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【教育】なぜ米国の小学生は「マインドセット」を学ぶのか?
安川 康介米国内科専門医・感染症専門医
インタビューしていただきありがとうございました。私の本の「心・体・環境の整え方」の章では、学習のモチベーション、記憶における睡眠や運動の重要性などについて説明しています。モチベーションに関しては、モチベーションの研究分野で有名な自己効力感(Self efficacy)や自己決定理論(Self determination theory)について触れました。自己決定理論は、人のモチベーションは「自律性(Autonomy)」、「有能感(Competence)」、「関係性(Relatedness)」の3要素によって影響を受けるとする説で、ビジネス、教育、健康などの分野で注目されています。仕事のモチベーションを考える上でも参考になる枠組みだと思います。
【続報】線虫検査は有効か。全国のPET施設を対象に調査開始
安川 康介米国内科専門医・感染症専門医
このように、線虫検査の精度について外部の機関が調査をすることには意義があるように思います。
ただ、大きな注意点として、PET検査のがんを検出する感度が低いことが挙げられます。国立がん研究センターの調査では、PET のがん検出感度は17.83%と低いものでした。PET検査で抽出されにくいがんとして例えば胃がんや前立腺がんなどがあり、大きさが小さい初期の肺がん、乳がん、大腸がんなども見つけにくいことがあります。なのでPET検査は通常、各種がんを発見するためには用いられていません(がんが見つかり、どれくらい広がっているのかを調べるためには有用です)。がんの診断方法は、胃がんであれば内視鏡検査、大腸がんならば便潜血検査や大腸鏡、前立腺がんならば血液検査(PSA測定)と生検(PSA高値の場合)等と、がんの種類によって最適な診断方法も変わってきます。
15種類のがんのリスクを評価する線虫検査の一つの問題点は、ハイリスクと判定された方が、どのがんになっているのか分からず、自費で高額なPET検査などを受けたとしても「でもまだがんがあるかもしれない」と不安が続いてしまうことにもあります。おそらく不安から、より侵襲的な内視鏡検査を受ける人もいるでしょう。がんがないのに「高リスク」と判定されたことで、経済的、精神的、肉体的な負担を抱える人は多いと想像します。
嘘をつく「動機がない」。疑惑の渦中で広津社長が語ったこと
安川 康介米国内科専門医・感染症専門医
広津氏の「100人に1人だと思って、我々はベストなカットオフを設定しているわけで。そこにがん患者を10人混ぜて、できたほうが困る。それでは100人に1人が当てられなくなってしまうのです」という発言には驚きました。この検査は受けてはいけない、周りの人にも勧めてはいけない検査であると、医者として思いました。
がん検査の感度(がんの人をがんと検出する力)・特異度(がんでない人をがんがないと検出する力)というのは、検査する集団でのがんを持っている人の割合(有病率)によって変わりません。例えば、あるがんの検査が95%の感度、90%の特異度を持つとします。有病率がとても高い集団が100人いて、仮に60人ががん患者で、40人が健康だとします。この100人にテストをすると、60 x 0.95 つまり57人が正確に陽性と診断され、40人のうち40 x 0.9 つまり36人が正確に陰性と判定されます。がんの有病率がより低い集団があり、10人ががんで90人が健康だとします。この100人に検査すると、10 x 0.95 つまり9.5人が正確に陽性とされ、90 x 0.9 つまり81人が正確に陰性と判定されます。検査というのは、有病率が変動するからといって通常カットオフ値を変える必要はありません。新型コロナウイルスの流行状況によって、PCR検査のカットオフ値を調整し続ける必要がないことを考えていただければ分かりやすいかもしれません(感度を高め特異度を下げる目的、またこの逆の目的で、変えることはあります)。例え100人がいて、がん患者を10人混ぜて検査したからといって、検査の精度は変わらないはずです。これは学生レベルの知識です。つまり、もし本当にN-Nose検査の感度が86%ならば、10人のがん患者(検査項目にあるがんだとして)に検査を行えば、8〜9人は陽性と出るはずなのです。有病率によって変わるのは陽性的中率(テストが陽性と判断した場合、それが真の陽性である確率)と陰性的中率です。
【解剖】「疑惑のユニコーン」を肥大化させたエコシステム
安川 康介米国内科専門医・感染症専門医
この記事で特に気になったのは共同研究においても、検査とデータ解析はHIROTSU社だけで行われていたということです。
