「野菜が高い!」ニュースを農業者はどう見る?

2023年10月24日
全体に公開

「野菜が高い!」はなぜか毎年ニュースになります。
この1週間で皆さんもどこかで目にしたり、あるいはスーパーで「本当に高い!」などと思った方も多いでしょう。

今ここ→ 2023年10月21日 毎日新聞

去年→ 2022年7月21日 TBS

2年前→ 2021年9月28日 朝日新聞

これはもはや祭りと言ってもいいのではないかというぐらい、少なくともこの3年はほぼ同じ話題で、盛り上がっております。

ちなみに豊作の時は豊作で「野菜を捨てている!」みたいなニュースが増えます。

3年前→ 2020年12月22日 読売新聞

 豊作でも野菜高騰でも、テレビではスーパー帰りのオバちゃんの「家計が、食卓が」的なコメントののちは産地に行ってなるべく衝撃的な映像と人のよさそうな農家が困り顔で「このままじゃ農業続けられない」的なコメントをセットで流しがちです。

もはや多くの日本人にとって野菜は高いも安いもとにかく「生活が本当に大変というわけではないけど『たいへんたいへん』と愚痴をこぼしながらご近所話で盛り上がれるいいネタ」くらいのポジションなのだと思います。

 野菜が高い!という話の後には料理家さんや節約アドバイザーさんが出てきて、そんな時こそ安くて簡単レシピ!キャベツがなくても小松菜でOKみたいなお得情報を組み合わせるところまでがデフォルトと言えるかもしれません。

やり手農家はピンチこそチャンスに

 ちなみに経営上手な農家は市況や産地の状況を見て、逆張りをしたりするので「みんなが大変!」という時にこそ「稼ぎどき!」とアドレナリンが出たりします。もちろん、リアルに苦労している農家も知り合いにいるので、この暑さが問題ないということを言いたいのではありません。

 産地を中心とした農協出荷においては産地リレーがあるので一定の時期にまとめて出すことが重要になりますが(日本の食を圧倒的に支えているのは産地と農協と市場の連携ということを忘れてはいけません)、自分で売り先を開拓しているやり手農家は、うまいこと品薄のスキマを見つけてそこに出すことで高利益を確保したりできる勝負時なのです。

フットワークのある八百屋は時間単位でお客の顔色をみながらどんどん価格や荷姿を変えて勝負する

ちなみに消費者は消費者で

 上手くやる人は市場が安いときはスーパーで、市場が高くなると直売所に流れます。地元の小さな八百屋さんも高いときこそ特売で頑張ったりします。日頃からいろんな売り場からよりよく安いものを探している消費者にとっては、野菜高騰の時期こそ、安定的な価格でいい物を出している農家の庭先販売や、道の駅やJA直売所を、時にはオンラインで根菜類のまとめ買いなどもするかもしれません。

 毎年の野菜プチ騒動を見ていると、基本的にはこれもひとつのエンタメだなと思います。野菜が高騰で困るとおっしゃっている消費者皆さんも、別に食料危機を感じているのではないでしょう。冷凍食品まで選択肢を広げれば、冷凍野菜のラインナップも一昔前から比べ物にならないぐらい充実していますし、まとめ買いすればビックリするほど安いです。

野菜が高い!は避難訓練?

 もちろん飲食店や小売りにとっては日々がサバイバルですので、市況という原価のウエーブをどう乗り越えていくのかは重要な判断であろうと思います。大手の場合は安定化させるために契約栽培をしたり、サイゼリヤなどは随分前から自社農場を運営しています。

いずれにせよ農業が本当に危機的状況になれば、日常生活のすべてが消し飛ぶぐらいのインパクトで社会が殺伐とすることは間違いありません。コロナ危機に勝るとも劣らない戦争並みの騒ぎとなるでしょう。 毎年の野菜が高い野菜が余っているニュースは避難訓練の放送みたいなものだと思えばいいのかもしれません。食の安全保障のコストがちょっとした野菜の高騰なのだとしたら安いものです。少なくともゲームや化粧品や装飾品などとは比べ物にならないぐらい食糧は重要なのでいざとなれば我々は全力で農業を支えなければなりません。

我々の食を根幹で支えているのは産地、農協、市場の連携であることは忘れずに

でもいつか、本当に地震も食料危機もくるのだと思うことも大事です。例えば富士山が噴火したら一気に食料危機は現実味を帯びます。

日常的に農業者、JA、そして市場をはじめとした流通業者にちょっとだけでも感謝と敬意を向けて、野菜が高くても安くても買い支えていただけると嬉しいです。

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