【就活生向け】エンジニアからキャリアを始めた私が、メガベンチャーを推す理由

2023年3月8日
全体に公開

こんにちは!

今回は、トピックスのリレー投稿企画として「私がもう一度、キャリアを踏み出すスタートラインに立ったなら」というお題を頂きました。前回は NewsPicks CCO の佐藤留美さんが「やりたいこと探しは留保。キャリア記事を25年書いてきた私が、今就活するとしたら」を書いて下さいました。

実は昨年、理系学生向けイベントで同様の趣旨の講演をする機会がありました。その時は、「もし学生に戻っても『ソフトウェアエンジニア』になると思う」と話しました。

今回はもう少し対象を広げ、これから就活を始める皆さん、特に「何がやりたいのか分からない」と漠然とした不安を抱えている方々に向けて、自分自身のキャリアの振り返りつつ、いくつかの典型的なお悩みに応える形で書いていきたいと思います。そして、折角なので自分なりの具体的なオピニオンも提示してみたいなと。

結論は「やりたいことが見つからなければ、メガベンチャーに行こう!」です。

自己紹介

まず最初に私の自己紹介を少し。私は新卒で小規模な金融系 IT コンサルティング会社に入社し、IT コンサルタントとしてキャリアをスタートさせました。しかし入社してすぐに「ソフトウェアエンジニアになりたい」と思い直し、10 年以上エンジニアとして働いてきました。ここ数年は徐々にマネジメントに比重を移しつつあり、現在は NewsPicks の CPO/CTO として、プロダクト開発組織の責任者をしています。また最近ではプロダクト組織だけでなく、一部の事業についても責任を持つ形になっています。

長いエンジニア生活からマネジメントへの転身、テクノロジーから他の領域へと少しずつ幅を広げているのが、私のキャリアと言って良さそうです。

運が良かった

そんなキャリアを振り返って常々思うのは、ひたすらに「運が良かった」ということ。就活時に今の自分の姿は全く想像できていませんでしたが、飽き性で怠惰な自分が、幸いにも仕事に飽きもせず嫌にもならず、ずっと楽しく働き続けられていることに感謝しています。

楽しく働き続けられた理由は、大きく 2 つの幸運に恵まれたからです。

理由 ① 高まり続けるエンジニアの重要性

およそ 15 年前 —— 私が就職活動をしていた頃、ソフトウェアエンジニアは全く人気のない地味な仕事 でした。まだ iPhone が登場する少し前です。当時の就職活動で人気だったのは、外資系金融機関やコンサルティングファーム・商社・広告業界などでした。

しかし時が経ち、今やエンジニアはすっかり花形の職業になった と言って良いでしょう。2020 年には、遂に「高校生のなりたい職業」で 1 位 になり、いまやあらゆる企業が優秀なエンジニアを血眼になって探しています。Marc Andreessen が「Software is eating the world」と唱えてから約 10 年で、世界はすっかり変わってしまいました。ソフトウェアやプロダクトが企業の中心になり、エンジニアの数がどんどん増え、経営者にもソフトウェアに対する理解やエンジニアのマネジメント能力が当たり前に求められるようになってきています。海外では以前からその傾向が加速しており、例えば Meta の経営陣を見ても、多くがエンジニア出身です。この傾向はもちろん日本でも同様に強まっており、エンジニアのキャリアパスも多様化してきました。

就職するときは、今の状況は全く予想していませんでした。しかし当時インターネットにどっぷりハマり、「なんとなくこれからは IT が面白いはずだ」と考えてこの業界に入ったのは、とても幸運だったと思います。エンジニアに軸足を置きつつ、その時々で自分の興味に従ってキャリアの幅を広げることができました。

加えて、ソフトウェアエンジニアの仕事が「チーム戦」なのも楽しく働き続けられた理由だったように思います。以前、姉妹サイトの JobPicks で、「ソフトウェアエンジニアの仕事を一言で表すと、『毎日が文化祭』だ」と書きました。みんなで一つの目標に向かって一生懸命仕事をする喜びを実感できたことも、楽しく働き続けられた理由だったと思います。

