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中国、景気低迷に危機感 利下げ効果は不透明
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
今回の政策変更が広範囲の手段を動員した点は、記事が示唆するような「危機感」を伺わせます。その一方で、利下げ幅が引き続き小幅である点で、金融市場が景気刺激の効果に疑問を持つことも、もっともなことだと思います。
人民銀行が利下げ幅に慎重である理由としては、人民元安が加速するリスクを抑制したいと考えている可能性があります。しかも、中国経済にとっての元安進行のコストは、輸入物価の上昇による実質購買力の喪失だけでなく、資本収支の悪化に伴う金融システムの圧迫が含まれる点で厄介です。
記事では触れていないレポ金利の改定も含めて、複数の政策目標を同時に解決しようとしている点で、政策運営の意図や効果がわかりにくくなっている訳です。
ECB、金利据え置き 9月会合巡り「何も決まっていない」と総裁
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
記事が指摘するように、記者会見でLagarde総裁は9月理事会での利下げ決定はwide openであることを再三強調しました。加えて、今回の理事会では9月利下げについて全く議論しなかったと説明しました。
その一方で、インフレについては、賃金改定の影響が残る今年を終えれば目標に向けて低下するとの見通しを確認したほか、景気についても、設備投資と輸出の停滞に懸念を示し、先行きも下方リスクが大きい点を認め、9月の利下げには合理性があることを示唆しました。
Lagarde総裁がこのように整合的でない発言を行った背景には、欧州メディアが指摘するように、6月利下げの事前予告がインフレ指標の上昇に直面したことのトラウマによる面があるのかもしれません。実際に、欧州市場はこれを見透かして9月利下げとの見方が強まっています。
個人的には、Lagarde総裁がインフレの先行きを考える上で、賃金、企業収益、生産性の3要素(頭文字をとってWPP)に着目する考えを強調したことも興味深く思いました。合理的だとは思いますが、ユーロ圏の場合には企業収益や生産性のデータに大きな時間的なラグがある点が実務的な障害になるリスクがあります。
具体的手法は日銀に委ねられるべき=利上げ巡る河野氏発言で官房長官
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
少なくとも国内では、家計や企業が日銀に対して利上げの加速を求める状況にはならないと思います。なぜなら、利上げによって円安に歯止めががかり、実質購買力を回復する効果が期待できるとしても、金利水準が相応に高まると設備投資や消費に影響が出始めるというトレードオフがあるからです。
これに対して、米国で仮にトランプ氏が大統領に選出され、経済政策の「1丁目1番地」として、主要な相手国との「アンフェアな貿易」の是正に着手した場合には、関税引き上げと並んでドル安政策に乗り出す可能性が少なからず存在します。
そうなると、日本に対しては、円安の原因の一つとされる低金利政策を早期に是正すべきと要求することが考えられます。つまり、日銀による政策運営の独立性については、国内発ではなく、米国発の要因がより大きな課題となるリスクがあります。
日銀が基調的な物価の上昇を展望して緩やかな利上げを進めること自体には合理性があると思いますが、外圧によってそのペースが必要以上に加速する事態をどう回避するかが、新たな課題として浮上しているように思います。
トランプ氏、FRB議長解任求めず 財務長官にダイモン氏検討=BBG
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
昨日のピック(ワシントンのエコノミッククラブでの対談)で指摘したように、Powell議長の政治的な強みは、予てから超党派の議員にネットワークを有しているだけでなく、そうした人々と頻繁に面会することで良好な関係を維持している点です。対談での発言には、Powell議長のこの点に関する自信が現れていました。
これに対し、Yellen財務長官の民主党色が強いことは自明であり、政府機関のトップである以上、トランプ氏が大統領になれば更迭は自然だと思います。
その上で、仮にDimon氏が財務長官に任命された場合に、どのような政策を志向するのかは興味深い問題です。記事が指摘しているトランプ氏の主要アジェンダの多くは通商政策であり、財務長官の担当ではありません。それでも、大規模減税や金融機関への規制、フィンテックへのスタンスなど、財務長官は重要な領域を担うことになります。
