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【塩野誠】GAFA v.s.国家、勝つのはどちらか
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北澤 直Coinbase株式会社 代表取締役
 本書の主題であるデジタル・テクノロジーと国際政治の力学を語るにあたって、特に2000年以降のインターネット史とデジタル・テクノロジーそのものについての理解は不可欠であろう。著者は圧倒的な情報量と自身の経験を裏付けとして、たった60ページ弱の本章で読者に必要な知識を与えることに成功している。  技術覇権をとることの政治力学的な重要性は普遍的なものであるとしつつ、ハードウェアの技術合戦であった80年代後半の日米半導体摩擦を例に挙げ、現代社会においての、インターネット、ネットワーク、ソフトウェア、ハードウェア全てが絡み合う、デジタル・テクノロジーという覇権争いがもたらす影響力の甚大さについて、本章を読むことで理解を深めることができる。  デジタル・テクノロジーを醸成するエコシステムへの言及も興味深い。本章にも登場する、2000年以降の現象を”Software is eating the world”(ソフトウェアが世界を飲み込んでいる)と表現するa16zのマーク・アンドリーセンが、シリコンバレーの先進性を語った場に居合わせたことがあるが、話の前半はSonyのビジネスモデルとそこから学んだものについてであった。失われた何十年と嘆き、既存のビジネスモデルの維持に腐心するプレイヤーをよそに、イノベーションの源泉やアイディアを国という枠組みを超えて求めるVCという存在が強くなっている。様々な立場で金融を見てきた筆者ならではの解説はとても興味深い。
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【塩野誠】デジタル通貨と国家の攻防 #5/6
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北澤 直Coinbase株式会社 代表取締役
本章で述べられている暗号通貨(国内法上は暗号資産と呼ぶ)については、私の本業と関わるものであり可能な限りの私見を述べるにとどめるが、同コンセプトと技術の社会的位置付けを的確に論じている。ビットコインがサイファーパンクコミュニティで産声をあげて、いわゆるアーリーアダプターか、さもなくば投機対象という別の文脈で語られていた暗号通貨は、2019年のリブラ発表によってまた別のステージに移ったといえる。リブラの出現からそれ以降に軸を置いて、貨幣論の本質から、信用創造の本源、中央銀行との綱引き、基軸通貨の陣取り合戦としての政治的利用に至るまでをまとめている。さすが著者である。現金融庁長官の氷見野良三氏が、当時金融国際審議官(かつFSBの常設委員会議長)として行ったスピーチで、「リブラは我々全員にとって、鳴り響く目覚し時計のような役割を果たす」と述べたことは記憶に新しい。社会全体として取り組む課題として、このコンセプトや技術が認識されてきたのである。そして、暗号理論を前提とするその技術は、極度に自由主義的な世界の実現が可能な一方で、その性質上、権威主義、管理主義的な為政者のツールにもなり得る。一般公衆が安心・安全にこの恩恵を受けるまでには、マネーロンダリングやセキュリティなどの枠組み、既存の金融システムとの親和性、個人のプライバシーなど複合的な要請を鑑み、「落としどころ」を模索することが急務となっている。そこでは国家レベルでの独断的な枠組みはそぐわず、グローバルな取り組みが期待されている。我が国でも金融庁などがイニシアチブをとって、多方面のステークスホルダーを巻き込んでの動きを進めているが、著者がスタートアップ的な動きを国家的にとっていると評する中国のようなプレイヤーが自国のデジタル通貨を電光石火に推し進めたらどうなるのか。ここ数年の喫緊の課題である。
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【塩野誠】国家がプラットフォーマーに嫉妬する日#4/6
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北澤 直Coinbase株式会社 代表取締役