理由 ② 次々と現れるロールモデルの存在

自分にとってお手本となる存在に恵まれたのも幸運でした。新卒入社した会社で長らくロールモデルとしていたのは最初の上司で、彼の書くプログラムのあまりの美しさに「プログラミングってこんなにクリエイティブで美しい行為なのか」と衝撃を覚えたことが、私の運命を大きく変えました。

IT コンサルタントとして入社したものの、「彼のようなカッコいいエンジニアになりたい」と思ってプログラミングの世界にのめり込んでいきました。「プロとして、自分で自分の仕事を面白くする責任がある」ことも、彼から学びました。

転職してからも、周囲の上司や同僚から日々学び続けられています。私はどうも書籍から学ぶのが得意ではないようで、実際に周囲の人と仕事をする中で学ばせて頂く機会の方が断然多いです。と言っても「完璧な人間」なんて居るはずがありません。誰しも 凸凹 がある中で、その人の「すごいところ」を出来るだけ見つけ、取り入れられるものを取り入れようと自分なりに努力しています。凸凹 のある人ほどエッジが尖っている場合も多く、そのような人が多数存在する職場で長く働けているのも幸運だと感じています。

長くなってしまいましたが、総括すると「機会:トレンドに乗れた」こと、そして「姿勢 :周囲の人から学び続けた」ことが、私のキャリアを形作ってきたと認識しています。これらを踏まえていくつかのお悩みに応えていきます。

お悩み ①「やりたいことが分かりません」

徐々にマネジメントに比重を移して実感しましたが、多くの人は、最初から「やりたいこと」や壮大な夢なんて持っていません。せいぜい、ちょっと「やりたくないこと」があるぐらいです。30 代になっても「何をやりたいんだろう」と悩んでいる人も沢山いるように思います。学生時代から「やりたいこと」が明確な人はとても立派だと思いますが、自分がそうでないからといって過度に悲観する必要はない と思います。人間は常に変化する生き物ですし、いつか「やりたいこと」が見つかったときに備えて、足腰を鍛えておけば良いのではないでしょうか。

余談ですが、若い頃に読んで今でも覚えているのが、こちらの書籍の「アプリケーションスキルではなくマシン性能を上げろ」という言葉。

冒頭ご紹介した通り、私自身もその時々で「やりたいこと」を自分なりに変えてきていますが、最初にエンジニアとしてしっかり足腰を鍛えたからこそ、その能力を応用してキャリアを変えられていると感じます。

ただ、そんなにこだわりがなければ「トレンドに乗る」は意識しても良いかもしれません。成長産業に身を置けば、業界の変化に応じて必然的に自分自身も変化を迫られます。これは皆さんにとって良い成長機会になるでしょう。今ならやはり IT 業界、その中でもエンジニアやデザイナーと関わる機会が多い職種 が個人的にはおすすめです。砂田さんも書かれていました が、これからはテクノロジーによって個人がクリエイターになる時代です。そして、IT が分からない大人は次第に淘汰されていくでしょう。この波に乗っておくのに越したことはありません。

お悩み ②「どのように会社を選ぶべきか分かりません」

まず、世の中には素晴らしい会社が本当に沢山あります。そこから「正解を選ぼう」と考えるよりも「選んだ選択肢を正解にしよう」と考える方が、より主体的な人生・キャリアになっていくのではと思います。

Source: Unsplash

私自身の就活を振り返ると、学生時代に何か頑張ったことがあるわけでもなく、ましてスーツを着るなんて想像もつかず。「とりあえず情報収集するか」と、コンサルティングファーム・資産運用会社・銀行・メーカーなど、幅広い業界に顔を出してみました。

しかし、選考を進めるにつれて「どうも違うぞ?」と違和感が拭えず、途中で方向転換をしています。銀行の面接を受けても、大勢の行員と歩調を合わせて働く自分の姿が全くイメージできませんでしたし、当時人気だった戦略コンサルを受けても「なんだか自分で手を動かさずに口だけ動かす人になりそうだな」と大変失礼な感想を持ってしまい、ワクワクできなかったのです。

