“飲み好きなのに公共交通機関がない”を解決する沖縄スタートアップ

2023年5月16日
全体に公開

今回は、沖縄のスタートアップエコシステムにフォーカスした記事『日本全国のスタートアップを知る:沖縄編』では取り上げきれなかった、ちょっとユニークなスタートアップを紹介します。

沖縄といえば、飲酒運転の検挙数が多い県です。酒好きが多いのに車社会ってことなんでしょうね。

そんな沖縄ならではの課題を解決するスタートアップがAlpaca.Lab(アルパカラボ)」です。

☕️coffee break

沖縄県警によると、2022年沖縄県の飲酒運転検挙件数は1,025件。

2017-2019年は毎年2,000件超えで全国1位だったことに比べると、大きく減少したものの、人口1,000人当りの検挙件数で比較(全国・九州)すると、全国平均0.16件・九州平均0.29件を上回る0.86件となっています。

その理由は、公共交通機関がないから。

モノレールは那覇市と浦添市だけ、バスは時間通りに来なかったり、最終便が早い。タクシーも運転手不足でなかなか捕まらない。

その結果、自動車で飲食店に行き、飲酒後でも近くまでだったら問題ないだろう、といった考え方が染み付いていました。

そんな課題を解決すべく、2018年に創業されたAlpaca.Labが提供しているのが、運転代行配車プラットフォーム「AIRCLE(エアクル)です。

🍪もっとくわしく

実は沖縄県の運転代行業者数は717社と、2位の福岡県381社を大きく引き離し、全国で圧倒的トップです(令和4年警察白書 統計資料)。

2003年時点では152社しか存在しなかったものの、2014年までは毎年数十社ずつ増え続けていました。

一方、2014年の774社をピークに徐々に減少し続けています。

その理由は、運転代行を依頼する人は1社1社電話をかける必要があり、運転代行業者もその電話応対からしか依頼案件を獲得することができず、収益性を確保することが難しいといったことがあります。

その結果、運転代行を依頼しようと電話をかけても適切に人員が割り当てられないため、すぐにドライバーとマッチングできない、マッチングしても待ち時間が発生する。

それが飲酒運転の件数につながる負のスパイラル状態でした。

そんな中、Alpaca.Labは、AIで即座に需給を調整してマッチングするサービスを構築。これによって運転代行がわずか12分(21年1月時点)で来てくれるようになりました。

一見、デジタル化するだけだと思いがちですが、「運転代行業者にとっては、既存の電話受注の方が簡単で、お客さんもなれているという考えが残っていた」ことが鍵です。

そのため、Alpaca.Labは初期のサービス設計においては運転代行業者の意見は聞かず、目指したいビジョンを実現するサービスの質を磨くことにこだわり、実績を作ってきたそうです(FASTGROWインタビュー)。

🍫ちなみに

現在、エアクルは沖縄本島・福岡市・和歌山市で事業展開をしています。

飲酒運転の危険性が認知されるようになり、​全国に運転代行業者は8,106社(22年末時点)もあるものの、​2021年時点でも飲酒運転検挙件数は19,801件ありました。

また、2022年に千葉県、山梨県は過去5年で最多となる飲酒運転検挙件数を更新しており、引き続き大きな課題となっています。

今年2月にはシリーズAファーストクローズで2億円を調達。累計アプリダウンロード数は60,000件(22年12月時点)を突破したAlpaca.Labは、日本全国の飲酒運転撲滅にむけて他地域に展開していくのかどうか。

あるいは、運転代行以外のサービスを展開する可能性もあるのかなど、期待が高まります。

サムネイル画像:Unsplash/rupixen.com

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