インフレ抑制、第2四半期に進展 「確信幾分強まる」=FRB議長
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
当面の政策運営に焦点を絞れば、Powell議長による対談のポイントは記事の通りですし、インフレの減速傾向に関する確信をより強調したことが注目されます。
ただし、対談はより多岐な内容をカバーしており、個人的には次の2点が興味深く思いました。
第一に、Powell議長が政策運営に際してコンセンサスビルディングを重視する姿勢が確認された点です。
Powell議長はFOMC直前の期間にメンバーと個別に意見交換して意見の取りまとめを行うことの重要性を強調したほか、財務長官やNEC議長との定例会食、有力議員との面会なども活用していることを説明しました。また、自身がエコノミスト出身でないことが、むしろわかりやすい説明に寄与しているとの興味深い考えも示唆しました。
第二に、コロナ前後の経済構造の変化について、自然利子率が上昇した可能性を明言した点です。
これまでのFOMC後の記者会見などでは、自然利子率の変化に関する議論を避けてきた印象もありましたが、今回は、金融引き締めにかかわらず2023年の景気が強かった点を理由として意見を明示した訳です。Powell議長は、コロナ前のような超低水準の政策金利が再現する可能性は低いとも述べており、この点は利下げの最低到達点を考える上で重要なヒントになりそうです。
電子マネーより「QRコード決済」が伸びてる理由、なぜ新紙幣発行も追い風になるのか?
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
少なくとも日本では、ICカードにチャージする形の電子マネーの主な発行者が、公共交通機関や大手小売チェーンである以上、スマホのQRコードに対して競争条件が厳しいことには自然な面があります。なぜなら、日常生活でそうした発行者のサービスを頻繁に利用しない限り、電子マネーを持つインセンティブが低いからです。
これに対し、クレジットカードに関する記事の評価には若干の違和感も感じます。
日本の人口1人当たりのクレジットカードの発行枚数は先進国中でも最高水準です。かつては、若年層では、所得の安定性などの制約でクレジットカードの取得が難しい面もありましたが、今や状況は変化しています。また、QRコードの発行者が自らクレジットカードも発行するようになっています。
つまり、これらの両者は対立よりも連携の関係になっていくように見えます。
FRB議長「経済もはや過熱状態でない」、利下げ時期シグナル出さず 議会証言
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
FRBが物価一辺倒ではなく、雇用にもより注意を払う姿勢を見せ始めたのは、6月FOMCの議事要旨にも現れていた通りですが、今回の議会証言では金融政策の独立性に関する議論が注目されます。
実際、先般公表された金融政策報告では、わざわざBoxを設けてこの点の重要性を強調するなど、FRB自身が意図的に前面に押し出している印象を受けます。前回のトランプ政権では、理事の人選に政治の影響が強く影響するなど直接的な介入が見られただけに、FRBが先手を打ちたくなるのも理解できます。
但し、今年の11月に仮にトランプ氏が大統領に選出されても、金融政策への影響は、直接的な介入というよりもいわば間接的な影響が大きくなりうる点で、前回よりもむしり対応が難しくなるおそれがあるように思います。
第一に、FRBは現政権下での移民の増加が、雇用や消費の底堅さの主因であると考えているからです。この点はインフレの減速を妨げる一方で、金融引き締めでも雇用を維持するメリットをもたらしていますが、仮にトランプ氏が移民政策を転換すれば、インフレ抑制を遠のかせる一方で、雇用を減速させるリスクがあるからです。
第二、仮にトランプ氏が公約通りに大減税を実施すれば、財政リスクによる長期金利の「悪い」上昇が生じるリスクがあります。この点は、FRBが緩やかながら金融緩和方向に政策を運営することとの間で効果の面でバッティングすることになり、金融政策の運営を難しくするおそれがあるからです。
米利下げ、9月観測強まる 雇用過熱の沈静化で
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
