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【解説】公表資料からわかる「線虫がん検査」の不可解さ
三嶋 雄太再生医療・幹細胞生物学研究者
こちらの連載、初期の企画段階の議論に協力しました。特集を5日間拝見し、7ヶ月以上の時間をかけて慎重に進んでいたことを理解しました。この話題に、ここまでの調査報道、極めて貴重でした。
Newspicksの複数回を使う特集方式には、一瞬の話題で終わらせない機能があります。この特集の社会的真価は、HIROTSUバイオサイエンスさんの特集後の対応を多くの人が見守れる状況を作り出したことです。
この状況下、下記の対応が行われない限り、広く普及させるべきサービスではないと強く感じます。
・第三者介在によるブラインドテストの実施
・事業の一時見合わせ
HIROTUSバイオサイエンスさん関係者コメントや#6の記事を見て、会社としてNewspicksの取材方法に納得がいかない事が多くあると思います。私も個人的な経験で想像するところがあります。正直、企画段階では編集部と幹部メンバーとの4時間の面談が実現するとは思っておりませんでした。説明に来られたというのは真摯な対応だと思います。働いている人には悔しい事かもしれませんが、透明性の高い企業、お客様の信頼を目指すのであれば公開討論や、記事の訂正は分けてやって頂きたい。仮にそのことだけに注力されている場合、今回の問題解決・誤解の解消に関しては何も進んでいないことを強調したいと思います。
事業行動指針:https://hbio.jp/crp/philosophy
“事業経営方針 1. お客様の声を原点として、安全で信頼されるサービスを提供します
行動基準 1. 透明性の高い企業活動に努め、お客様との信頼関係を構築します
行動基準 3. 研究者として常に正直かつ誠実に判断、行動し、研究成果の正当性を科学的に示す最善の努力を払います”
回答や対応に要する準備期間に関しては、短いのも理解できます。
これからホームページ上で対応いただけるということで必ず拝見させて頂きます。
ステークホルダーや消費者、自社の社員、そして既に検査を受けた方が注目していると思います。
経営方針、行動基準に沿った対応を切に期待しております。
またNewspicks さんにはこの後の展開を公平にフォローできる状況を作っていただけることを期待しております。#6 の取材班の質問状21項目と、いずれも納得のいかなかった答えなどです。引き続きどうぞよろしくお願いします。
厚労省、再生医療新法の対象範囲をin vivo遺伝子治療などに拡大へ
三嶋 雄太再生医療・幹細胞生物学研究者
国内での遺伝子治療に関する定義と枠組みが整理されてきました。
理解しやすくするポイントは、遺伝子治療といっても、遺伝子に関する介入として
1. 特定の機能を期待して遺伝子(塩基)配列を持ち込む「遺伝子導入」
2. 特定の遺伝子(塩基)配列を変えてしまう「遺伝子改変」
の2つの分け方があり、それぞれの遺伝子操作を体の中(in vivo)で行うか、体の外(ex vivo)で行うかと考えることができます。
体外(ex vivo)で行うということになると、ほとんどが、操作を施した細胞を体内に打ち込むということになるので、投与する細胞自体の評価も必要になってきます。一方で体内(in vivo)で遺伝子を操作しようと思うと、正確に目的の標的だけを操作して、期待される効果を発揮する必要があり、その遺伝子の運び屋や、他の細胞に間違って影響を及ぼさないかなど安全性に対する技術的ハードルはとても高くなる傾向にあります。
しかしながら今まで対象になってなかった、体内で遺伝子を改変する in vivo遺伝子治療に関しても技術が進んできており、今後は再生医療新法の対象になる方向性です。
他方、細胞培養上清液を使った治療などは以前から規制対象外であり、再生医療新法ではカバーしないものの、このまま規制がないのも心配なところだと思います。
資料から、現状の遺伝子治療等の定義は下記の方向でまとまりそうです。
① 遺伝子または遺伝子を導入した細胞をヒトの体内に投与すること
(遺伝子の導入: in/ex vivo)
② 特定の塩基配列を標的としてヒトの遺伝子を改変すること
(遺伝子の改変: in vivo)
③ 遺伝子を改変した細胞をヒトの体内に投与すること
(遺伝子の改変: ex vivo)
厚生労働省:第5回再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループ 資料https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21515.html
ノーベル医学生理学賞に2氏 「温感と触覚の受容体の発見」
三嶋 雄太再生医療・幹細胞生物学研究者
今回の医学生理学賞は日本人が受賞していないので、例のごとくあまり取り上げられていないかもしれません。しかしながら、受賞時のリリースに記載されている Key publication には David Julius博士が責任著者である論文の共著者として富永真琴先生のお名前をリストに見ることができます。
Caterina MJ, Schumacher MA, Tominaga M, Rosen TA, Levine JD, Julius D.
The capsaicin receptor: a heat-activated ion channel in the pain pathway. Nature 1997:389:816-824.