検査の再現性・精度に関し、今までの記事をまとめてみます。
1) PLOS ONE掲載の研究では感度95.8%、特異度95%と高い数値が示された。しかし、広津氏が実験とデータの取りまとめを単独で行なっていたことが指摘されており、広津氏が突然いなくなった後、共同研究者達は同様の結果を再現できなかった(第三回記事)。
2)その後、複数のHIROTSUの研究員も結果を再現できなかった。バイアスが生じやすい非ブラインド検査においては、論文のような結果を出せる「上手い人」もいた。しかし、福島の研究所でのブラインド検査では、がん患者と健常者を判別することはできなかった(第二回記事)。
3) 2020年6月、自動検査装置による感度は20%、特異度は60%と低く(第二回記事)、2021年2月の内部資料でも同じ検体でも日によって大きな変動があると報告(第一回記事)。
4) 3つのクリニックで、N-NOSEで陽性者375人をPET検査を含む検査で検査したところ、がんと診断されたのは8人(2.1%)。がん患者10人にN-NOSEを行ったところ全員が陰性だった(第一回記事)。
もしPLOS ONEの実験結果が「理学的に真実」だと解釈するなら、記載の実験手順では再現できない・人や状況によって大きな差が出る等、テクニカルな問題が考えられます。HIROTSU社が「再現された」と引用する論文は他の研究所が別の目的で行ったものであり、細かい手順が全く同一かは分からず、直ちにN-NOSEの検査精度を裏付けるものではありません。Scientific Reportの論文では、乳がんの患者に対して感度75%、特異度97.2%、さらに月経周期等によって強い影響を受けた可能性が報告されています。Biology Openの論文では、前立腺がんに対して感度76%、特異度67%、やはり感度に差があります。もしPLOS ONEの研究結果が再現できないということであれば、非意図的・意図的にかかわらず、何かしら都合の良い結果がでるような操作があった可能性は考えられます。
いずれにせよ、現在使用されているN-NOSE自体の検査精度の検証をしっかり行うことが必要であると感じます。
【ドキュメント】「線虫がん検査」の知られざる過去
安川 康介米国内科専門医・感染症専門医
前回のコメントでも指摘した通り、このような記事に対する適切な対応は「公開討論」ではなく、外部の医療機関や研究施設で同じ検査方法をブラインド条件下に科学的な検証を行い、この線虫検査の感度及び特異度に関する結果を公表するだと思います。本当に科学を重視し、利用者の安全と信頼を第一に考えるのであれば、これが最も効率的な方法ではないでしょうか。
新型コロナウイルスのワクチンが開発された後、その効果と安全性に関し世界規模で質の高い検証が繰り返し行われたにも関わらず、その効果を否定する一部の人々がSNS上で「公開討論」を求める事態が発生したことは、まだ記憶に新しいことです。科学的正確性は「討論」を通じて確認されるものではなく、他の専門家の客観的な検証を受けるべきです。
決して安くはない費用を支払いこの検査を受けている多くの個人だけでなく、導入している法人や自治体(例:神奈川県藤沢市、愛媛県松山市などのふるさと納税の返礼品)も関与しているため、討論だけでは疑惑を晴らすことが困難と感じます。
【実録】社員が止められなかった「疑惑のがん検査」
安川 康介米国内科専門医・感染症専門医
疑いを晴らすために必要なことは、NewsPicksとこの企業の間の"討論"ではなく、外部の医療機関・研究施設が同じ検査方法を、ブラインド条件下で行い、この線虫検査の感度・特異度を測定し、結果を公表することだと思います。
この記事にあるような線虫検査に関する不正の疑いに関しては、一部の医師が2021年11月の時点から声をあげていました。前回の記事では、3つのクリニックで、N-NOSEで陽性と出た375人をPET検査を含む検査をしたところ、がんと診断されたのはたったの8人(2.1%)、さらに、宮崎鶴田記念クリニックでがん患者10人にN-NOSEを行ったところ全員が低リスクという結果だった、と書かれており、この第二回の記事と合わせて考えると元々の学術論文の結果の再現性は怪しく、何かしらの操作が行われた可能性は考えられます。
セラノスと比較されていますが、セラノスは学術論文を発表しないことで批判されていました。もし仮にこの記事にあるように、学術論文の段階で何かしらの不正が行われていたとしたら、より厄介な問題であると感じます。陽性と判定された多くの人は不安を感じたでしょうし、(第1回の記事にあるようなPET検査等)不必要な医療資源が投入されてきたことを考えると、この問題は疑惑が晴れるまで検証していただきたいと感じます。
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