 本章では、デジタル・テクノロジーの進化と共に政府を凌駕しかねない勢いで成長したプラットフォーマーについて、その可能性と課題を論じている。いわゆるサービスには必ずといって良いほど対価があるはずであるが、特に個人の情報が対象となっている場合に、私たちユーザーがその対価関係に気づいていないことが多い。デジタル・テクノロジーによって、民放局のテレビCMモデルとは全く異なる様々な形で、プラットフォーマーが私たちの情報を活用する可能性があること、またそれによってさらに強固な地位を築くという構図を、著者はあえてGAFAの例を用いて説いている。  私もサンフランシスコのテック系企業で働いているが、成功にはミッション・ドリブンな会社であることが不可欠であり、原則として、そのミッションが持つ社会的正義こそに優秀な人材や潤沢な資金を集める熱量の根源があると考えている。Googleの旧モットーである”Don’t be evil”に代表されるような、プラットフォームの担い手として負っている社会的責任を表記する会社も少なくない。一方で、才能も資本もそれだけに左右されないのも事実である。当然営利企業として経済的成功を収めることは至上命題であるし、優秀な人材は2年ほどでエクイティ(SO、RSU等)のべスティングを終えたら次の会社に移り、働きながらポートフォリオを構築することもトレンドとなっている。さらに、以前Uberで問題となったGod view(神の目というネーミングもどうかと思うが、配車の状況を俯瞰する機能を指しており、誰がどこで配車を待っているかなど、ユーザーの同意なくその私生活が筒抜けになっていたのではないかとの批判が起きた)のように、本当であれば社会的正義の達成とは程遠いシステムの構築にも、自分の技量を試したい優秀なエンジニアが一役買っているといったこともままある。
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【塩野誠】デジタルテクノロジーと権威主義国家#3/6
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北澤 直Coinbase株式会社 代表取締役
2020年は世界中の誰しもがコロナという恐怖に直面した。ウィルス自体の実態把握に時間がかかる間に情報が錯綜し、何が正解か誰もわからない事態がパニックを生じさせた。私の同僚が多く住んでいる米国カリフォルニア州では、コロナに加えて、ポピュリズムと極端論者たちの台頭、BLMといった既存の社会的問題の先鋭化、地震や異常気象に起因する山火事といった自然災害など、Apocalyptic(黙示録的)な状況が続いており、皆が先の見えない恐怖に疲弊している。デジタル・テクノロジーの進歩によってインターネットによる民主化が進み、情報はより正確に伝達され、より良い社会が約束されていると思われていたにも関わらずである。情報統制は小説1984や映画未来世紀ブラジルで描かれていたようなディストピアをもたらすと私は未だに信じて止まないが、本章で著者が試みたように現状を客観的に俯瞰すると、デジタル・テクノロジーは民主主義国家にもあらたな課題を与え、権威主義または独裁国家には未曾有のパンデミックに社会秩序をもたらす権威付けとして利用されかねない、という多面性を持っている。インフォデミックの正体を事実に基づき表面化させ読む者に正しい問題意識を持たせる、という本章の位置づけは重要である。
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【塩野誠】日本はどの未来を選ぶのか#6/6
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北澤 直Coinbase株式会社 代表取締役
本章が本書の集大成であるが、冒頭から、日本の地位は「相対的」に向上するとの著者の言及に大変興味をそそられる。個人的には、個人と企業レベルでは、国家的な枠組みとの接点は持ちつつ、デジタル・テクノロジーを活用して、グローバルな視野で自己実現する未来に楽観的である。一方で、著者の論じるように、疲弊する米国と混沌とした世界が存在することは明らかであり、そのような状況下において、国、企業、個人レベルで何が求められているのかについて改めて考えさせられた。著者が提言する、デジタル・テクノロジーの分野ではスピードが重視されるという点に賛同する。また、少なくとも、企業と個人レベルでは、Status quo(現状)の維持ではなく、日々刻々と変化する環境を見極めて対応している能力が求められると思われる。前例踏襲や慣行も、必要があるものなのか(例えば、死刑判決の判断基準は過去の事例をもとに判例を集積して慎重に判断すべきである)、それとも、ただただルーチン化した儀式を踏襲しているだけなのか、積極的に見極めていく局面に達していると考える。○○テックと呼ばれる業界に身を置いているプレイヤーは、すべからくこの「なぜ?」を問いかけて、その改善の余地に商機を見出している。一方で、規制当局、既存勢力、ビジネスパートナーなど関係当事者には、必ずしも変化を好まない者も存在する。例えば、コンスーマー向けサービスであれば、グローバルな視野で業界を俯瞰して、摩擦係数を極限まで減らして、消費者に好まれるサービスを構築することが大事なのだと思う。著者は評論家ではなく、ベンチャーキャピタリストであり、事業家である。本章は著者の意思表明だと思うと、今後の彼の動きにも目が離せない。
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