今回の雇用統計は、記事が指摘するように雇用の過熱リスクに対する懸念を沈静化する内容であったとは思います。その意味で、9月会合での利下げ期待が復活することももっともだと思います。
但し、それが相応の間隔での連続利下げに繋がるかどうかには、依然として不透明な面が残ります。
第一に、FRBが足元での雇用の底堅さの背景と考えている移民の影響については、トランプ氏の再選の可能性が意識される中で、当面は駆け込み的に増加する可能性があります。これが時間的ラグを伴いつつ雇用に反映すると、消費の押し上げも伴いつつ景気を下支えすることになります。
第二に、Powell議長が、物価が緩やかに減速する中で、dual mandateの双方についてより良いバランスにあるとの認識を再三強調している以上、FRBの政策運営はもはや物価一辺倒ではなく、景気への考慮も以前より重要になったとみられます。このため、失業率が歴史的に低位な現状では、利上げを急ぐ合理性に乏しいと思われます。
これらの点を踏まえると、FRBが9月に利下げしても、その後の政策運営を明確に打ち出すこと依然としては難しいように思います。
中国人民銀、市況に応じて国債売却方針 価格上昇を抑制へ
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
日米欧の過去の経験に言及するまでもありませんが、長い目で見て経済成長や物価が減速すると見込まれる環境では、民間投資家にとって長期国債への投資は間違いなく魅力的ですし、売却のインセンティブは少なく、buy and holdとなることもごく自然です。
これに対して、政策当局にとっても、拡張財政による景気刺激を志向するのであれば、長期国債への民間需要の増加は、国債の安定消化の上で好都合であるはずです。いわば、「量的緩和」が勝手に実現するようなものです。
それにもかかわらず、人民銀行が市中から借り入れた長期国債を「空売り」しようとする理由には、日米欧の先例のように国債市場の流動性低下への対策とは異なる要素が含まれている可能性があります。
つまり、長期金利が過度に低下すると、不動産価格の調整が進まず、最悪の場合には「ミニバブル」を招いて、問題解決を一層遅らせてしまう可能性があるので、それを防止する目的です。
こうした解釈が正しければ、政策当局は、景気刺激と金融安定という2つの目標に関して微妙な舵取りを続けていることを意味します。
ECB、ディスインフレ失速を懸念 一部当局者利下げに不安=議事要旨
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
今回の議事要旨については、理事会メンバーによる議論の焦点が、足元のインフレ指標の上振れをどう評価すべきかにあった点が印象的でした。
具体的には、エネルギー価格の水準効果だけでなく、家計が購買力を回復するための賃金改定のラグ(日本のように1年ではなく数年に及ぶ)が主因との見方では一致しました。
しかし、それらの要因や食品価格の上昇圧力(地政学リスクや気候変動による)が基調的インフレに持続的な影響を及ぼすかどうかでは、多数派は楽観的であった一方、異論も少なくありませんでした。このため、利下げに対しては、実際に反対票を投じたメンバーだけでなく、少なくとも数名は違和感を表明したことが示唆されています。
一方で、多数派の議論の中では、ここからインフレ目標に到達するためには、現在のような強い金融引き締めを維持する必要はないとの意見や、インフレ目標の達成に完璧な確信を持つまで政策変更を先送りするのはtoo lateとの指摘が見られた点が注目されます。
米国に比べて消費も設備投資も弱いことも考慮すると、次回の見通し改定を行う9月会合以降は、ある程度連続的な利下げが実現する可能性があるように見えます。
利下げに「追加情報」必要 米FRB、慎重論相次ぐ
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
今回の議事要旨では、記事が指摘するように利下げには物価目標の達成に向けたより強い確信が必要とのコンセンサスが示されていますが、急にタカ派化した訳ではなく、これまでの考えを踏襲した面が強いように感じます。
実際、物価に関する議論では広範なカテゴリーで上昇圧力が減退したとの指摘が多く、労働市場でも需給の不均衡がかなり解消する中で、サービス関連でも上昇圧力が減退しているとの指摘が見られました。
この間、雇用が強い点については移民の影響や統計の問題を要因として挙げる向きが見られましたが、前者の継続性は不透明であるとしても、移民の増加と雇用の増加には時間的なラグがあるため、今後も高水準の雇用に寄与するとの興味深い指摘もありました。
