「BeReal」を800億円超で買収 Voodooってどんな会社?

2024年6月12日
全体に公開

フランスのゲームパブリッシャー「Voodoo(ブードゥー)」が、写真共有SNS「BeReal(ビーリアル)」を5億ユーロ(約844億円)で買収すると発表しました

BeRealは毎日ランダムな時間にプッシュ通知が送られてくると、2分以内に自撮りを行い、投稿しないといけないサービス。飾らない日常の様子を投稿し合う仕組みに、Z世代(1990年代半ば〜2010年代生まれの人)が魅了されていました。

今回、BeRealを買収したVoodooとは一体どのような会社なのか、紹介します。

サムネイル画像:Voodooメディアキット

☕️coffee break

華やかなライフスタイルを切り取り、フォロワーやいいねを獲得するインスタグラム。

GoPro出身のアレクシ・バレイヤ氏は(現CEO)、そんなインスタグラムに対抗すべく、ありのままの日常を届けるサービスとして、2019年にBeRealを創業しました。

2022年初頭にApp Storeでアプリをリリースしたものの、1年間はほぼ無風状態でした。

2021年に入り、フランスの大学のキャンパス内で徐々に広がり始め、2021年3月にはDAU(デイリー・アクティブユーザー)が1万人に達しました。

6月のシリーズAラウンドでは、著名ベンチャーキャピタルの米Andereesen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ。通称:a16z)とAccel(アクセル)をリード投資家として資金調達したことで、一躍世界から注目を集め始めました。

2022年には学生が大学内で宣伝すると、報酬がもらえるアンバサダープログラムも展開し、TikTok上などでも話題になりはじめました。

これにより、1年でDAUは1万→1500万へと急増。App Storeソーシャルネットワーキング部門で1位に、App Store Awardsで年間最優秀アプリに選ばれました。

©︎BeReal メディアキット

今回、BeRealがVoodooに買収された金額は5億ユーロ(約844億円)。現在のMAU(マンスリー・アクティブユーザー)は4,000万人のため、1ユーザー=約2000円と評価したというわけです。

2022年10月のシリーズB資金調達時の評価額は6億ユーロだったため、ややダウンラウンドという形に。

日本では2024年に入ってからもMAUが増加しており、アメリカに次いで世界で2番目にユーザーが多い国となっていますが、アメリカ・イギリス・フランスではMAUが低迷しているのが現状です

アプリ調査会社Sensor Towerによると、BeRealの2022年7〜9月のアプリダウンロード数は3500万でしたが、今年1〜3月には500万にまで落ち込んでいます。

24年3月時点には年内に手元資金が尽きるため、シリーズCの資金調達を行うか、M&Aを選ぶか、迫られていることが明らかになっていました

🍪もっとくわしく:Voodooって?

BeRealを買収したVoodooは2012年にゲーム会社として設立されて以来、複数のM&Aを実施しながら、ハイパーカジュアル・ゲーム(国籍、年齢問わず遊べる簡単なゲーム)の分野で、世界的にも有名な企業へと成長を遂げてきました。

2020年には日本法人も設立しており(2023年に清算)、LINEが「LINEポイントゲーム」のリリースにおいて、Voodooのゲームタイトルをもとに開発したという事例もありました。

©︎Voodoo メディアキット

しかし、2022年以降、市場の飽和とトレンドの移行により、ハイパーカジュアルゲームの市場は成長が鈍化しています。この状況を象徴するかのように、Voodooのパブリッシング責任者は2023年1月に『ハイパーカジュアルゲームは死んだ』とまで述べています。

こうした状況を受け、ソーシャル・エンターテイメント分野でのスマホアプリ提供に注力するようになりました。

「現在、ゲーム分野以外で提供するアプリ」

Wizz:10代向けマッチング・チャットアプリ

WeMoms:妊娠・育児ママ同士がつながるコミュニティ

Blitz:モバイルゲームをプレイすると現金・賞金がもらえるサービス

こうしたアプリの運営から蓄積したノウハウの活用、ポートフォリオ拡充を目的に、BeRealを買収したと考えられます。

Voodooは買収・PMIが完了すると、創業者のバレイヤCEOは退任し、「Wizz」のCEOを務めるエイメリック・ロフェ氏が、BeRealのCEOを兼任する予定です。。

今後は、さらなる事業拡大に向けて、新機能のリリースやマーケティング投資を拡大すると共に、アプリ内に広告を導入することも検討しています。

BeReal現CEOのバレイヤ氏は米国で成長が鈍化していることを認めており、今後は欧州・アジア・その他の地域での拡大に注力するとFTの取材で述べています

厳しい状況に直面している中、新機能のリリース・マーケティング投資でユーザー数の再成長の軌道に載せることができるのでしょうか。

『Coffee Break with Startups』では、海外を中心にスタートアップ業界のトレンドやホットなニュースを日々解説しています。ぜひ、以下のURLからフォローいただけると、嬉しいです。

応援ありがとうございます!
いいねして著者を応援してみませんか



このトピックスについて
樋口 真章さん、他9518人がフォローしています