実験医学という業界の雑誌では、今回の受賞を記念して2014年に富永先生がTRP受容体の解説をした記事が無料公開されています。関係者の先生の日本語記事は貴重です。
TRPチャネル研究の現在と未来
https://bit.ly/jikkenigaku-2014vol32
上記のNatureの論文では唐辛子の主な辛味成分であるカプサイシンを感じる受容体を、カルシウムの流入を利用した発現クローニングの方法で単離しています。我々が外界を感じるためのセンサー(受容体)として様々な種類のものが存在しているわけですが、とりわけなぜ我々が「熱い」と感じることができるのか?
その問を追う過程で単離されたカプサイシンの受容体、さらにはその受容体が有害な範囲の温度上昇によっても活性化されることから、生体内で痛みを伴う熱刺激を伝達する機能を持っていること示し、これが熱や痛みを感じるセンサーということを発見したというのが今回の大きなポイントとされています。
感覚を伝えるのは電気信号でありますから、もう一つの発見である機械刺激に関するセンシングと併せて、「温度や機械的な刺激は、神経系においてどのように電気的なインパルスに変換されるのか」という、それまでの未解決問題の理解に大きく貢献した事になります。また、これらの受容体を標的とすることで、慢性疼痛をはじめとするさまざまな疾患の治療法の開発に活用されているところで、医学的にもとても意義のあるものと思います。
iPS細胞から免疫細胞づくりを効率化、がん治療へ応用も 京大など技術開発
三嶋 雄太再生医療・幹細胞生物学研究者
チームの集大成を入口さんがまとめて下さいました。おめでとうございます!
https://doi.org/10.1038/s41467-020-20658-3
Open Access | Published: 18 January 2021
A clinically applicable and scalable method to regenerate T-cells from iPSCs for off-the-shelf T-cell immunotherapy
Shoichi Iriguchi, Yutaka Yasui, Yohei Kawai, Suguru Arima, Mihoko Kunitomo, Takayuki Sato, Tatsuki Ueda, Atsutaka Minagawa, Yuta Mishima, Nariaki Yanagawa, Yuji Baba, Yasuyuki Miyake, Kazuhide Nakayama, Maiko Takiguchi, Tokuyuki Shinohara, Tetsuya Nakatsura, Masaki Yasukawa, Yoshiaki Kassai, Akira Hayashi & Shin Kaneko
Nature Communications volume 12, Article number: 430 (2021)
ディオバン事件でノバルティスファーマと元社員・白橋氏の無罪確定 最高裁が東京高検の上告を棄却
三嶋 雄太再生医療・幹細胞生物学研究者
旧薬事法上の広告の解釈と照らしてこの判決ということで、この上告において仮に薬事法違反になっていたとしても、問題の本質にアプローチするには今後別の手当(広告に当たるか否か以外)が必要なのではないかと感じるニュースでした。
このような薬害など直接の被害者が出ていない状態で、しかし論文に不正があった場合には、社会的にペナルティを与える手段として適したものが挙げられなかったことを示している気がします。
個人的には薬事法上の広告には当たらない(三要件のひとつを満たさない)という解釈と、現実で間接的に生じる影響には大きく乖離があると感じます。
上記定義に当てはまる広告より、論文の方が業界的にはよっぽど重要でありインパクトも大きく、顧客/専門家に対しては広告"効果"の機能は大きく見えます。
"第一審、控訴審ともに、旧薬事法66条の法解釈、特に論文掲載が広告に該当するか、が焦点となった。控訴審では、広告の三要件のひとつである誘因性を主観的・客観的に備えていないとして、「顧客を誘引する手段に該当しない」とした。"
記事の最後にノバルティス社のコメントが掲載されていますが、この事件における業界への負のインパクトはとても大きかった。これらのケースに対しては、一社の再発防止に止まらぬ何らかの法的手当が構築されていくべきなのかも知れません。
14日超えるヒト受精卵の培養 国際学会が解禁
三嶋 雄太再生医療・幹細胞生物学研究者
業界としては大きなトピックだと思います。
国際幹細胞学会の新しいガイドラインに関して、なにか危なそうなことが解禁された!という短絡的な解釈による誤解のなきように重要なポイントを補足させていただきます。
1)14日を超えて胚を研究する提案の審査と承認を義務付けること(解禁は解禁だが、その国や宗教的な状況に合わせて個別によりきちんと精査することを強く求めている点で誤解のないようにしたい)
2)サルとヒトの受精卵ができたことで、ハイブリッド動物についての議論が再開されたこともあり、この分野の科学者がどの実験が法的にも社会的にも受け入れられるのか、研究者は明確な境界線を必要としていること
3)今回のアップデートのタスクフォースでは、科学者、臨床医、倫理学者、弁護士、政策専門家など、45名の国際的な専門家で構成したチームで、18ヶ月間、100回以上の電話会議を行って完成させた
4)関連する世論調査や市民参加型のプロジェクトも参考されており、ガイドラインは、同様の専門家による査読を経ている
