​中小企業の後継者問題を解決する米スタートアップが急成長中(Teamshares​)

2023年8月21日
全体に公開

日本では2025年までに中小企業127万社が後継者不足で廃業の危機に迫られる「2025年問題」に注目が集まっています。

実はこの問題は、日本だけでなく、米国でも大きな社会課題になっています。後継者(買い手)が見つからなかったり、明確な事業計画がなく、経営が立ち行かなくなってしまうことが多いんです。

そんな課題を解決することで急成長するスタートアップ、Teamshares(チームシェアーズ)が米国で台頭してきました。日本でも事業承継問題の解決策として参考になるかもしれません。

☕️coffee break

2019年に設立されたTeamsharesは、中小企業に特化した従業員持株会プラットフォームを通じて、事業承継に取り組んでいます。

事業承継の流れは以下の通り。

1. Teamsharesが年商100万ドル〜1000万ドル規模、EBITDA+オーナーの報酬で40万ドル〜200万ドルで、オーナーが50歳以上で事業承継をしたい中小企業を買収

2. 買収直後に従業員に株式10%を付与するとともに新社長候補のトレーニングを開始

3. 従業員持株会プラットフォームを通じて、20年以内にTeamsharesが株式80%を従業員に譲渡

従来からこれに似た手法として、従業員が株式を買い取って経営権を取得する「Employee Buyout(エンプロイー・バイアウト:通称EBO)」があります。

日本でもユニゾホールディングス、ラクオリア創薬などでEBO事例がありました。

この手法の場合は、従業員だけでは株式の過半数を取得することができないため、ファンドや金融機関から多額の出資・融資をしてもらう必要があります。

そして、資金調達に成功したとしても従業員には経営経験がない上、外部から経営者を招聘するのも難しいことから、その後の経営がうまくいかなくなる可能性が高いわけです。

そのため、EBOが行われることは滅多にありません。

しかし、Teamsharesの場合は、すでに4年で84社を買収し、2100人の従業員オーナーが誕生しました。

しかも、買収意向表明書(LOI)を締結してからは90%の確率で成約しています。

その理由は、以下を徹底するとともに従業員と時間をかけてコミュニケーションをとっているからです。

・買収は自己資金で行うため、買収意向表明書の締結から90日以内で完了

・全ての従業員の雇用を維持し、二度と他社に売却しない

・全従業員に対して企業価値向上をテーマにした勉強会を頻繁に実施

🍪もっとくわしく

今月、TeamsharesはシリーズDで1億2400万ドルの調達を発表しました。

投資したのは、QED Investors、Khosla Ventures、Spark Capitalなど著名なVCばかり。しかもUnion Square VenturesはシリーズAで投資して以来、全てのラウンドで追加出資しています。

2021年1月時点では買収企業が4社だったため、売上高は1000万ドルだったものの、2023年7月時点で買収企業は84社、売上高は4億ドル超えと急成長をしたからです。

加えて、従業員向けのコーポレートカード、保険商品の開発にも取り組み始めたため、FinTech特化でNO.1 VCとも言われているQEDも投資。最高投資責任者のフランク・ロットマン氏が自ら担当するほど、期待を寄せている企業なんです。

参考:フランク・ロットマン氏 インタビュー記事

Teamsharesは、今回の資金調達発表を機に情報を開示し始め、本格的な事業拡大に動きます。

これまでに買収した企業は42業種と多岐にわたっており、事業承継後の新社長には業界外でジェネラリストを起用することを徹底してきました。

業界知識がないからこそ、既存の慣習に囚われずに変革を行い、事業成長していなかった企業が7%も成長し、社員の給与も上昇した事例が生まれています。

この事業モデルが持続的に成功するのであれば、中小企業の事業承継手法として確立されるかもしれませんね。

サムネイル画像:Unsplash/Jose Vazquez

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