「大人の」ハイブランドの選び方〜共感を呼ぶ印象術〜

2023年12月15日
全体に公開

こんにちは!ファッションスタイリストの神崎裕介です。

年末を迎えて、パーティーやイベント、お呼ばれの機会も多くなるかなと思います。プレゼントを貰う時期でもありますね。

スタイリストとしてよく相談を受けるのが「ハイブランドをどう合わせるのが正解か分からない」というテーマです。ちょうど先日もそんなお悩みを頂いたので、今回トピックスとしてお答えしてみたいと思います。

スタイリスト的な回答

ハイブランドの合わせ方としては「一点豪華主義」がオススメです。

ネクタイやスーツが、ワンピースが、バックが腕時計が、といった感じで、メインとして立たせて主役にしてあげる。その存在が全体の印象を引き上げてくれるので、他のアイテムもきっと良いものなのでは、と思わせる効果があります。

選び方としては、コートやジャケット、バッグやシューズなど全体に占める割合の大きいもの、目に付きやすいものがオススメです。まずは分かりやすい、印象に残りやすいところから揃える。

顔まわりは必ず目に入るので、バストアップのアイテムを充実させるのも◎。その理由から、個人的には指輪よりもイヤーアクセやネックレスに投資した方が効果的だと思います。男性ではネクタイが該当しますね。

一方で、あまり色々と組み合わせると主役が多すぎてまとまりに欠ける、チグハグな印象になります。上級者の方は上手くまとめますが、まずは一点豪華主義でコーディネートした方が安心です。

ハイブランドのアイテムは高級感や存在感を与えてくれますが、着る人持つ人がそれに相応しいパワーを持っていないと「着られている」状態になって、本人の印象よりブランドの印象が勝ってしまいますので注意が必要。

スタイリング的には一点豪華主義が大安定なのですが、そもそもハイブランドを持つことに躊躇したりどこを選んだらいいかで悩んでしまう方もいるようです。

今回は大人のハイブランドの選び方として、ここを意識すれば自信を持って着られて共感を得られる、という印象術のポイントをお伝えしてみたいと思います。

「ハイブランド=ステータス」の時代は終わっている

これがまず重要なのですが。一昔前はハイブランドは憧れであって、大人になったら、昇進したら、と社会的地位の向上に合わせて持つ、立場に比例して持てるというステータスな部分が多くありました。エルメスのネクタイとかオメガの時計とか。

しかし、近年では年功序列的な給与体系は崩れSNSで稼ぐ層も登場したことで、ハイブランドは「いつかは買う憧れ」ではなく「今欲しいものは今買う」という感覚になりつつあります。

ゆえにそれを持つこと自体に、あまり特別感はありません。今Z世代の学生を教えていますが、いいバッグだね、と聞くと10万円くらいということがザラです。まさに頑張って貯めてでも今欲しいものは今買う、という感覚なのでしょう。メルカリなどの影響も大きいかも知れません。

もちろん、ハイブランドのものは良質で着る人の印象をアップデートしてくれます。ただ、それを着ている=ステータス、という考え方ではなくなってきている。ここは認識しておくべきかなと思います。

ポイントは「そこに愛はあるのか」

某CMのフレーズか国民的ドラマのセリフのようですが、支持されるかどうかのポイントはそこにあります。

例えに出して申し訳ないのですが、景気のいいスタートアップ系やネット起業家などが全身ブランド物に身を包んでいて「なんかイヤだな」と感じるケース、ないでしょうか。

その感覚の正体は、前述した「ハイブランド=ステータス」という考え方で”誇示する為に着ている”からです。成金的なイメージを受けてしまうというか。成功の象徴として着ているだけなので、そこに理由や愛はありません。だから見栄ばかりが目立つ。

前提として、ハイブランドは嗜好品です。衣食住という言葉がありますが、それぞれ最低限満たせばいいということであれば、敢えて高価なものを選ぶ必要はないわけで。服だってコスパからいえばユニクロより優秀なブランドはないでしょう。

わざわざハイブランドを選ぶのか?そこに理由があればいいわけです。

応援消費、という考え方

これは近年若い世代を中心に広がりを見せているマインドですが、消費=生産者やブランドを応援すること、という考え方。ご存知の方も多いかと思います。

購入するということは売り手にお金が渡ります。そのお金でまた次のものを生み出すことができる。好きな人だから、ブランドだから長く存在していてほしい。そんな応援の気持ちを”消費という行動”で示そうというムーブメントです。