この点も含めて消費を中心に景気が持ちこたえる中で、物価が緩やかに減速する状況は、FRBのdual manndateには好都合であり、従って利下げを急ぐ必要はないという考え方がコンセンサスとして示されています。
つまり、今回の議事要旨では、利下げの開始には、インフレの減速の明確化とともに、雇用を含む景気減速も必要との考えが示唆されている訳です。次の大統領が景気拡大を強く志向した場合に、FRBのこうした方針がどこまで維持できるかは注目すべき点だと思います。
米はディスインフレの道に、利下げ前に一段のデータ必要=FRB議長
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
ECBコンファレンスのパネルディスカッションで、Lagarde総裁も参加していたのに、Powell議長の発言に注目が集まるのも奇妙ですが、それはさておき、Powell議長は物価と雇用がdual mandateと整合的に推移していることへの自信を再確認したことが印象的でした。
ただし、1年後の失業率は現在からさほど上がらないとの見通しを示したことは、利下げを進めるから大丈夫と言う意味か、それとも金融引き締め状態が続いても持ちこたえると言う意味なのか、必ずしも判然としない面がありました。その意味で、一方的にハト派とも言えないように思います。
全体としてみれば、インフレやその背後の賃金データの不安定性やその解釈に苦慮するLagarde総裁に比べて、Powell議長はより良い環境にあるようにも見えます。しかし、パネルディスカッションでも取り上げられたように、大統領選挙の結果如何では大規模な減税によって物価や長期金利が影響を受け、新たな課題に直面する可能性があります。
最後に余談ですが、昨年の同じパネルディスカッションに参加した植田総裁は今回は不参加でした。司会のEisen氏も植田総裁のジョークがないのは残念と言ってましたが、重要な7月MPMを前に、こうした場にはなかなか参加しづらかったと思います。
中国企業、星野リゾートトマム売却
欧州中銀、利下げ急がず 「警戒続ける」と総裁
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
記事が取り上げたのは、ECB版の「ジャクソンホール」会合であるシントラの年次会合でのLagarde総裁の冒頭講演です。既にECBのサイトにテキストが掲載されています。
今回の会合のテーマは経済構造が変化する下での金融政策運営のあり方ですが、Lagarde総裁の講演内容は、むしろ、過去数年の政策運営の妥当性を主張するものでした。
具体的には、持続的で強力な供給ショックによってインフレ期待の不安定化が高まったために、ECBは既往の計量モデルによるインフレ見通しだけでなく、足元のデータがインフレに及ぼす影響も考慮に取り込むとともに、異例の大幅かつ迅速な利上げを行うことで、インフレ率の顕著な減速を実現したというものです。
それにも関わらず、経済活動への影響を抑制することができた点を評価しましたが、これはLagarde総裁も認めるように、雇用の拡大が維持されるという通常の景気循環とは異なる特徴による面が大きいわけです。その意味では、金融政策だけが成功したというのは過大評価になります。
最後に余談ですが、Lagarde総裁は往年のサッカー選手であるRobson氏の名言(最初の90分が重要だ)を引用し、最後まで気を抜くなというメッセージを送りました。ちょうど、欧州選手権が盛り上がっていることを意識したのかもしれませんが、講演はユーロ圏の話なので、わざわざ英国人に言及しなくてもよかったかなと思います。
日銀政策委員「適時利上げ必要」 6月会合の「主な意見」公表
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
国債買入れの減額については、市場参加者等の意見を聞いて慎重に進めるという条件付きではありますが、MPMメンバーの間で実施に向けたコンセンサスが成立した印象を受けました。
これに対して、追加利上げについては、記事が指摘したように、少なくとも6月会合の時点では意見のばらつきが感じられます。
しかも、意見の相違の中身が、単なる賛否だけでなく、追加利上げを支持するメンバーの間でも、基調的物価の上昇を根拠とする向きと円安対応としての意味合いを重視する向きに分かれていることが興味深く思いました。
いずれにせよ、現在の局面での政策対応の難しさを反映しており、次回会合に向けて議論がどう収斂していくかが注目されます。
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