インスタ創業者の再挑戦:ニュースアプリ「Artifact」はわずか1年で終了
Instagramの創業者、ケビン・シストロム氏とマイク・クリーガー氏らが立ち上げたニュースアプリ「Artifact(アーティファクト)」がわずか1年で運営終了することが明らかになりました。
わずか8人のチームが運営するこのニュースアプリは、AIでユーザーが興味を持ちそうな記事をおすすめ。それを元にユーザーは記事にコメント、他の人と議論できるソーシャルネットワークを目指していました。
『Google Play’s Best of 2023 awards』においては、最高の日常必需品アプリと評されましたが、“継続的な投資を行うほど、市場機会は大きくない”と結論づけられたのです。
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「Artifact」はケビン・シストロム氏とマイク・クリーガー氏が、Instagramを開発して以来、初めて立ち上げたサービスです。
両氏はInstagramをリリースしてわずか2年で、10億ドルもの金額(最終的には12億6,600万ドル)でMetaに売却したものの、収益化や広告をめぐってMeta側と対立していました。
Instagram創業者はクリエイティブで美しい投稿にあふれるコミュニティプラットフォームを構築したい。対して、Metaは広告導入で収益化するとともにより多くの人に使ってもらうべく、機能拡充をすべきという考え。
親会社であるMetaの考えには逆らうことはできず、結果的に以下の決断を下すことになりました。
・広告を導入して収益化
・競合サービス「スナップチャット」の人気機能の実装(=現在のストーリーズ)
・ユーザー数、投稿数の増加を追求
その後も対立は続き、最終的に創業者2人は2018年にInstagramから退社することになったのです。
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2人はInstagramを退社してからは、2017年にGoogleがAIモデル「Transformer」を発表して以来、AI技術の進歩に強く魅了されました。
Instagramでの経験を通じて蓄積した消費者向けサービスの知見にAI技術を組み合わせることで、新たなソーシャルネットワークサービスを立ち上げられないかを模索しました。
その結果、たどり着いたのが「機械学習を活用したニュースのパーソナライズ化」です。
TikTokが機械学習アルゴリズムにより、それぞれのユーザーに合わせたおすすめの動画を表示して、エンゲージメントを高めているように、ユーザーが興味を持ちそうなニュースをおすすめして、それを起点に友人同士で議論し合うことを目指したのです。
多くの出版社やニュースメディアが廃業したり、経営不振に陥っている中、AIで新たなビジネスモデルを構築することで、ニュースや情報に触れる人を増やせるのではないかと試みました。
しかし、ユーザー間でニュースにコメントをし合うコミュニティを構築するには、投稿促進やコメント管理を行う人材も確保する必要があり、数百万人もの人に優れた体験を届けることは難しいと判断しました。
Artifactのアプリは運営負担を減らすためにコメント・投稿機能を削除し、2月末をもって運営が終了される予定です。
今後については言及されていないものの、AIを活用した新たなサービスを開発することを示唆しており、次の挑戦には期待が膨らみます。
「私たちは人工知能が、触れるものすべてを変えていくエキサイティングな時代に生きており、新しいアイデアの機会は無限にあるように思えます」
サムネイル画像:Apple Storeのスクリーンショット
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