キャリアアップを実現する「専門性」の身につけ方

2024年1月22日
全体に公開

1年の最初の月ということもあり、今後のキャリアや目標について考える方も多いのではないでしょうか。私も1月が期首の会社が長かったので、毎年この時期は1年の目標を考えるタイミングでした。

そこで今回は、みなさんの目標を考えるうえでヒントになる「キャリアの基本原則」について解説します。

◇「年を重ねる=キャリアアップの選択肢が広がる」は間違い

先日グロービスでの講義のあと、受講生からキャリアの相談がありました。

30代半ばで転職を考えている。しかし、あまりよい転職先がなく、自社に留まるべきかを悩んでいる。今後のキャリアがまったく見えない――。そんな相談でした。

私は仕事柄、たくさんのキャリア相談を受けますが、ほとんどの人は「年を重ねるごとにキャリアアップの選択肢が増えていく」と考えています。

たしかに新卒入社した若手のころに比べると、経験を重ねたことによって、社内異動に加えて転職や、独立、起業なども視野に入ってくるかもしれません。ですが、実際に理想的なキャリアアップができるかというと、「多くの人にとっては簡単ではない」というのが現実です。

いったいなぜなのでしょうか?

◇日本企業に多い「優秀なジェネラリスト」

労働人口の減少と高齢化に伴い、転職者は過去に比べて増えています。しかしそれでも大企業の場合、ほとんどの社員は新卒入社から定年まで一社で勤め上げます。

たとえばアメリカでは、生涯での転職回数の平均が実に「12回」。日本と比べると雇用の流動性に大きな差があることがわかります(「ZIPPA」「21 Crucial Career Change Statistics: How often Do People Change Jobs?」)。

アメリカであれば、自分が意図しない人事異動を告げられたりすると、社員はためらうことなく退職していきます。しかし、日本では長く同じ会社で働くことが前提になっているので、社員は会社の要望に従って人事異動を重ねます。

会社としても、欠員を埋めるために人事異動を行うので、どこに異動しても成果を出しくれる「器用な社員」が多くいてくれると大変助かります。その結果、優秀で重宝される社員ほど「いろんな職場を経験したジェネラリスト」として育っていく傾向があります。

会社にとってはありがたい存在ですし、本人としても同じ会社で順調にキャリアアップを重ねられれば何の問題もありません。ですが、最近はそういう時代ではなくなってきています。

かつての日本企業は、どんどん成長してポジションも増え、年齢構成の歪みもなかったので、順番にキャリアアップを重ねることができました。しかし、現代は多くの企業で、管理職のポジションは年々減り、高齢化によって、ポジションがなかなか空かないのが現実です。

異動を繰り返しても、いつまで待ってもキャリアアップしない――。

いざ転職しようとしても、「器用でいろんな経験を重ねた社員」は、他社にもたくさんいます。そのため、今の会社で「優秀な人材」と認められているような人でも、いざキャリアアップにつながるような転職をしようとすると難しい、というケースに陥ってしまうのです。

◇キャリアアップの秘訣は、選択肢を持つこと

キャリアにおいて、人事異動を経験することは決して悪いことではありません。ただし、今の時代は、それだけではキャリアアップにはつながりません。

私は、キャリア採用の面接時に必ず「あなたは何のプロフェッショナルですか?」と質問します。

このとき、「いろんなことを経験してきたのですが……」と答える方が多くいます。単純な要員不足を埋めるための採用であればそれで良いときもありますが、キャリアアップを目指すような採用面接の場合、会社が求めているのは、「自社の社員にはない経験やスキル」です。

「いろんなことをある程度できる」という人材であれば、わざわざ社外から採用しません。

もし、これまでのキャリアを振り返って、「これのプロだ!」と一言で自信をもって言えるものがないと感じたら、キャリアを見つめ直すタイミングかもしれません。今の会社や職場がいつまでも存在するとは限りません。また、目指す職種やポジションがあったとしても、いつまで待っても空きがでない状況は今後さらに増えるでしょう。

私はこれまで、キャリアに関する原理原則として、社員にこう話ししてきました。

「キャリアアップをするには、キャリアの選択肢を増やしていくことを考えてほしい」

人事としては、大事な社員が自社以外の選択肢をもって転職するのは困るのですが、それでも、他社から必要とされスカウトされるくらい価値のある人材になってくれるほうが会社にとっても良いですし、選択肢があると思えるからこそ今の仕事にも思い切ってチャレンジできるものです。

転職だけではなく、社内異動でも、独立でも構わないので、「今の職場以外でも活躍できる場はある」と確信できている社員ほど、案外今の会社でキャリアアップしていきます。

◇キャリアにおける専門性とは「知見の汎用化」

これからの日本の労働市場において、キャリアの選択肢を増やすためには、柱になるような専門性をつくることが一番の近道となります。

専門性といっても、世界レベルの知識が必要なわけではありません。「他者から見て価値のある経験・スキルだと思えること」であればどんな内容でも構わないので、何か1つ「これだ」と言えるものを身につけましょう。

ここで大事なのは、その知識や経験を「汎用化」しておくことで初めてキャリアにおける専門性になる、ということ。

専門性というと、自分の会社や今の部署の仕事での深い知識・経験だと勘違いされがちですが、それはキャリアアップにつながる専門性ではありません。

環境を変えても同じ成果を生み出せるような知識に転換しておくことを「専門性」といいます。ここを誤解しないように注意してください。

たとえば、「私は今の会社で5年連続営業成績トップです」という実績は素晴らしいですが、「どういう顧客にどういう商品を、どう売る場合においてなのか。それは違うケースでも通用するのか」といったことを分解してまとめておきましょう。そうすると、「自分の経験が自社や自部門以外のどの範囲で価値があるのか」もよくわかってきます。

◇専門性に迷ったときは、第三者に相談

日本では新卒採用がまだ主流なので、自分の専門性がわからないまま会社に入る人がほとんどです。会社に入ってしまうと、自分にどういう専門性が向いているのか、試す機会は限られます。

しかも、専門性を得るにはそれなりに時間がかかるため、早い段階でなるべく多くの職種や業務を経験し、専門分野を見つけられるほうが有利です。ただし、1つだけに限る必要はありませんし、途中で変えても構いません。最終的に複数の要素の組み合わせが価値になることもあります。

もし、冒頭で相談をしてくれた方のように、自分の未来が見えなくなってしまったときは、自分だけで考えるのではなく、できれば利害関係のない第三者で、自分のことを理解してくれる人に相談してみましょう。私はよく、“昔の”上司や、先輩、取引先の方などをおすすめします。

キャリアにおいては特に、他人の視点は発見が多いものです。自分では強みとは思っていないことも、他部門や他社、違う環境の人から見ると「価値」であることも珍しくありません。もちろん直接の上司でも問題ありませんが、まずは今現在、利害関係のない人に意見を求めると、気楽に相談ができ視野も広がりやすいと思います。

こちらの動画では、部下の方から上司に対して、自分の専門性に関して相談する場合の話し方も解説していますのでぜひご覧ください。

みなさんも、年の初めにこれからの未来やキャリアについて考えたり、周囲に話してみたりする時間をぜひとってみてください。今年の過ごし方も変わってくるかもしれません!

Top画像@Linustock

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