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【削除されました】養殖物2020年5月6日(水)
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みかん星人 ŌGIRI☆倶楽部
思い出の食事 ====== 私の家の冷凍庫には、永遠に割られることのないゆでたまごが入っている。 高校3年の秋に、14年間飼っていた犬が死んだ。 ミニチュアシュナウザーの彼女はゆでたまごが大好きだった。 「コンコン」と殻を割る音が聞こえるとすぐに駆け寄ってきた。 黒くて丸い目を輝かせて、分けてと言わんばかりに見つめてくる。 彼女は私にとって家族同然だった。幼い頃からずっと同じ時を過ごしてきた。 8月7日の初めての発作から死までの一ヶ月は凄まじいものであった。 発作が増えるにつれ体力も落ち、食欲もなくなっていった。痴呆の症状も見られた。 立ち上がることも出来なくなり、名前を呼んでもうっすらと目を開いて答えるだけだった。 そんなある朝、私がゆでたまごを食べていると、彼女は必死に立ち上がろうとしているのに気づいた。 前と変わらない瞳で私を見ていた。 彼女に「これはあなたにあげるから、元気になったら食べようね」と言い、ゆでたまごを冷蔵庫へしまった。 その夕方、彼女は死んだ。 彼女の足音、嬉しいときの吠え方、声、感触、温かさ。今でも全部覚えている。でも二度と戻らない。 ゆでたまごを見るたびに彼女を思い出す。あのゆでたまごはいつしか冷凍庫へ移された。 9月5日にはゆでたまごを食べる。これは一生続けていく。 誰しも、私にとってのゆでたまごがあるだろう。 それは食べ物に限らず、音楽だったり機械だったりするかもしれない。 この世の中にはそういった、人々の「想い」がたくさん込められているのだと私は思っている。 今手にしているものが誰かにとっての大切な思い出なのだ。私もいつか誰かの心にモノとして残るのだろう。 大切なものに囲まれている、それを胸に刻み私は生きている。
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