オッペンハイマーの孫は米ベンチャーキャピタル、8090 Industriesで活躍中

2024年5月1日
全体に公開

3月末から、映画『オッペンハイマー』が米国から8ヵ月遅れで日本でも劇場公開されています。数々の名作を生み出してきたクリストファー・ノーラン監督が、原子爆弾の開発を主導した理論物理学者、ロバート・オッペンハイマーの人生を描いたことから、大きな注目を集めています。

そんなオッペンハイマーの孫、チャールズ・オッペンハイマー氏は現在、米国のベンチャーキャピタル(VC)「8090 Industries」にて、産業の未来を形作るスタートアップを輩出すべく、投資活動に取り組んでいます。

今回はそんなチャールズ氏が活躍するVC、「8090 Industries」を深掘りしてみました。

サムネイル画像:ロスアラモス国立研究所 ©︎Wikimedia Commons/U.S. Department of Energy

☕️coffee break

まずは簡単にロバート・オッペンハイマーについて。

オッペンハイマーが生まれた20世紀初頭は、量子革命が起きた時代です。

ドイツを中心に、原子や素粒子など最小単位の粒子についての研究「量子力学」が急速に発展し、ハイゼンベルク、アインシュタインなど、現代でも知られる著名な物理学者が数多くの理論を考案してきました。

オッペンハイマーが物理学者になった頃には、そうした理論の応用の時代となっており、オッペンハイマーはアインシュタインの「一般相対性理論」をもとに、ブラックホールがどのような条件で生成されるのかなどを明らかにしました。

第二次世界大戦が始まると、米国はナチス・ドイツが先に核兵器を保有することを恐れ、原子爆弾の製造に向けたマンハッタン計画の策定・実行に動きます。

この計画をもとに開発拠点としたのが、米ニューメキシコ州のロスアラモス国立研究所で、オッペンハイマーは初代所長として原爆製造研究チームを主導しました。

映画『オッペンハイマー』は、これらの過程でロバート・オッペンハイマーが技術者としての葛藤している様子などの半生を、『インターステラー』、『TENET』で知られるクリストファー・ノーラン監督が描いた作品です。

🍪もっとくわしく

そんなオッペンハイマーの孫、チャールズ・オッペンハイマー氏は、現在米国のベンチャーキャピタル「8090 Industries」にて、オペレーティングパートナーとして活躍しています。

これまではSalesforceやTwillioなどで、エンジニア・プロダクトマネージャーとして勤務してきたことから、CRMシステム(顧客関係管理)、B2Bソフトウェアには深い知見を持っています。

そして、2023年には核兵器の脅威を世界に伝えると共にクリーンエネルギーへの移行を推進する『Oppenheimer Project』を立ち上げると共に、8090 Industriesに転職しました。

この8090 Industriesは、それほど知られていませんが、実は一目置かれているVCではないでしょうか。

創業者のKerem Ozmenは2018年、当時25歳の時に設立したシードVCのK50 Venturesで、世界のVCファンドトップ1%に入るほど高いパフォーマンスを叩き出しました。

現在の8090 Industriesも米Business InsiderによるシードVCのトップ100において、共同創業者のRayyan Islam氏が31位にランクインしています。

投資領域は、脱炭素、国家安全保障に重点を置いた航空宇宙・防衛・ディープテックです。すでにいくつかの注目すべき、スタートアップへの投資実績があることから、チェックしていきましょう。

Oklo(オクロ)

👉OpenAIのサム・アルトマン氏が会長を務めており、現在ニューヨーク証券取引所へのSPAC上場に向けて、手続きを進めています。米国で初めて、マイクロ原子炉の商用化に向けて承認を得たスタートアップで、2026-27年の稼働を目指しています。

Quaise Energy(クエイズ・エナジー)

👉MIT(マサチューセッツ工科大学)発のスタートアップで、シリーズA終了時点ですでに累計調達額は9100万ドル(約143億円)超え。既存の掘削技術と核融合技術を組み合わせることで、世界一深い穴を掘り、超臨界地熱発電に取り組んでいます。実現すると、原子力発電並みに大出力の再生エネルギーが供給できると注目を集めています。

Noya(ノヤ)

👉大気中のCO2を直接吸い取る「DAC(Direct Air Capture)」ソリューションを開発中。工場などの冷却塔にCO2回収装置を直接設置することで、コストを削減しながら、効率よく最大限回収することを目指しています。

Noyaについての解説動画:【最新】テスラ方式を学んだ起業家がめざす、「炭素除去の革命」

Quaise EnergyとNoyaは現在シリーズAのフェーズで、非常に壮大な計画に取り組んでいます。すぐには結果が出ませんが、脱炭素社会に移行していく過程で、さらに注目を集めていくでしょう。

チャールズ・オッペンハイマー氏もこうした脱炭素・エネルギー分野への投資に注目しているため、今後の活躍にも期待したいですね。

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