ベネッセと海外スタートアップの事業連携がおもしろい

2023年5月8日
全体に公開

リスキリング(学び直し)というワードは随分定着してきましたが、「スキルが向上しない」「モチベーションが継続しない」「キャリアパスが描けない」といった課題が立ち塞がります。

少し前に『世界で3番目に評価額が高いEdTechスタートアップの戦略』で紹介したGuild Educationは、店舗スタッフなどのデスクレスワーカーに特化し、1:1で専任のキャリアコーチがつくことで、継続的にリスキリングに取り組める環境を作っていました。

デスクワーカー向けでも、そういった事例はないのだろうか。

そんなことを考えている中、興味深いニュースが舞い込んできました。

それが今回紹介する「ベネッセと海外スタートアップの連携」です。

☕️coffee break

4月19日、ベネッセホールディングスが米スタートアップのSkyHive Technologies(スカイハイブ・テクノロジーズ)へ約13億円を出資する資本業務提携を発表しました。

SkyHiveは、2017年にカナダで設立されたシリーズBのスタートアップ(現在の本社は米国)。

報酬水準・人材育成・経済・求人・産業・地理データなど、毎日24TB(テラバイト)以上もの労働市場情報データを収集して構築したデータベースをもとに、企業の人材採用・育成・定着を支援しています。

今回、ベネッセはSkyHiveと連携することで、学習コンテンツの提供だけでなく、従業員のスキルの可視化・分析までをワンストップで支援することが可能になります。

資本業務提携の内容は大きく3つ。

①SkyHiveのデータとベネッセの教育事業展開力を掛け合わせたプログラムの開発・展開

②SkyHiveのデータベースシステムをUdemy for Business(ベネッセのサービスの1つ)導入企業からサービス提供。将来的には個人や中小企業、自治体への展開も検討

③ベネッセグループにおける人材育成への活用検討

学習コンテンツを保有していないSkyHiveにとっても、ベネッセとの連携は、迅速に即戦力として活躍できるスキルを身につけられるプラットフォームを構築する、という目標に近づきます。

ベネッセホールディングス プレスリリース

また、サービス導入企業でリスキリングに取り組む社員にとっても

自分のスキルを可視化

身につけたいスキルと現在のギャップを把握

個人に最適化されたコンテンツで学習

スキル獲得

適切なマネジメントをすることができるので、理想のキャリアパスに向けて最短距離で学習することができるんですね。

🍪もっとくわしく

ところで、ベネッセは2015年にオンライン教育プラットフォームの米Udemyと包括的業務提携契約を結び、日本版Udemyを立ち上げています。

2020年には約55億円をUdemyに出資し、法人向けサービスの「Udemy for Business」の展開に向けて、連携をさらに強化しました。

これを機にベネッセは、社会人向けの学び支援領域に本格進出し始めます。

2020年11月に発表した新中期経営計画(FY2021-2025)で、既存事業の進研ゼミ・学校・学習塾・介護・ベルリッツに次ぐ柱として、「海外での介護事業」と「大学・社会人向けの学習・キャリア支援」に注力することを掲げたんです。

ベネッセ 新中期経営計画(FY2021-2025)

※事業ポートフォリオ見直しのため、21年2月にベルリッツはカナダのILSC Holdingsの特別目的会社に売却されています

🍫ちなみに

ベネッセ社内でも社員のリスキリングプログラムを構築しています。

進研ゼミで培った添削式の教育プログラム「赤ペン先生」を応用して、DX人材の育成に取り組んでいます。

1. 職種定義(DXに必要な7職種を定義)
2. スキルマップ(スキルの可視化)
3. アセスメント(スキル診断と市場価値判定)
4. 管理(割り当て・育成・採用)
5. 研修プログラム(オリジナルプログラムとUdemyの活用)

基礎研修プログラムの6割は内製化していて、今後は社内の研修の仕組みもUdemyとともに外販することに動いています。

豊富な学習コンテンツを有するベネッセがSkyHiveと組んで、スキルの可視化・分析までをワンストップで支援できるようになると、どんな成功事例が生まれてくるのでしょうか。これからがとても楽しみですね。

サムネイル画像:Unsplash/Prateek Katyal

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