【超入門】ラグビー観戦が楽しくなる「反則の見取り図」
読者の皆様、こんにちは!NewsPicks編集部でインターンをしています、山本大貴です。
前回は、Student Pickerの佐藤さんが「学びの在り方」について、実体験も交えたお話を書いてくれました。
教育の問題は、「学びの方法」だけでなく、「学びの実行」にもあります。
歴史科目を例に考えましょう。
歴史を学ぶ際、ただ事象を暗記(丸呑み)してしまう人がいます。その人にとって、歴史は「詰め込み」の最たる例となります。
一方、ただ丸呑みするのではなく、当時の社会の大きな潮流を捉え、知識を自分なりに整理する人がいます。その人にとって、歴史は「体系化」という財産をもたらすものです。
これは、「方法」が同じでも、「実行」において学びに差異が生じている例です。
学びの方法が最良でも、全員にとって最大の効力があるとは限りません。
「いかにモチベートするか」というのも、重要な論点でしょう。
はじめに:ラグビーは複雑?
みなさんは、ラグビーをみたことがありますか?
2019年の日本大会や、2023年のフランス大会にて、ラグビー日本代表の活躍を目にした人もいるかもしれません。試合を観戦した人は、どんな感想を抱いたでしょうか。
率直に、「なんだかルールがよくわからん」と思った人も多いのではないしょうか?
実際、私の周りからはこんな声が聞こえてきました。
「急に笛が鳴って敵ボールになり冷めた」
「反則が横文字でよく分からない」
「あれ、アメフトだっけ??笑」
体をぶつけ合う球技の代表格、ラグビー。
15人vs15人の大所帯で繰り広げられるボールの争奪戦は、数あるスポーツの中でも、かなりエキサイティングな競技に該当するといえます。
実は、現在の日本ラグビーには、かなり大きな「波」がきています。直近では、ラグビー日本代表に、新たな動きがありました。
2015年W杯で日本代表が南アフリカを倒した、ラグビー史上最大の番狂わせ「ブライトンの奇跡」の立役者、エディー・ジョーンズ氏が新HCに再就任したのです。
さらに、2024年の日本のプロラグビーリーグには、世界の「超有名」なプレイヤーが多く在籍しています。
非常にハイレベルな試合を、生で観戦することができます。
このように、今の日本ラグビー界には、かなり好条件が重なっているのです。にもかかわらず、ラグビーはそんなに皆さんの身近にありません。
この現象は、「ルールが複雑」なことに起因しているのではないでしょうか。
そこで、今回の記事では、7年間ラグビーをしていた私が、みなさんに「ラグビーの見方」を伝授いたします。
一見難しそうに見えるラグビー。
実は、たった「4つの反則」を押さえるだけで、かなり競技が理解できるようになるのです。
シーズン中盤に差し掛かる、日本のプロラグビーリーグ「リーグワン」。これを読んだ後、1試合だけでも観戦してみてはいかがでしょうか。
①危険なプレーをする
「体をぶつけ合う時点で危険だろ」なんて声が聞こえてきそうですが、ラグビーのぶつかり合いにも明確な「ルール」があります。
ボールを持っていない側、すなわちディフェンス側(DF)は、ボールを持っている側、すなわちアタック側(AT)が進むのを防ぐため、「タックル」をします。
とはいえ、DFは誰にでもタックルしていいわけではありません。「ボールを持っている相手選手」にしかタックルできないのです。
これが、アメフトとの大きな違いの1つです。
では、ボールを持っているプレイヤーに対してのタックルであれば、何をしてもいいのか。
当然そんなことはなく、タックルの際の「危険なプレー」を抑止するルールがあります。
よくある「危険なプレー」は、以下の3つです。
「カチアゲ」と呼ばれる、掴んだ足を強く持ち上げるタックルも、頭部から落下する可能性のある悪質なプレーとみなされます。
②ボールを前に落とす
「ボールを前に落としてはいけない」、この反則を「ノックオン」と言います。ラグビーで最も有名かつ頻出の反則です。
プロでさえ、「ノックオン0回」で終わる試合はありません。前半・後半を合わせた80分の間にボールを前に落とさないことは、不可能に近いことなのです。
天候不良の日なんて、もってのほかです。
「ハイタックル」も「ノックオン」も反則です。
同じ反則という言葉を使うには、「罪の重さが違いすぎる」とは思いませんか?
