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池江璃花子選手が白血病を公表 「信じられず混乱」
産経ニュース
大須賀 覚アラバマ大学バーミンガム校 助教授
この報道に対する反応を見ていると、日本でがんであることを公表する難しさを感じます。今回の件でもそうですが、がんであるということを公表すると、"善意の攻撃"を受けてしまいます。 皆さんの本当に治ってもらいたいと思う気持ちは本当に良くわかります。しかし、「絶対治る」「必ず治る」などの何の根拠もない励ましは、患者さんにとって決して嬉しいものではないことが多いです。「応援している」「何かできることがあったら言って欲しい」のような、患者自身をそっとしておいてあげて、近くにいる、何か必要なことがあったら言ってという、遠巻きに寄り添う姿勢が求められると思います。 また、治療に対してアドバイスをしようとする人も多くでるのも問題です。私はこれをやって助けられた。この食品が良いなどの、科学的根拠に基づかないアドバイスも多くされてしまいます。良い医者がいるからとかの治療に迷いをきたすようなアドバイスもあります。特に親しい人ほど断ることはできず、付き合わなくちゃいけなくなるなど、それらは大きな心の負担となります。治療に関わる話については主治医グループ以外はあまり意見すべきではないと思います。 皆さん、善かれと思って行う行動であることは理解しています。しかし、がん患者さん側がどう思うのか、何を求めているのかということへの配慮はかけていて、逆に善意に参ってしまう患者さんがたくさんいるのが日本の現実です。今回も公表に伴って、とんでもない数の善意の攻撃がきていると予想できます。心配です。 もう少し冷静に、距離感を持って、いつも見守っているよ、何かあったらいつでも助けるよという姿勢を保つことが大事と思います。がん患者への理解、病気の理解がもっと日本で進めばと願っています。
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手を出してはいけない「がん未承認治療」の見分け方、教えます(大須賀 覚)
ブルーバックス | 講談社
大須賀 覚アラバマ大学バーミンガム校 助教授
講談社ブログに記事を寄稿しました。 がん患者さんの中には有効性の確認された標準治療以外にできることはないかと、未承認治療を試みる方もいます。ただ未承認治療は玉石混淆で、どれを選ぶかが大変に難しいです。今回はこの未承認治療の中で、期待できる治療と怪しい治療をどう見極めるかを解説しました。 未承認薬の中では価格が高いものほど、効果が期待できると勘違いしている人が多いですが、実際には基本的に無料で行える後期臨床研究に進んでいる薬が、最も高い有効性を期待できます。 高額販売の未承認薬は開発初期段階であったり、すでに効果が確認できなかった薬が多く入っており、特に注意が必要です。 一般の方はネット/書籍で紹介されているがん治療の中には効果のあるものが結構あると思っている人が多いです。しかし、実際は今回にお示ししたように、有効なお薬は滅多にありません。 がんは本当に難しい病気です。ネット/書籍では少数例のケースを過度に強調して誤解させていますが、実際に多数例で厳密な検討をするとごく少数の治療しか本当に有効ではありません。 がん専門医が未承認治療を積極的にお勧めすることがほとんどない理由は、今回にお示ししたように、開発後期にあるような薬でないと、有効である可能性は極めて低く、期待が十分にできないためです。
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がんゲノム拠点病院強化、新たに30施設指定
読売新聞
大須賀 覚アラバマ大学バーミンガム校 助教授
がんは、正常な細胞に遺伝子異常が入ることで、異常に増える能力を獲得して起こる病気です。がん細胞が増えるためには、その獲得した遺伝子異常を使っていることがあるので、その遺伝子異常を調べて、それを抑える薬を使うことは、一つの合理的な治療手段となります。 ただ、このアプローチには2つの大きな問題があって、今までは一部の遺伝子変異のみしか調べられていませんでした。その問題とは、 1) 検査費用が高すぎた 2) 遺伝子異常をみつけても有効な治療に結びつかなかった 高価な費用に関しては、近年の技術進歩で急激に安価になってきました。また、がんの遺伝子変異研究の成果によって、治療の対象となりそうな代表的な遺伝子異常がしぼられてきたことで、全部の遺伝子異常を調べるのではなくて、絞った遺伝子異常のみを調べる簡易検査であるパネル検査が登場して、実臨床で使う現実的なレベルの価格となってきました。今年はこのパネル検査が保険適応となる予定で、本格的にがんゲノム拠点病院で検査が行われることと予想されます。 もう一つの問題であった遺伝子異常をみつけても良い治療に結びつかなかったという点でも、少しずつ改善が見られてきています。近年、がん増殖に密接に関わる遺伝子異常が明らかとなってきました。一つの例としては、NTRK遺伝子変異というものがあります。この遺伝子異常があると、これに対する阻害剤がとても良く効くことがわかっています。今まで有効な治療がなかった小児がんでも効果を示すことが示されています。遺伝子変異検査を行わないとこの遺伝子異常があるということはわかりませんし、薬剤で治療できるということがわからないため、がん遺伝子検査の必要性は高まっています。今年は、NTRK遺伝子変異に対する阻害剤が日本で保険認可される予定で、これもがんゲノム検査時代の幕開けを告げる一因となりそうです。
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