中根 成寿

日本の医療・社会ケアサービスは現物の代理受給が原則となっています。価格は診療報酬・介護報酬によって統制され、質の比較も難しい。福祉サービスは利用者による評価よりも、行政監査や第三者評価が主流です。 これは日本の社会保障制度から見れば「鉄壁の常識」に見えますが、イギリスやオーストラリア等では、「個人予算」（Personal Budget）として、使途が制限された現金（実質的なクーポン）として給付されます。 利用者は給付されたクーポンをもって、自分で事業所を探します。探すのを手伝ってくれるBroker（仲介人）もいます。 このシステムだと、事業所は不正請求がしにくくなります。また質の低い支援をすれば、すぐに利用者から使ってもらえなくなります。 医療制度・福祉制度（疑似市場）に純粋市場のシステムを持ち込むと「金持ちしか医療やサービスを受けられなくなる」という批判がすぐに来ますが、クーポンの給付によって、市場の機能の「いいところ」だけを残すこともできます。

施設における縛らない介護、お薬でボーッとさせる介護を減らせる技術になる？