なので、ラグビーには「軽い反則」と「重い反則」の2種類があるのです。ここがラグビーのややこしいところです。
軽い反則が発生した場合、ラグビーの代名詞「スクラム」が始まります。
なお、スクラムやラインアウトといった、試合を再開するプレーのことを「セットプレー」といいます。
ラグビーのセットプレーには、面白い原則があります。「なるべく公平にボールを争奪する」という原則です。
そのため、スクラムにボールを入れる時も、ラインアウトにボールを投げ入れる時も、ボールは「まっすぐ」入れなければなりません。
まっすぐ入れないと、「ノットストレート」という軽い反則となります。
(なお、スクラムのボール投入に関しては、やや味方側に投げてもいいです。詳細は割愛しますが、大枠この認識で間違いありません。)
③ボールより前でプレーする
「スローフォワード」という反則があります。この反則は、「ボールを前に投げてはいけない」という意味です。
これは、ノックオンと並び、頻繁に発生する反則の1つです。
スローフォワードは、ラグビーのある”原則”を象徴しています。それは、ボールは「自分達の足で」前に運ばなければならないという原則です。
攻撃側は、トライを目指してボールを前へと運びます。サッカーであれば、前方への美しいパスを繋ぎ、ボールを前へと運んでいくでしょう。
しかし、ラグビーでは、真横ないし後方にしかパスができません。
「苦労もせず、ボールを前に投げて運ぶなんて、何事か!」
こんなラグビーの精神性が見え隠れします。
ラグビーは、「身一つ」でボールを運ばなければならない、非常に愚直な競技なのです。
それでは、AT側が楽にボールを前に運ぶ方法はないのかというと、そんなことはありません。ラグビーには、キックがあります。ボールを「蹴る」場合、前に飛ばしても良いのです。
しかしながら、「身一つ」で運ぶ精神性のあるラグビー。当然、キックにも制約をかけます。
「ボールを蹴った人より前にいる味方選手は、プレーしてはいけない」のです。
結局、「ゴールラインの目の前でボールを待っておく」なんてことはできません。
得点を取るためには、地道にボールを前に運ぶしかないのです。
「前に投げてはいけない」「キック地点より前にいたらプレーできない」...。これらを総合して、「ボールより前でプレーしてはいけない」と覚えましょう。
(とはいえ、キックは前に進む上でのかなり有効な手段です。キックは必須の戦術であり、ラグビーはキックによる「陣取り合戦」とたとえられることもあります)
④立っていない状態でプレーする
「立っていない状態でプレーしてはいけない」という反則は、AT側・DF側双方に適用されます。
ボールを持ってぶつかった人も、タックルした人も、地面に倒れたらプレーをやめなければならないのです。
「ジャッカル」という言葉をご存じでしょうか?日本代表の姫野選手の代名詞ともいえるプレーで、W杯の際、メディアでも度々話題になっていました。
この反則も、「立っていない状態でプレーしてはいけない」という反則に関わってきます。
「ジャッカル」とは、タックルされて倒れたAT側のプレイヤーがボールを離す前に、ボールを奪おうとプレーする行為です。(ジャッカルを試みることを、「絡む」と呼びます。)
これをされると、AT側の地面に倒れているプレイヤーは、ボールを離せません。離したとたん、敵にボールを奪われてしまうからです。
このようにATの選手が離さないままでいると、審判は「ノットリリースザボール」の反則を取り、晴れてDF側はボールを奪い返すことができます。
ジャッカルとは、相手ATの「寝ながらプレーしてはいけない」という反則を誘発する、素晴らしいDFのプレーなのです。
★★★
やや専門的な話ですが、これまでの「立つ」という言葉は、ラグビーでは「自立する」と表します。
自立とは、「自分の力だけで立っていること」です。なので、手で地面に寄りかかってしまっている状態は「自立」とは呼びません。
ジャッカルする際も、片足が浮いてコントロールできない状態だったり、しゃがんでしまっていたりしたら、逆にDF側が反則を取られてしまいます。
前に倒れ込んでしまう「オーバーザトップ」や、自分の足で立てていない「オフフィート」という反則が代表的です。
★★★
最後に:とりあえず観戦しよう
いかがだったでしょうか。
改めて、ラグビーの「4つの反則」を確認しましょう。
1.危険なプレーはダメ
2.ボールを前に落としちゃダメ
3.ボールより前でプレーしちゃダメ
4.立っていない状態でプレーしちゃダメ
細かいことをいえばもちろん、もっとたくさんの反則や知識があります。正直、プレイヤーでさえ把握していないような反則もあります。
しかし、ラグビーを観戦する上では、この知識で十分楽しくみることができるはずです。
最後に、ラグビーの魅力を伝えさせてください!
ラグビーは、本当にエキサイティングな競技です。
息を呑むほどのぶつかり合いや、惚れ惚れするほど美しいステップやパスなど、さまざまな魅力があります。
ただ、何より魅力的なのは、「番狂わせの絶妙な確率」です。
ラグビーは、番狂わせが起きづらい競技だと言われています。
スキルなどの「テクニック」はもちろんのこと、体格差などの「フィジカル」が色濃く結果に反映されるからです。「格下が格上を倒す」なんてことは、滅多に起きません。
だからといって、可能性がないわけではありません。
地道なフィジカルの強化と、実力差をひっくり返すための「戦略」によって、わずかな確率で「upset」を生み出すことができるのです。
だから、日本代表が起こしてきた数々の「番狂わせ」は、世界から評価されています。
そして、その番狂わせは、観戦する我々を「熱狂」させてくれるのです。
あなたも、ラグビーを観ましょう!
長文をお読みいただき、ありがとうございました!
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