丸亀製麺の元CFOがスタートアップの"COO"に就任するワケ

2024年1月23日
全体に公開

2023年12月、大阪に本社を構えるスタートアップakippa(アキッパ)」が、取締役の小林 寛之(こばやし ひろゆき)氏が副社長COOに就任することを発表しました。

小林氏は2020年まで人気うどんチェーン「丸亀製麺」を運営するトリドールホールディングスで、CFO(最高財務責任者)を務めていました。

CFOからCOO(最高執行責任者)に転身することは珍しいケースです。しかも東証プライム上場企業から、上場を目指すスタートアップへの転身ではかなり異例です。

そんな異例の人事には、あるフレームワークを活用した意思決定がありました。

☕️coffee break:そもそもakippaとは

akippaは2009年に合同会社として設立され、当初は営業代行・求人広告・出版事業などを展開していました。

2013年5月には『”なくてはならぬ”をつくる』をミッションに定め、日常生活の困りごとを解決する、必要不可欠なサービスを運営することを決意しました。

全社員で日常の困り事・不便なことをあげた中で出てきた課題が、「駐車場は現地に行って初めて、満車だとわかる」ということ。

この課題を解決すべく、2014年4月に現在の駐車場予約アプリ「アキッパ(akippa)をリリースしました。(以降、社名はakippa、サービスについてはアキッパと記載)

akippa提供

サービスの特徴は、

・駐車場を15分単位で事前予約し、安く便利に利用できる

・自宅駐車場や空き地、月極駐車場に空きがある場合に貸し出し、収益化できる

こと。

駐車場シェア事業は、スタートアップの軒先とakippaが展開し始めたことを受け、相次いで大手企業が参入しました。

しかし、楽天、リクルート、OpenStreet(ソフトバンク系)は撤退。現在もタイムズ24や、三井のリパーク、NTTドコモが事業展開する中、akippaが業界をリードしています。

akippaは個人の駐車場までを豊富にカバーしているため、通勤やちょっとした外出時にはもちろんのこと、スポーツ観戦や大規模イベントの際にも車移動ができるようになるのです。

2024年1月時点での累計会員数は360万人(貸主は除く)、予約可能な駐車場は常時3万5000件以上となっています。

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🍪もっとくわしく

今回、副社長COOへの就任が発表された小林氏は、トリドールHDで常務取締役兼CFOを務めながら、2015年に投資子会社のTDインベストメントの代表として、グループの成長戦略を推進していました。

そのTDインベストメントから投資していた1社がakippaだったのです。

akippa 小林 寛之氏

akippa コーポレートサイトより

小林氏がトリドールに入社した2014年は、売上高が783億円でしたが、2020年には1,564億円と、2倍ほどにまで成長しました。

組織・事業が大きく成長し、後任のメンバーにも任せられる状態が整ったことで、新たなチャレンジとして、2020年7月に投資先であったakippaに執行役員/経営企画室長として転職したのです。

当初は予算策定を中心に戦略を担当しながらファイナンス面もサポート。2021年4月には取締役に就任したことで、採用など組織戦略にも携わるようになりました。

取締役として、持続的な事業成長に向けた議論をする過程で、CEOの金谷元気氏が全てを見るのではなく、役割分担をすべきという結論に至りました。

そこで活用したのが、OpenAI、Notion、Coinbaseなど、著名スタートアップのCEOがこぞって受講しているCEO向けコーチングMochary Method(モカリー・メソッド)」です。

カリキュラム内には、自分が最も能力を発揮できる分野を特定し、業務時間の75%以上はそこに費やすべきというフレームワークZone of Geniusがあります。

「Zone of Geniusにおける4つのゾーン」

・Zone of Incompetence(自分より他の人が得意な分野)

・Zone of Competence(自分も他人も同じくらいできる分野)

・Zone of Excellence(自分が他人より優れている分野)

・Zone of Genius(唯一無二の才能を持ち、時間を忘れるほど熱量を注げる分野)

これをもとにakippa経営陣の4ゾーンを整理したところ、金谷CEOと小林氏のZone of Geniusがそれぞれ補完関係にあることがわかったのです。

『金谷はミッション・ビジョンの伝達や会社の顔としての対外的な活動が、私は戦略策定・実行やリソース配分などがZone of Geniusとなりました。

お互いがそれぞれのZone of Geniusに集中することで、より高いパフォーマンスを発揮できると話しました(小林氏)』

その結果、小林氏が副社長COOに就任して、以下のような役割分担に。

・金谷CEO
→コーポレート、PR、Founder室(長期目線での事業開発に取り組むチーム)

・小林COO
→事業成長を推進する全部門(プロダクト、駐車スペース獲得、マーケティング/CS、採用)

同時にこれまで小林氏はファイナンスに関与することがありましたが、事業成長の推進を最優先とするため、コーポレートのメンバーに任せることになりました。

🍫ちなみに

現在、akippaは大型イベントで公式駐車場としてサービス提供することに注力しています。

akippa提供

コロナ禍を明け、花火大会や祭りなど、大型イベントは通常開催に戻り始めています。

それを受け、2023年にはLuckyFes(茨城の野外音楽フェス)、土浦花火大会(茨城)、諏訪湖花火大会(長野)などで、公式駐車場としてサービスを提供しました。

今後、これら大型イベントでの需要獲得・認知の拡大を進めながら、通勤・旅行などでも活用してもらえるよう、小林COOのもと成長戦略の策定・実行に取り組んでいます。

サムネイル画像:DALL·E 3での生成

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