できる部下が最速で育つ「4つのギフト」
先日、本トピックスの読者限定で開催している、マネジメント理論を学ぶ特別トレーニング「Leadership Academy」の第2期が終了しました。受講生の方々から、「リーダーとして、いろんなタイプの部下の育て方がよくわかった」「判断に迷ったときの思考方法が身についた」「チャットやメールでチームに指示するときの良い書き方を学べた」という声をたくさんいただき、嬉しく思っています。
1期、2期ともに大変ご好評いただいたため、いったんの最終期として、第3期を追加開講します!今回は、お忙しい方にも参加いただきやすいように単科での受講も可能としました。管理職の方、これからリーダーになる方に必要な知識を効率よく学んでいただける場なので、ご興味のある方は本記事の最後にあるリンクから詳細をご覧ください。
今回の記事では、アカデミーでも学ぶ「部下の育て方」について解説します。
◇海外ではプレイングマネジャーが少ない
日本において、管理職が部下を育てるのは簡単ではありません。産業能率大学総合研究所が2019年に行った調査によると、管理職がプレイヤーを兼任している割合は実に96%です。
また部長が抱える業務のうち、プレイヤーとしての仕事の割合は約40%に及びます。私のクライアント企業においても、管理職の業務内容を調査したところ同じような数字でした。
しかしこれでは、管理職が本来やるべき重要度の高い判断や交渉、ましてや部下を育成する時間など到底とれません。
一方で、海外におけるプレイングマネジャーの割合は、アメリカでは約50%、ヨーロッパでは約40%と低い水準です。
私が長くいたグローバル企業においても、本社のシニアマネジメントレベルになって現場仕事を兼任することはまずありません。マネジメントは「自分でやったほうが早い」とわかっていても、決して自分でやらないように指導されています。マネジメントがプレイヤーを兼務していては、いつまでたっても組織力は高まらないからです。
マネジメントは、自分よりも優秀な部下を1日でも早く育成することに集中しなければなりません。ここで強調したいのは「早く」育成すること。部下の成長のスピードをどれくらい早められるかがマネジメントの価値であり、その手法を徹底的に教え込まれるのです。
◇人の成長は「直線的」ではない
外国語を話せるようになった、スポーツが上達した、ダイエットに成功した――みなさんは、これまで仕事や趣味において、さまざまなスキルや経験を身につけてきたと思います。
いずれも継続的な練習や訓練が求められたはずですが、上達するまでにどのような軌跡を描いてきたでしょうか。
「時間と努力の量に対して右肩上がりに直線的な成長をしてきた」という人はほぼいなく、「何かコツのようなものを見つけて、そこから急成長した」という人が大半のはずです。ほかにも、なにか苦しいプロジェクトを乗り越えたときや、大きな案件を始めて受注したときなど「節目となる体験があったときに一気に成長した」という人も多いかもしれません。
このように、人は、努力を始めてからしばらくは低空飛行の状態が続き、あるタイミングで一気に能力が上達するものです。このタイミングを「ブレークスルー」と呼びます。
ブレークスルーはひとつの能力を高めるなかで何度もやってくることがありますが、ブレークスルーとブレークスルーの間は、やはり次の「コツ」をつかむまで努力を継続しなければならない「停滞期」が続きます。このように、ブレークスルーを何度も繰り返すことによって、人は階段状に成長していきます。この軌跡を「成長曲線」と言います。
ブレークスルーがやってくるタイミングは、人によって、また努力の方法や環境によって異なります。たとえば、チーム全員で英語力を伸ばそうと勉強を始めても、人によって伸び方はまったく違うわけです。
ここで注意したいのは、ブレークスルーを迎えるタイミングは、当の本人にもわからないということ。
人はどうしても右肩上がりで成長していくことを期待しがちなので、努力を始めて最初の段階は、期待と現実とのギャップに苦しむことになります。その結果、「自分には能力がない」「自分には向いていない」とネガティブに受け止めてしまい、ブレークスルーに到達する前にその努力を止め、あきらめてしまいます。
そういう意味で、マネジメントの役割は、部下がブレークスルーに到達するまでの停滞期をいかに乗り切らせるかにかかっているといっても過言ではありません。この時期に適切なアプローチを行うことで、人の成長は驚くほど速まるのです。
◇ブレークスルーを迎えるための4つのギフト
先が見えないことや何度やっても結果が出ないことに対し、努力を継続するのは非常に難しいものです。そこでマネジメントは、次の4つのプロセスに従って、適切なタイミングで適切な「ギフト」を部下に渡す必要があります。これは「4つのギフト」と呼ばれるコーチングの基本メソッドです。
①準備期
部下は新しい仕事や役割に対して期待や不安を抱き、必要な知識やスキルを学ぶ段階です。この段階では、部下に対して「能力を高める方法・適切な勉強法」を与えてください。いきなり難しいことはできませんし、最初は「効率よく知識が増える実感」が大切です。どの本を読めばよいか、参考資料はどれか、わからないことは誰に聞けばよいのかなど、基礎的な指導や教育を行うことが大切です。
②開始期
部下は仕事や役割に慣れ始め、自信やモチベーションが高まる段階です。この段階では、部下に明確な目標や期待値を伝え、「短いスパンでフィードバックや評価」を与えてください。またこの時期に、「小さい成功体験」を得ることが、努力を継続していくモチベーションにつながります。
③安定期
部下は仕事や役割に完全に適応し、安定した成果を出す段階です。この段階では、コツをつかんでブレークスルーを迎える部下が現れてきますので、上司は「その部下に対する信頼と、自律的に判断する権限」を与えてください。この時期は、自信を与えることがもっとも重要です。「自分なりの手法」を自ら確立することで、内発的動機づけを促し、新たな目標を見いだしていきます。
④停滞期
一定の成長を終えた部下が、仕事や役割に飽きてしまい、モチベーションが低下する段階です。ここまで来たら大成功と言えます。この段階では、部下に対して「休息と、新たな役割」を与えましょう。次の成長に向けての準備期間でもあり、少し気持ちの切り替えの時間が必要な場合もあります。人によっては、すぐに次の役割を与えて新しい成長曲線に移行することもできます。
このように、人は段階的にブレークスルーに向かっていきますが、そのタイミングをできるだけ早く迎えるために、順を追って適切なギフトを与えていくことがマネジメントの役割です。
とくに最初の段階では、失敗することや、うまくいかないことも続くので、失敗から学ぶことを伝え、小さいことでも成功として一緒に認識していくフィードバックも非常に有効です。
現代のマネジメントは本当に時間がないのが現実だと思います。だからこそ、成長曲線とブレークスルーを知っておくことで、部下の成長スピードを効率よく上げましょう。それが自身の時間をつくることにもつながり、良いサイクルが回っていきます。部下の能力を最大限に引き出すための実践的な知識として、ぜひ覚えておいてください!
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皆さんも今回の記事にあるようなマネジメント理論を体系的に学びませんか?
NewsPicksトピックス読者限定 第3期「Leadership Academy」
1期、2期と多くの読者の皆さんに参加いただきました。次回の開催は現在予定しておりませんので、ご希望の方はぜひ第3期にてご参加ください。
お申込み受付期間は、本日2024年1月29日(月)から2月11日(日)までとなります。
(本トレーニングはお申込みを締め切りました。たくさんのお申込みありがとうございました!)
Top画像@Linustock
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