OpenAIの暫定CEO エメット・シアとは?

2023年11月21日
全体に公開

今、世界中が注目する「OpenAIのクーデター」。

11月17日金曜日にAIチャットボット「ChatGPT」を開発するOpenAIの共同創業者兼CEOのサム・アルトマン氏が解任されました

一時はCEOとしての復帰交渉が行われるも、取締役会が提示した復職の条件と合意できず、破談に。新たにTwitch(ツイッチ)共同創業者のエメット・シア氏が暫定CEOに就任することがわかりました。

このエメット・シア氏は何者なのでしょうか?

☕️coffee break

現在までの大まかな流れは以下の通り。

11/17(金)正午:取締役会メンバーが揃ったオンライン会議で、突如サム・アルトマン氏のCEO解任と、共同創業者のグレッグ・ブロックマン氏の取締役会議長の解任が発表

グレッグ・ブロックマン氏は社長としては留任予定だったが、抗議のため辞任

暫定CEOに現CTOのミラ・ムラティ氏が就任

サム・アルトマン氏のCEO復帰交渉がOpenAIの本社で行われる

CEO復帰交渉は破談。新たにTwitch共同創業者のエメット・シア氏が暫定CEOに就任

マイクロソフトのサティア・ナデラCEOが、サム・アルトマン氏、グレッグ・ブロックマン氏はマイクロソフトに入社し、AI研究チームを率いると発表

参考:【全貌理解】MS入社、アルトマンの「激動60時間」を整理する

投資家や従業員の多くは、サム・アルトマン氏とグレッグ・ブロックマン氏の復帰を望んだものの、取締役会のメンバー過半数から書面による同意を得た場合は取締役を解任・選出できる独占権を行使したのでした。

「サム・アルトマン氏とグレッグ・ブロックマン氏を追い出した4人の取締役会メンバー」

  • イリヤ・サツケバー氏:OpenAI共同創業者兼チーフサイエンティスト
  • ヘレン・トナー氏:ジョージタウン大学安全保障・新技術センター(CSET)のディレクター
  • アダム・ダンジェロ氏:Q&Aサイト「Quora」のCEO
  • ターシャ・マッコーリー氏:自律移動ロボットのFellow Robots、3D都市モデルのGeoSim Systemsなどを共同創業したテック業界の連続起業家

🍪もっとくわしく

エメット・シア氏がCEOを務めていたTwitch(ツイッチ)の創業は2006年にさかのぼります。

2006年にイェール大学の同級生で友人のジャスティン・カン氏、現在Y Combinatorでマネージングディレクターを務めるマイケル・セイベル氏、GMが買収した自動運転会社「Cruise Automation」の創業者カイル・フォークト氏の4人で「Justin.tv」を立ち上げました。

この「Justin.tv」はジャスティン・カン氏の生活を24時間365日生配信する(トイレなどは除く)というユニークな事業からスタートして8ヵ月間続けたのち、誰でもライブ配信ができるプラットフォームへと進化していきました。

この「Justin.tv」を運営していると、エンタメ・スポーツ・テクノロジー・ニュースなど、あらゆるカテゴリーでコンテンツが配信されるようになりましたが、中でもゲーム分野が急成長・大人気のコンテンツとなっていました。

そこで、シア氏がCEOに就任して、2011年6月にリリースしたのが、現在のゲーム配信プラットフォーム「Twitch.tv」です。

「NewsPicks編集部がTwitchでのゲーム配信にチャレンジした動画」
【ガチ検証】完全素人が1カ月「ライブ配信」でいくら稼げるか

「Justin.tv」も毎月3000万人以上が訪問する世界最大のライブ配信プラットフォームに成長していましたが、より急速に成長していた「Twitch.tv」にリソースを集中させるため、2014年8月にサービスを終了したのです。

すると、直後にAmazonがゲーム事業のさらなる拡大を狙って、Twitchを9億7000万ドル(当時約1000億円)で買収したのです。

その後、シア氏は2014年〜2019年は著名スタートアップ・アクセラレーターのY Combinatorで非常勤顧問を務めながら、Twitchの急成長を牽引しました。

Amazonによる買収時点では、月間アクティブユーザーは5500万人ほど。

それが、格闘ゲーム・レーシングゲーム・eスポーツなど、ゲームジャンルの拡張に注力したことなどから、2023年8月には月間アクティブユーザー1億4000万人を抱えるプラットフォームに成長したのです。

そして、2023年3月にシア氏は生後9か月の息子の子育てに注力すべく、TwitchのCEOを退任しました。

退任後はイエール大学時代にコンピュータ・サイエンスを専攻していたこともあり、AIの未来や、CEOの業務の大半は自動化できることなど、積極的に発信を行っていました。

このような彼の専門知識と業界への深い洞察は注目され、OpenAIの暫定CEO候補にはセールスフォース元共同CEOのブレット・テイラー氏(社名非公開のAIスタートアップを創業したばかり)、Airbnbのブライアン・チェスキーCEO、シェリル・サンドバーグ氏など、AI熱心な多くの経営者が名を連ねていましたが、結局のところシア氏がその重要な役割を担うことになったのです。

「エメット・シア氏による暫定CEO就任についてのポスト」

ただし、サム・アルトマン氏とグレッグ・ブロックマン氏がOpenAIに復帰、現在の取締役が辞任しない限り、OpenAI社員約770人のうち、500人超が退職するという、署名活動が行われています。

世界が注目する一大クーデターの行方はどうなっていくのでしょうか。

サムネイル画像:DALL·E 3による画像生成

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