神保 謙

バイデン大統領が選挙戦から撤退を決断した際、民主党陣営は深鬱な雰囲気でハリス氏が指名をスムーズに獲得できるかさえ疑わしいとも見られていた。しかし銃撃を生き延び党大会で勢いづくトランプ陣営を前に、スピード感を持った民主党結束しかないと多くの支援者が判断したことによる。若者・女性・非白人の期待を担うが、この勢いがどれだけ持続可能か、無党派層にどれほど浸透できるかが問われる。

ゼレンスキー大統領とトランプ氏の電話階段は、緊張を伴うものだっただろう。トランプ氏は、ウクライナに不利な形で戦争に終止符をもたらしかねない人物だからだ。ただロシアに果敢に向き合うウクライナは、トランプ氏の外交観からみても単に米国にただ乗りしている存在ではない。大統領選挙を前にゼレンスキーの存在をトランプ氏に埋め込むことこそ、大事なタイミングということになる。

昨年11月の米中首脳会談で、ペロシ下院議長訪台(2022.8)以来中断していた米中の軍事的信頼醸成措置が回復した。米中の安全保障上の協議枠組みのうち、核軍備管理協議とAI規制については両者が前向きな姿勢を示していた。台湾への武器売却によって中国側が切れるものを切ったということだろう。

米外交評議会の著名な研究者であるスー・ミー・テリーが、韓国の情報機関との緊密な関係を問題視され起訴された。米国では外国代理人登録法(FARA)によって外国政府から影響を受ける場合、その活動を開示する義務を課している。テリー氏はFARAに登録せずに情報機関と関係を継続していたことが問題視された。このあたりの線引きは微妙なところがある。各国大使館は研究者らと会食をすることは頻繁にあり、その会食に情報職員が含まれることは当然あるだろう。またテリー氏の場合は、米国の同盟国である韓国との関係が問われている。FARA登録の不履行や、不透明な資金源などが今回の問題となっているが、政府外の研究者やシンクタンクの活動にメスを入れるかなり厳しい措置といえる。

ゼレンスキー大統領の比類なきリーダーシップは、ウクライナ軍と国民の士気を高めロシア軍に対する系統的な抵抗に貢献した。ただウクライナ軍の損耗が進み、経済の損害や生活の不自由が続けば、誰がリーダーであっても支持を維持し続けることは困難となる。特に戦況が膠着した状況で、和平合意に向けての展望が開いないこと、時間がロシアに対して優位に働く認識が高まることが、リーダーへの不満として転化されていると考えられる。

防衛関係費が2027年まで大幅に増大することに比較して、自衛隊の定員を増やすことができず、採用率も大幅に低下しているのは由々しき状況だ。即応性や継戦能力も装備量だけでは解決せず、新領域への対応も優秀な人材の確保が不可欠。人材を獲得する仕組みを抜本的に改革することが必要だ。

防衛省・自衛隊は巨大組織で、扱う予算も膨大だが、現場レベルでは業務が増えたが人が増えず予算も使い勝手が悪いケースが散見される。こうした中、現場での帳尻合わせが進むと、中には自腹で備品等を負担するケースも出てくる。少しはいいだろう、という思いが出てきても不思議ではない。しかし、今後防衛費が増大する中で、国民の付託に答える防衛省・自衛隊でなければ、国民は負担を納得しなくなる。

朴喆熙（パク・チョルヒ）外交研究院長は、韓国きっての日本専門家で、日本の政財界にも幅広く知己を得ている。性格も明るく日韓関係を引っ張るよい人材となるだろう。現在の駐日大使である尹徳敏（ユンドクミン）氏も前職が外交研究院長だったことを考えれば、順当な人事といえそうだ。

「『ハブ・アンド・スポーク』式の二国間同盟を『格子状の』同盟構造に変換」という発想は新しいものではない。EASR2、D・ブレア論文、日米安全保障協議委員会、オバマ時代のPivotなど、来歴は四半世紀に及ぶ。

AUKUSには第1の柱(Tier-1)としての原子力潜水艦の開発・配備をめぐる協力と、第2の柱(Tier-2)としての軍事分野の先端技術協力に分かれており、日本が参加するのは後者となる。とりわけ対潜水艦戦能力、極超音速技術、人工知能に関して注目されているが、こうした協力は米英豪との相互運用性を高め、有志国連携を進めるだろう。ニュージーランドと韓国も第2の柱に参加する見通しがある。

台湾に近接する先島諸島において、民間人保護のためのシェルターの必要性は増している。有事の前に住民避難ができれば良いが、いざというときの避難施設は住民の安全に役立つ。シェルターの強度や備蓄、避難訓練など多くの課題はあるが、防災対策と同様のレベルで整備されることが望ましい。

平壌で開催が予定されていたアジア２次予選が開催されなかったこと、日朝関係の温度感とも関連がありそうだ。この手のイベントには政府関係者が訪朝する機会ともなり、政府の北朝鮮の土地勘を醸成することにもつながったはずなのだが。