「応援消費」の満足度は非常に高く、「応援消費」経験者の94%が満足していることがわかりました。満足している理由については、「環境問題に対して地球に優しいものを買い、使い続けることで、損もしないし、いいことをした気分になる(20代・女性)」、「応援した対象のその後などを知り、自分が少しの助けになれたと思えたから(30代・男性)」(中略)といった誰かのためになっている、役に立てていることや商品やサービスに共感できることが多く挙げられました。
ジャパンネット銀行の調査より引用(2020年)

ブランドや商品の名声よりも「自分が支持しているか、共感できるか」で選ぶ傾向がますます強くなっているということ。ステータスで選ぶのとは正反対の考え方であり、そこには愛がある、と言えるでしょう。クラウドファンディングもそれに当てはまります。

そして、ハイブランドも「ブランドの考えや行動に共感できるか、応援できるか」で選ぶ、選ばれる時代になってきているのです。

ハイブランドの社会貢献×応援消費

例えば、イタリアのブランド「トッズ」は、コロッセオ修復のために巨額を投じたことで大きな話題になりました。

トッズはイタリアを拠点とするブランドということで地元の文化遺産修復に乗り出したわけですが、こういった姿勢は既存のファン以外の共感を呼ぶに相応しいものです。

またグッチは東日本大震災以降、200万ユーロ(現在のレートで約3億2,000万円)という巨額の寄付をはじめ、ネックレスやブレスレットといったチャリティアイテムの売上金全額や、イベントを企画しその収益の一部を寄付するなど継続的な東北支援を続けています。

これは、ブランド側も「もう名前だけでは商売できない」と感じ始めていることを意味します。夢を売りますだけではダメで、ちゃんと現実社会に寄与しないと共感を集められなくなっている。

我々もなんとなく箔がつくから、、ではなく、ハイブランドの活動や姿勢を支持しているからという動機は、人にも自信を持って伝えられる理由ではないでしょうか?

単純にブランドのデザインが好き、でもいいのですが、こういった社会貢献活動やその考え方が好きという角度から応援消費する、というスタンスが新たなトレンドになっているのです。

実際、僕がトッズのアイテムを揃え出したのは、上記のニュースを見て、改めてブランドに興味を持ったことがはじまりです。実際に質の良さにも満足していますが、そういう姿勢に共感しているから、という理由はつい人にも伝えたくなります。

その選択が、共感を呼ぶ

例えブランドものに身を包んでいても、ブランドの考え方や姿勢に共感したからここを選んでいるんです、というのは説得力のある理由になる。着ている本人は応援として購入している満足感があるし、話を聞いた人の共感も呼べるでしょう。

ある意味、大人がハイブランドを纏うことは当たり前とも言えます。金銭的にもポジション的にも着ていて不思議はない。そんな中で、ちゃんとポリシーがあって選んでいるという要素は他の人との差別化にもなり、共感にも繋がる印象術になります。

これまで述べたように、今はビジネスにおいて「共感」という感情がとても強力な後押しになります。自分発でなくても、共感できるものを選ぶことで同じ効果がある。

ハイブランドを選ぶことに躊躇がある方や合わせ方に悩む方は、まず姿勢に共感できるブランドを選んでみるという選択肢はどうでしょうか?

ただ着ていて気分がいい、見栄えがいいというだけでなく、理由を話すことで共感も得られる。新しい時代の選び方として、今後ますます大人のスタンダードになっていくはずです。

そして自分の、自社のビジネスに「応援消費」に繋がるポイントがあるかどうか。

これもまた問われていくポイントだと考えています。

今回のまとめ

・ハイブランドをコーディネートするときは、まず「一点豪華主義」が無難。主役は主役として立たせてみて

・もはや現在ではハイブランド=ステータスではない

・応援消費というムーブメントに代表されるように、共感を軸としたビジネスが伸張している。同時に行動に共感できる人を支持する傾向もある

・自分が何を選ぶか、なぜ選んだかの理由も大事。ハイブランドも思想や活動などバックボーンを知って選ぶことで共感を呼べる

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神崎裕介

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