「人は見た目が9割」その本当の意味〜信頼を得る印象術〜

2023年12月10日
全体に公開

こんにちは!ファッションスタイリストの神崎裕介です。12月よりトピックスオーナーとなり、今回が3つめのトピックスになります。

タイトルの言葉、誰もが一度は聞いたことのあるフレーズではないでしょうか。2005年にはこの言葉がタイトルになった本がベストセラーになりましたよね。そこから広まったわけですが。

ベースにはこれまた有名な「メラビアンの法則」(アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが行なったコミュニケーション実験結果)があるわけですが、実は本来、この法則は一般に捉えられているのと違う意味で発表されていたんです。

メラビアンの法則、その真意は?

一般には、人と人とのコミュニケーションにおいて、話の内容など言語情報が7%、口調や話の早さなど聴覚情報が38%、見た目など視覚情報が55%の割合で受け取られているという話になっています。

筆者作成

この数字自体は変わりません。しかし大元の結果は、感情を伝える際に言語・声のトーン・身体言語(ボディランゲージ)の3つの要素に矛盾があったとき、より優勢な割合を示したものなのです。

本来はその要素が合致して何かを伝えるのが自然ですよね。仕事上で「頑張ったね」とねぎらわれる時、笑顔で優しく、きっちりした格好で握手を求められたら素直に喜べるはずです。

でも、口では「頑張ったね」と言っているのに無表情で冷徹に、スーツのポケットに手を突っ込んだままだったらどうでしょう。”本気で言ってないな””どうしたのかな、怖いな”と感じてしまわないでしょうか。

つまり、3つの要素に矛盾があると、人は割合上優勢な要素に影響されてしまうということ。正しくメッセージを伝えるためには、どれが欠けてもいけないわけです。

見た目が良ければ、話が上手ければうまくいく、という単純な話ではないということ。そもそも聴覚と視覚を足しての9割ですからね。もっとも「見た目が5割5分」では本が売れないでしょうけど。

ここで見るべきポイントは「矛盾」

では見た目の印象は5割強程度、終了!という話で終わっては学びがありません。僕がスタイリストとして注目しているのは「矛盾があった場合」という部分です。

言葉のチョイスや声のトーンはその場でどうにでもできます。というか伝えたいことにウソがなければ、自然と矛盾のないテンションで話すことができるでしょう。

しかし、見た目の印象=服装はその場だけではどうにもならない。

あるクライアントさんが「自分が責任者なのに、説明していると明らかに部下の方を見て話を聞いていた。どうしたらいいか」という相談をしてきました。

これは話の内容に問題があるわけではなく、印象に問題がある事例です。説明された側は「この人は責任者に見えないけどどんな立場なんだ?」と思いながら話を聞いていて、部下の人の方がそれっぽく見えてしまったのでしょう。

こうなるとクライアントの話はちゃんと入ってきません。責任者と改めて話したいと思ってしまうから。一生懸命伝えているのに手応えがない。実は私が責任者なんですという話になって相手に気を使わせる。

この時間がとても無駄だと思うのです。見た目に説得力さえあればスムーズに進む話なのに。

「矛盾」をどう潰すか

伝えるべきことはハッキリしている、内容も問題ない、迷いもない。であれば、その内容を伝えるのに違和感のない服装を整えればいいだけです。

立場やポジションに相応しい、と言い換えても良いと思いますが「この人が言うなら」と感じさせる納得感を与えられるかどうかがポイントになります。

いくら豊富な知識や流暢な説明を披露されても、視覚的な印象いかんで説得力は変わってくるんです。

以前、全国放送のTV番組にとある西洋文化の専門家の方が出演されていたのですが、内容云々よりも服装が気になってしまって。正直メディアに出るのに相応しいとは思えない、タンスの奥から引っ張り出してきたような古びたワンピースだったのです。

服飾にも関係する話をするのに、やはりそれでは説得力に欠けます。その後、残念ながらその方をメディアで見かける機会はありません。そういう判断をされたということなのかなと思わざるを得ませんでした。

