学術系研究会に参加して、ビジネスインテリジェンスの示唆を得る

2023年11月27日
全体に公開

 私は長年、アジア政経学会という学術団体の会員を続けています。正確に入会年を覚えていないのですが、10数年は前だと思います。ちょうど、この週末の土曜日、京都大学で秋季研究大会があり、参加してきました。先に結論を伝えておくと、是非、地域系や政治経済系の学術団体の研究会に参加してみてください、というお話です。

 プログラムはホームページで公開されていますので、参照してみてください。

 春にも東京大学で研究大会があり、参加しています。春も秋も、民間企業から参加は、おそらく私だけだったのではないかと思います。会員目簿をみるとシンクタンクや金融機関などの方もいますが、週末に行われる研究会にまで足を運ぶ方は少ないようです。会社の出張費としてはなかなか認められにくいでしょう。私は、過去に何度か、学術研究系の資金から出資して頂いたことがあることを除けば、自費で参加を続けています。

 なお、多くの団体が非会員の参加も可能としています。事前の申請や参加費の支払いが必要な場合が多いですが、事務局宛にメールをする程度で済む場合が殆どです。

 研究会は学術系の団体が主催するため、当たり前ですが、発表内容からすぐにビジネスアイディアのようなものは得られません。しかし、本トピックが扱っている地経学は、マクロ的なものの見方や、それを形成する学問的なフレームワークが重要です。

 また、研究者は資料を細かいところまで読み込み緻密な議論をしています。なかには、フィールドワークでの企業訪問や政治家へのインタビューなどを重ねて研究成果に織り込むことも珍しくありません。時には、普段、ビジネスパーソンの会話で交わされている話題が、エビデンスを持って反証されるような内容もあります。これらは反証が目的ではありませんが、ビジネスサイドの視点として、根拠もなく思い込みで言われいたのではないか、という気付きが得られることがあります。

  Photo by Kenny Eliason on Unsplash https://unsplash.com/photos/a-group-of-people-in-a-room-with-a-projector-screen-1-aA2Fadydc

 さらに、セッションによっては、テレビや新聞に登場するような第一線の、日本の「知」とも言える研究者たちが発表者や討論者として名を連ねる場合もあります。今回の研究大会の締めとなった半導体のセッションは、よくぞここまで集まったという研究者がずらっと並び、個人的にはあと1時間でも2時間でも延長して欲しいと思うほど、中身の濃い発表と議論が交わされました。

 参考となるのは現代に直結するセッションだけに限りません。現代を形成する歴史的な背景を理解しておくことも、ビジネス地経学の基礎体力を付けるには役立つでしょう。1960年代や70年代を扱う研究者ももちろんいます。その時代のことを理解することで、現在進行形の現代に対する理解が深まったり、実は、何十年も前に今と同じようなことが起こっていることを知る事もすくなくありません。

 また、こうした研究会には公式・非公式の懇親会が用意されています。こうした場では、よりざっくばらんなアイディアが交換されますし、より柔らかい話題も出てくるため、個人的な関係も強化されます。発表を聞くだけでなく、懇親会まで参加することをおすすめします。

研究会後の懇親会での会話から得られる知識、インスピレーション、ネットワークも大きい( Photo by Al Elmes on Unsplash https://unsplash.com/photos/people-raising-wine-glass-in-selective-focus-photography-ULHxWq8reao)

 ビジネスとアカデミックは、そもそも、フレームワークが異なります。しかし、対象が同じ、あるいは近いことも少なくありません。この両者が近づくことで得られる気づくが沢山ある、というのが私のこれまでの経験です。そして、その関係が私のさまざまな基本認識に影響しています。

 視界不良の時代は当面続きそうです。そうしたなかであるからこそ、骨太な理論的支柱がますます必要となります。日本の知の最先端が集まる場に、皆さんも是非参加してみてください。日本の、と書きましたが、世界水準で認められている研究者も少なくありません。

 私は他にも、日本マレーシア学会の会員も続けています。他にも、いくつか入ることを検討している学会があります。中東や朝鮮半島など地域を扱う団体もあれば、国際政治や安全保障という分野を扱う団体もあります。キリのよい来年度あたりから、新たに加入しようかと考えています。年会費も数千円から1万円、1万数千円程度に設定している団体が大半です。月換算で千円程度と考えると、非常にリターンが大きい、と私は感じています。

 いわゆる理系の学術団体や、ビジネスと密接な関係のある経営系の学術団体は、企業関係者が参加していることは珍しくありません。ですが、社会科学系や人文系、地域系となると、状況が変わります。私は、もう少し、ビジネスサイドからの参加があっても良いのではないかと思っています。


(扉写真:Photo by 🇸🇮 Janko Ferlič on Unsplash

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