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【塩野誠】ハイブリッド戦争とサイバー攻撃#2/6
NewsPicksパブリッシング
江間 有沙東京大学未来ビジョン研究センター特任講師
「戦争」というと、日本に住んでいる私たちはどこか遠い場所で起きていることのように考えがちである。しかし、本章や続く章が指摘するように、現在の戦争はサイバー空間上でも行われている。さらには、マスメディアやSNSを通してフェイクニュースを広げるなど、ディスインフォメーション(虚偽の情報)も立派な「兵器」と認識されている。現在は、医療や電力、交通サービスがすでにインフラとしてネットワークにつながっている。また個人の家の中にも、カメラ、マイクなどが搭載されたIoT機器が入り込み始めている。家の中とはいえ、そこでの情報は個人が適切に守らなければ流出の恐れがある。あるいはビッグデータとして処理されインターネット上に公開されている可能性を否定できない。まさに本章が指摘するように、政治だけではなく社会インフラ、そして個人のプライバシーが国家の「人質」にとられているに等しい。しかし私たち一人一人が現状を把握することで防波堤となることで無力な人質ではなく、より弱い立場にいる人たちを守る立場になることも可能である。「水と安全はタダ」の時代はとっくに過ぎ去った、として一人一人の意識改革が求められている。
【塩野誠】日本はどの未来を選ぶのか#6/6
NewsPicksパブリッシング
江間 有沙東京大学未来ビジョン研究センター特任講師
最終章で、塩野氏はルールメイキングを日本が行うために考えなければならない要素とそのために必要な視点を提供している。個人的に首肯したのは、標準をめぐる競争での意思表示、粗くても大きなコンセプトをアジェンダとして世界に(英語)で売り込んでいく度胸と勇気のほか、日本が目線を向けるべき国として東南アジアと中東欧が含まれている点だ。AIのガバナンスをめぐる議論でも、私が現在、注目しているのがこのあたりの地域、そしてアフリカである。特に重要なのは、国という「点」ではなく、国同士のつながりという「線と面」で動向を把握することである。いずれの国も、欧米中が政治的・技術的・経済的に覇権を得ようと手を伸ばしている場所である。旧宗主国であるという歴史的・文化的つながりを持つ欧州に対し、米国は自由や民主といった理念と経済的な優位性で支援してきた。そこに近年、同じように経済的な支援の手を差し伸べる中国の存在感が増している。陣営の分断は年々激しくなってきており、各国は「どの陣営に入るのか」を迫られている。本書を通して塩野氏が状況を描いてくれたように、日本は欧米中どの陣営ともつながりは深く、これからも政治だけではなく経済、技術、文化をめぐる議論の中で様々な踏み絵を迫られるだろう。他方、どの国とも縁が深いため、逆に言えば日本は緩衝地帯にもなりえるということでもある。ピンチをチャンスに変え、したたかにしなやかに生き残る。そのためのヒントを本書からぜひ読み取っていただきたい。
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