人は、直感的な矛盾に敏感です。なんとなく違和感がある、と感じると理由を探し始めたりして進行中のことに集中できなくなります。ドラマや映画でひとりだけ演技が、、というキャストがいるときと同じです。良いこと言ってるはずなのに何かうさんくさい、というのも直感的な矛盾と言えます。

やはり相手(顧客)に集中してもらうためには、狙ってない矛盾は無くしていった方がいい。これはジャンルを問わず間違いない事実です。

ビジネスで信頼を得られる印象術とは

誰しも、何がしかの肩書きを背負って話をします。最初に名乗るケースもあれば途中から分かるケースもありますが、そこでガッカリさせたり違和感を抱かせないことです。

明らかに責任者然・専門家然とした印象でいれば、名乗らなくても聞く方はそれなりの信頼感を持って聞いてくれます。自己紹介をしたとき「ですよね」「さすがだな」と違和感なく思ってもらえる印象であれば、トークはスムーズに進みます。

僕はスタイリストと名乗ることになるので勝手にハードルが上がっている状態です。でもそのハードルをしっかり超えておくことで自分の仕事がしやすくなる。信頼された状態からスタートできるので、頑張って信用されようという労力を他に使うことができる

例えば企業の代表であればそのポジションに相応しい質の服や着こなしをしていてほしいですし、専門家であればその領域で説得力のある印象であってほしいわけです。これは相手側としての理想であり、期待感の表れと言ってもいいでしょう。

簡単にイメージする方法としては、同ジャンルのトップ企業の人や活躍している人を最低ラインとして参考にするのがオススメです。

というのは、世間の多くの人は「よく見るもの」を基準にしてジャッジするから。

そのジャンルでよく見かける人や企業の印象と比べて、目の前の人はどうか。そうなったとき印象に欠けるのでは勝負になりません。むしろ超えなくては。だからそこを最高ラインでなく最低ラインに設定します。

見た目=自信の底上げ

実際にどうかは相手が判断することですが、ラインを意識するだけで基準は劇的に変わります。そして自分の意識も。

空港の免税店の出退店を担当しているという方からスタイリングの依頼があったのですが、「海外のブランドと交渉するとき、相手がパリッと決めてくるのでつい引け目を感じてしまう」というお悩みをお持ちでした。

では基準を海外のハイブランドに合わせましょうと提案して、ビシッと負けないようなクオリティのものを揃えた結果、引け目を感じずに臨めるようになり交渉自体もスムーズになったそうです。

ビジネスの場は、ある意味パワーゲームでもあります。どちらが主導権を握るかで思い通りの流れになるかどうか決まってくる。そんなとき、見た目で引け目を感じて勢いが削がれるのは勿体ない以外に言いようがない。

見た目を意識するということは、自信を底上げすることでもあるのです。

この感じなら安心してあの人に会える、あの場所にも自信を持って行ける、今の自分の雰囲気は良い感じだ、そんなメンタル的なお守りとしてもファッションを含む見た目は機能します。

自分のやっていること、伝えたいこと、肩書きに対して矛盾のない見た目であれば、相手に対する説得力も自分に対する自信も得ることができる

「人は見た目が9割」というのは様々な解釈がありますが、そのひとつとして、中身だけでなく外見の印象も整えることで望む成果の確率を高めることができる、という考え方も加えて頂ければ幸いです。

今回のまとめ

・メラビアンの法則は、言語・声のトーン・身体言語(ボディランゲージ)の3つの要素に矛盾があったとき、聞き手は身体言語、声のトーン、言語の順で強い印象を受けるという実験結果

・矛盾があると、人はその理由を探して集中力を欠く

・肩書きやポジション、伝えたいことと矛盾のない=相応しい見た目を整えることで安心感や説得力が生まれる

・営業や交渉などで主導権を握るためにも、外見に付随する引け目があるなら取り払っておくべき

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神崎裕介

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