5)大きな点は「14日ルール」を緩和したこと。(この制限が提案された約40年前には、ヒトの胚を着床後5日以上培養することはできなかったけども、現在では組織が形成される重要な時期である14日から28日の間の研究ができない状態。これらの研究により流産や、心臓や脊椎などの先天的な異常の原因に重要な情報をもたらす可能性がある)
6)承認を得るためには、国民の十分な支持が必要である。これは、(世論調査などの)定量的な評価と(市民パネルなどを用いた)定性的な評価を行う必要があるということ
7)幹細胞を用いた治療法を早急に商業化することを禁止し、科学的根拠のない未検証で安全性の低い治療法を提供する悪質なクリニックの活動を抑制する方法も提案
8)ヒトの配偶子を持つ動物を繁殖させるような研究は、一切許可すべきではない
等です。ご参考になれば。
拒絶反応起こさずがん攻撃 遺伝子改変iPS免疫細胞
三嶋 雄太再生医療・幹細胞生物学研究者
所属する金子研究室から免疫拒絶を受けにくいT細胞をiPS細胞から作製し、そこから作ったCAR-T細胞と白血病マウスモデルを用いてそのコンセプトを示した論文が Nature Biomedical Engineering に出ました。
免疫拒絶から守る手法としてこれまで、個人を識別するHLAという分子を欠損させて移植先の免疫拒絶から逃れる方法が進められています。一方で、実はHLAの欠損だけではカバーできない免疫システム(NK細胞等)も存在しており、今回はCD155という分子も追加で欠損させ、かつ、MHC class-I antigen E を導入して、より多くの免疫システムから逃れるコンセプトを示しています。
同時に、これらを共に欠損させてもT細胞の抗腫瘍力(マウスモデルにおける)を維持したままであることも示しているものになります。
この論文のプロジェクトが始まったのは4~5年前と記憶しております。その間にHLA欠損まわりの論文も多く出て技術としてメジャーになってきている中でした。もう一つ先のHLA欠損+αの可能性を示せたということで、王さん、おめでとうございます。
Published: 17 May 2021
Nature Biomedical Engineering | volume 5, pages 429–440 (2021)
Generation of hypoimmunogenic T cells from genetically engineered allogeneic human induced pluripotent stem cells
DOI : https://doi.org/10.1038/s41551-021-00730-z
拒絶反応抑えたT細胞 がん攻撃維持、iPSにゲノム編集 京大(時事通信)
三嶋 雄太再生医療・幹細胞生物学研究者
所属する金子研究室から免疫拒絶を受けにくいT細胞をiPS細胞から作製し、そこから作ったCAR-T細胞と白血病マウスモデルを用いてそのコンセプトを示した論文が Nature Biomedical Engineering に出ました。
免疫拒絶から守る手法としてこれまで、個人を識別するHLAという分子を欠損させて移植先の免疫拒絶から逃れる方法が進められています。一方で、実はHLAの欠損だけではカバーできない免疫システム(NK細胞等)も存在しており、今回はCD155という分子も追加で欠損させ、かつ、MHC class-I antigen E を導入して、より多くの免疫システムから逃れるコンセプトを示しています。
同時に、これらをともに欠損させてもT細胞の抗腫瘍力(マウスモデルにおける)を維持したままであることも示しているものになります。
この論文のプロジェクトが始まったのは4~5年前と記憶しております。その間にHLA欠損まわりの論文も多く出て技術としてメジャーになってきている中でした。もう一つ先のHLA欠損+αの可能性を示せたということで、王さん、おめでとうございます。
Published: 17 May 2021
Nature Biomedical Engineering | volume 5, pages 429–440 (2021)
Generation of hypoimmunogenic T cells from genetically engineered allogeneic human induced pluripotent stem cells
DOI : https://doi.org/10.1038/s41551-021-00730-z
日本人の重症化原因 有力候補を発見 新型コロナ
三嶋 雄太再生医療・幹細胞生物学研究者
個人的に認識しておりますこのプロジェクトの情報としては、関係者の先生方のプレスリリースをもとにした発表であり、免疫に関わる遺伝子を1つ代表的なものを抽出した。論文化は進めるところであり、研究費にも申請中。更には、去年の5月から蓄積してきたこれら貴重なデータを使った研究提案も募集中ということです。
4月末までに3400あまりのCOVID-19患者のゲノムデータが解析され、臨床データと紐づけされています。
令和3年度中に6000例のエントリーを目指すとのことで、現時点におけるこのデータセットの希少性に関しては疑いないと思います。
ゲノムデータの解析に関しては、SNParrayは全例行われているが、DNAの全ゲノムシークエンス等は進行中で、予算も仲間も募集中だと思います。今後の展開が期待されます。

NORMAL
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