4月:海外では1000億円超の資金調達が続出 設立6ヵ月のスタートアップも

2024年5月11日
全体に公開

4月は海外スタートアップでは、1000億もの大型資金調達が相次いで発表されました

IPOが間近に迫っている企業だけではなく、設立6ヵ月の企業が約1500億円もの資金調達をする事例がみられました。

トップ5社の詳細をみていきましょう。

サムネイル画像:DALL·E 3での生成

☕️coffee break

1.  🇺🇸CoreWeave(コアウィーブ):AI特化のクラウドプロバイダー

  • シリーズC
  • 資金調達額:11億ドル(約1695億円)
  • 評価額:190億ドル(約2.9兆円)
  • 投資家:Coatue(リード)、Magnetar、Altimeter Capital、Fidelityなど

ここに注目👉5ヵ月で評価額が約3倍の上昇

AIサービスを開発する企業向けに、NVIDIA最高のチップを確保できることなどを強みに、カスタマイズしたクラウドコンピューティング・サービスを提供しています。

「NVIDIAのGTC2024(AIサミット)についての動画」

現在は米国で14箇所のデータセンターを展開していますが、年内にデータセンターは28に拡大すると共に、近いうちにヨーロッパ進出することも掲げています。

これまでは、大手企業よりも早くAIハードウェアへのアクセスを提供することで、急成長を遂げてきましたが、Google、Microsoft、AWS(Amazon)もハードウェアへの投資を強化しています。今後は需要に応じてのチップ確保力だけでなく、価格競争力も焦点になるでしょう。

2. 🇺🇸Xaira Therapeutics(ザイラ・セラピューティクス):AIを活用して医薬品を開発

  • 資金調達額:10億ドル(約1541億円)
  • 投資家:ARCH Venture Partners、Foresite Capital、F-Prime Capital、NEA、Sequoia Capitalなど

ここに注目👉設立6ヵ月で著名投資家から10億ドルを調達

バイオ分野で著名なVCのARCH Venture PartnersとForesite Capital傘下のForesite Labsが共同設立したスタートアップで、設立から6ヵ月間はステルス(情報非公開)状態でした。

Genentechの元最高科学責任者・スタンフォード大学の学長を務めていたマーク・テシエラビーン氏をCEOに、高度な機械学習・AIモデルを活用して、より迅速に医薬品開発することを目指しています。

その強みは遺伝子配列のリーディングカンパニー、米イルミナの技術と人材、ワシントン大学のタンパク質設計研究所から提供された基礎モデルを有していることです。

これにより、ARCH Venture Partnersもアーリーステージでは、史上最大規模の資金コミットメントをしたようです。

3. 🇨🇳Hozon Auto(ホゾン・オート):EV(電気自動車)メーカー

  • 資金調達額:6億9270万ドル(約1048億円)
  • 投資家:Hongli Zhihui、Yihuatong、Xinchanghong(いずれも中国地方政府からファンド資金を大規模に調達)

ここに注目👉早期のIPOに向け、海外市場でさらなる拡大へ

2023年からEVブランド「Neta(哪吒)」を中国、タイ、インドネシア、マレーシアなどで展開しています。IPOに向けて、さらにもう一段階成長すべく、資金調達を行い、新たにブラジルに進出すると共に、各国で新モデルの投入を目指しています。

現在、中国国内ではEV市場の競争が激化、世界ではEV需要が減速しているため、2024年第一四半期の納入実績は前年同期比6.9%減の2万4000台に。年間で30万台の販売目標を掲げていた中、達成には暗雲が立ち込めています。

4. 🇺🇸Pine Gate Renewables(パイン・ゲート・リニューアブルズ):太陽光発電、エネルギー貯蔵プロジェクト

  • 資金調達額:6億5000万ドル(約1001億円)
  • 投資家: Generate Capital、オンタリオ州ヘルスケア年金基金、オーストラリア産業退職年金基金(HESTA)

ここに注目👉米国31州で太陽光発電プロジェクトを展開へ

現在、100を超える太陽光発電施設を運営しており、計2ギガワット(20億ワット)の生産能力を有しています。

さらなる事業拡大に向け、米国の31州で開発プロジェクトを進めているところです。実現すると、生産能力は30ギガワットに達するため、約300万世帯(=東京23区の半数近く)にクリーンエネルギーを提供できるようになる見込みです。

5. 🇺🇸PsiQuantum(サイクオンタム):量子コンピューティング・システムの構築

  • 資金調達額:6億2000万ドル(約955億円)
  • 投資家:オーストラリア連邦政府、クイーンズランド州政府(株式、補助金、融資で構成される金融パッケージ)

ここに注目👉オーストラリアで世界初の実用規模の量子コンピューター構築へ

オーストラリア政府は2022年末に政府・大学・企業の専門家が集まる量子ソフトウェア・ネットワーク「Australian Quantum Software Network」を立ち上げるなど、今後10年で量子産業における世界トップを目指しています。

PsiQuantumは米国企業ですが、大規模な資金提供を行うことで、世界で初めて実用レベル量子コンピューターをオーストラリア国内で構築する計画が発表されました。

防衛、気候変動、エネルギー、製薬、金融サービスなど、さまざまな業界において、高速でモデルの構築・シミュレーションができるようになるため、業界の変革をリードすることが期待されます。

また、日本企業では三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱ケミカルと共同で気候技術全体にわたる協業プロジェクトを実施することも発表しました。

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