経済・物価想定通りなら利上げ継続
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
今回の政策決定に関しては、利上げ自体もさることながら、日銀が声明文の中で、物価が見通しに沿った動きをする限り、今後も継続的に利上げを継続する方針を示した点が重要です。
私自身は、各所で寄稿したように記事の言う「少数派」ではありましたが、日銀がここまで踏み込んだことはやや意外ではありました。また、物価上昇圧力の主因が「第二の力」へシフトすることに自信を示したことも印象的です。
その上で、リスクバランスチャートをみると、来年度のコアインフレ見通しには相応のばらつきがあり、見通しの実現にはリスクも意識されている点に注意する必要があります。
中国、景気低迷に危機感 利下げ効果は不透明
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
今回の政策変更が広範囲の手段を動員した点は、記事が示唆するような「危機感」を伺わせます。その一方で、利下げ幅が引き続き小幅である点で、金融市場が景気刺激の効果に疑問を持つことも、もっともなことだと思います。
人民銀行が利下げ幅に慎重である理由としては、人民元安が加速するリスクを抑制したいと考えている可能性があります。しかも、中国経済にとっての元安進行のコストは、輸入物価の上昇による実質購買力の喪失だけでなく、資本収支の悪化に伴う金融システムの圧迫が含まれる点で厄介です。
記事では触れていないレポ金利の改定も含めて、複数の政策目標を同時に解決しようとしている点で、政策運営の意図や効果がわかりにくくなっている訳です。
ECB、金利据え置き 9月会合巡り「何も決まっていない」と総裁
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
記事が指摘するように、記者会見でLagarde総裁は9月理事会での利下げ決定はwide openであることを再三強調しました。加えて、今回の理事会では9月利下げについて全く議論しなかったと説明しました。
その一方で、インフレについては、賃金改定の影響が残る今年を終えれば目標に向けて低下するとの見通しを確認したほか、景気についても、設備投資と輸出の停滞に懸念を示し、先行きも下方リスクが大きい点を認め、9月の利下げには合理性があることを示唆しました。
Lagarde総裁がこのように整合的でない発言を行った背景には、欧州メディアが指摘するように、6月利下げの事前予告がインフレ指標の上昇に直面したことのトラウマによる面があるのかもしれません。実際に、欧州市場はこれを見透かして9月利下げとの見方が強まっています。
個人的には、Lagarde総裁がインフレの先行きを考える上で、賃金、企業収益、生産性の3要素(頭文字をとってWPP)に着目する考えを強調したことも興味深く思いました。合理的だとは思いますが、ユーロ圏の場合には企業収益や生産性のデータに大きな時間的なラグがある点が実務的な障害になるリスクがあります。
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