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ウーバー×マッチングアプリ…ウクライナが開発した「大砲のウーバー」がロシア軍を撃破した驚くべき仕組み――テクノロジーがもたらす新時代の戦争のカタチ
小泉 悠東京大学 先端科学技術研究センター 准教授
MaaS (mobility as a Service)ならぬFaas (Firepower as a Service)といったところでしょうか。
1970年代にソ連軍で基礎概念が作られ、20世紀末に米軍が開花させた軍事技術革命(MTR)は、精密誘導兵器とICTの組み合わせを基礎とするものでした。それゆえにアンドリュー・クレピネヴィッチはこれを「精密誘導兵器革命」と呼び、大国の軍隊は多かれ少なかれこの方向性を目指してきたわけです。
現在起きている技術革新はその延長上に位置づけられるのか、それとも新たなMTRを引き起こしたとのちに評価されるのか。MTRは新テクノロジーに対応した組織変革やドクトリン開発を伴う必要があるので、「大砲のウーバー」的なものがどこまで組織的に需要されるのかにもよってきそうですね。
ウクライナ軍総司令官、苦戦認める 「ロシア軍が複数方面で戦術的成功」
小泉 悠東京大学 先端科学技術研究センター 准教授
3月時点でシルシキー総司令官は「前線の状況は安定している」と述べていました。これはアウディーウカ陥落後もしばらく続いたロシア軍の西進をある程度食い止められたということだったと思われます。
しかし、4が月に入ると、シルシキーは前線の状況が悪化していると評価を下方修正し、今回についてはさらに悪い(しかも複数正面で)と認めるに至りました。いずれも客観的な観測事実と整合しています。
問題はこの状況を覆せるのかどうかですが、それにはまずロシア軍に対する火力の劣位をどうにかせねばならないでしょう。4月にアメリカが軍事援助の再開を決めましたが、これがいつ・どのくらいの量入ってくるのかが当面の焦点になりそうです。
4月にはもう一つ、ウクライナでの動員法改正という大きなエポックがありました。動員期間をどのくらいにするのかなどで大きく揉めた法改正でしたが(結局、期間については明記せず別に動員解除法を作るということで決着)、これで一応は兵力のローテーションに関して目処がついてきたと思います。ただ、5月から施行しても新たに兵士を動員・訓練して戦場投入できるようになるまでには時間がかかります。ウクライナは徴兵制の国なので多くの人には基礎的な軍事経験があるとしても、です。
このように考えていくに、ウクライナが攻勢に出られる見通しは当面低く、まずはいかに守るか、その過程でロシアの戦争遂行能力にどれだけのダメージを与えられるのかが重要であろうと見ています。
プーチン大統領 F16戦闘機 出撃の飛行場「第三国でも攻撃対象に」 ウクライナへの供与で欧米側けん制
小泉 悠東京大学 先端科学技術研究センター 准教授
NATOから供与された航空機をウクライナ軍が受け取って運用するだけでなく、NATO加盟国の飛行場から出撃させるというプランは開戦直後にもありました。ただ、ロシアが激しい脅しをかけたので各国はそこまで踏み込めず、F-16戦闘機自体の供与にもこれだけ時間がかかりました。
今回のプーチン発言は「F-16はとうとう送るらしいけど、飛行場までは貸すんじゃねえぞ」ということでしょう。
また、これと合わせてプーチンは「NATOとは戦いたくない」とも言っていますが、もしそれでも実際にロシア=NATO戦争が起きた場合、ロシアは早期に戦術核を使うほかなくなると見られています。「そういうことにならないように、ウクライナ支援にも一線を引けよな」と言っているようにも見えますね。
4島返還発言にロシア行政罰 国後島民、日本の記事で
小泉 悠東京大学 先端科学技術研究センター 准教授
最近、日本のマスコミ特派員が北方領土問題についてロシア有識者の意見を聞こうとすると「その話をすること自体が憲法違反」と断られるケースがあると言います。
2020年の憲法改正で「領土割譲禁止」が盛り込まれた結果です。
ロシアが孤立する中で日本が多少甘くしてやれば感謝して北方領土を返す気になる、という意見もありますが、そのような期待はあまり持てないのではないでしょうか。一方、ロシアは伝統的に日本の「中立化」(=在日米軍撤退と日米安保破棄)を期待してきましたが、これもまた近いうちに実現するとは思われません。
ということで北方領土問題については多少気を長く、かつブレないようにやっていくしかないのだと思います。
北朝鮮「極超音速兵器」を実験 迎撃困難、脅威高まる
小泉 悠東京大学 先端科学技術研究センター 准教授
北朝鮮はやはりお勉強が好きというか、核戦略理論の方向性からはあんまり変なことはしないんですよね。
2010年代中に米本土攻撃能力を獲得して一応の最小限抑止(と見做せそうなもの)を構築したのち、核攻撃手段を多様化し、なおかつ分散・隠蔽によって残存性を高めようとする。
中国の核戦略に関してよく言われる確証報復(assured retaliation)戦略の小型版を忠実にやっている、という感じがします。とすると核弾頭も中国と同様、いくつかの基地の間で常にローテーションさせ、最初の一撃で全滅させないような施策が取られているのだろう、といったことも想像できそうです。
あとは核の指揮通信統制(NC3)がどうなっていて、今後どこまで進むかですね。
ウクライナ国外滞在者の動員案に波紋…1日6000人規模で出国の情報も
小泉 悠東京大学 先端科学技術研究センター 准教授
ミリタリー・バランス2023年度版のデータによると、今年初頭の時点でウクライナの地上兵力は全部ひっくるめて55万人くらい。このうちかなりの数の兵士が死傷し、生き残っている人たちも2年近く戦っているのだと考えると、大規模な動員はどうしても必要でしょう。これがゼレンシキー大統領が明かした「軍から45-50万人の動員について提案を受けている」という話だと思います。
ただ、動員自体はずっとやっていることではあります。開戦以来、ウクライナはこれまでに大小9波に動員を実施しており、現在は10波目の動員が行われています。国民の反発や忌避感はあるものの、それでこれまでの間、国が保たなくなったというわけでもないですから、今回の件もそこまで取り立てて騒ぐものではないように思います(戦争が後数年続くということになるとまた別ですが)。
北方領土から初のロシア本土便 択捉島から極東ウラジオストクに
小泉 悠東京大学 先端科学技術研究センター 准教授
ウラジオと択捉島が片道3000円というのはすごいですね。もちろん政府の助成があってこそ可能なわけですが、やはりロシアは北方領土の開発続行をまだ全く諦めていないということでしょう。
北方領土にはもう5年も行けておらず、現地のことはだんだんわからなくなっていくのですが、衛星画像や現地の報道で見るに、インフラ整備は着々と進んでいるようです。一時期よく聞かれた「ロシア化が進んでいる」という表現も、もはや聞かれなくなりました。「進んでいる」どころの話ではなくなったからでしょう。
北方領土問題の解決は願いながらも、こうした現実は踏まえておく必要があります。
NORMAL
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