面接を重ねるにつれ「どうも自分は大企業には向いてなさそうだ」「自分が誇れるものを自ら作る仕事がしたい」「手に職をつけて稼ぎたい」「インターネットが好きだから、何か IT に関わる仕事がしたい」といった自分の軸が見えてきたので、途中から一次受けでシステム開発をしている IT コンサルや SIer、その中でも小規模な企業にターゲットを切り替えて就活をしていました(当時はエンジニアと言えば IT コンサルや SIer に勤めるのが普通でした)。今時点で「やりたいこと」が分からなければ、まず色んな業界を幅広く見てみても良いかも しれませんね。

お悩み ③「大企業かスタートアップのどちらに行くべきか悩んでいます」

Source: Unsplash

これも実際に両方を見てみると良いのではと思いますが、私自身はメガベンチャーをお勧めします。いくつか理由があって、① 成長産業であり機会が多いこと ② ロールモデルが多いこと ③ 切磋琢磨し合える仲間が作りやすいこと ④ 多様性があること です。

①「成長産業であり機会が多いこと」は、スタートアップにも共通しますね。多くのスタートアップやメガベンチャーは成長産業に身を置いているため、必然的に変化が早く、働くメンバーも常に変化を求められます。また会社の成長に対して人が足りないことも多く、若手のうちにチャンスが巡ってきやすいです。私自身も、若手のうちから沢山の機会をいただけて、本当にありがたかったです。

②「ロールモデルが多いこと」は、多くのメガベンチャーに当てはまると思います。相対的にスタートアップよりも優秀な人材が集まりやすく、人が多い。そして人数が多いからこそ ③「切磋琢磨し合える仲間が作りやすい」メリットがあります。ちなみに自分自身は全く社交的ではなく人付き合いも悪いタイプで、長らくこの価値を軽視していたのですが・・・歳をとるほどに重要性を実感しています。メガベンチャーや大企業に勤めるメリットの一つは、その後の人生でお互いに切磋琢磨しあえる仲間と出会える点だと思うので、ぜひこれから就職する学生の皆さんは仲間を大事にして下さいね(自戒も込めて)。

④「多様性があること」は、最近になって改めて感じている重要なポイントです。「多様」とは人口統計学的多様性だけでなく、認知的多様性も指しています。会社によると思いますが、まだ人数が少ないスタートアップや新卒中心の大企業と比較して、中途中心のメガベンチャーの方が、多様な人材が存在する場合が多いと思います。私自身も新卒で入った会社は比較的モノカルチャーだった(注:今は変わっていると思います)ので、現職と比較してあまりのカルチャーの違いに驚いた経験があります。特に認知的多様性によって対話・マネジメントコストが非常に高くついているのを見て、最初は「何故こんなに非効率なやり方をしているんだろう」と不思議に思ったものでした。しかし今となっては多様性から生まれる新しい価値や発想を目の当たりにして、その重要性が心底腹落ちしています。例えば記者や編集者。驚くほどの企画力や発想力をお持ちで、彼らと仕事をすると自分の思考のフレームがどんどん外れていく感じがします。またパーソナル部分で言えば、様々なバックグラウンドを持つメンバーと一緒に働くことによって、昔よりも少しだけ他人のことを想像できるようになったと思います。多様性のある環境によって自分自身が人間的に成長できた 実感もあり、若いうちから出来るだけ多様な価値観に触れられる職場に勤めることをおすすめしたいです。

以上、自分なりにこれまでのキャリアを振り返りつつ、就活生の皆さん向けに思うところを書いてみました。まとめると

・選んだ選択肢を正解にしよう
・悩むならトレンドに乗ろう
・ロールモデルから貪欲に学ぼう
・多様性に揉まれて成長しよう

そして、「これらを獲得しやすいのはメガベンチャーではないか」というお話でした。めっちゃ自分のことを書いてしまって気恥ずかしいですが、この記事が何らか皆さんの就活のお役に立てれば幸いです。

ただ、どんな進路を選んだとしても、それはあくまでスタート地点。時間と共に世の中のトレンドも変わりますし、自分自身の考えも変わります。そう考えると、柔軟に変化できる自分になる のが、実は重要なのかもしれませんね。

次回は NewsPicks パブリッシング編集長で、話題の『弱さ考』を連載中の井上 慎平さんです!めちゃくちゃ面白そうですね。3/9 に投稿を予定しているそうなので、お楽しみに 👋

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