「OpenSea」ユニコーン→50%レイオフ:市場シェアも新参に剥奪される

2023年11月6日
全体に公開

NFTマーケットプレイス大手の米OpenSea(オープンシー)が、大幅な戦略変更を迫られ、従業員の約半数を解雇するという驚きの決断を発表しました

2021年にNFT業界から初めてユニコーンの称号を獲得し、2022年1月のシリーズC資金調達後には評価額が130億ドル(当時約1兆4950億円)となり、業界の期待を一身に集めました。

ところが、NFT市場が減速する中、1年で市場シェアは73%→19%にまで急落。業界では、OpenSeaに変わり、市場シェアを73%まで伸ばした新参者が台頭し、新たな勢力図を描き始めています。

☕️coffee break

OpenSeaが立ち上げられたのは、NFTが黎明期だった2017年のこと。

当初はWi-Fiルーターへのアクセス権を共有して暗号資産を稼ぐことができる事業「WifiCoin」の提供を進めていたものの、猫の育成ゲーム「CryptoKitties(クリプトキティーズ)」が熱狂を集めていることを受けて、すぐにピボットを決意します。

それが、現在の事業であるNFT売買マーケットプレイス。

eBayがオンラインで商品を売買できるマーケットプレイスを構築したように、OpenSeaは世界で初めてデジタルコンテンツの売買プラットフォームを立ち上げ、CryptoKittiesのキャラクターを売買できるようにしたんです。

参考:CryptoKitties生みの親、カナダのDapper Labsについて

CryptoKittiesの熱狂を受けて、OpenSeaはマーケットプレイスを立ち上げたものの、NFT市場は中々成長せず、2020年3月時点での月商はわずか2万8000ドル(当時約285万円)でした。

その間、デヴィン・フィンザーCEOはNFTの魅力や可能性について、SNSやイベントで訴え続けながら、OpenSeaは従業員わずか7名で事業展開を継続していました。

事業撤退も現実味を帯びていた中、ある出来事を機にNFT市場は激変します。

それは2021年3月にオークション会社「クリスティーズ」が、デジタルアーティスト「Beeple(マイク・ウィンケルマン)」のNFT作品を6,935万ドル(当時約75億円)で落札したことです。

これを受け、著名人が相次いでNFTの制作や売買を行い、NFT市場は前年比で10倍超の取引が行われるほど、急拡大を遂げました。

OpenSeaは先行企業ということもあり、シェア97%とほぼ独占状態。2021年7月のシリーズB資金調達では、著名VCのAndreesen Howowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ:通称a16z)をリード投資家として、NFT業界初のユニコーンとなったのです。

2022年1月のシリーズCでは、機関投資家のCoatue ManagementやTiger Globalなどから3億ドルを調達。調達後の評価額は130億ドルと、わずか半年で8倍以上にまで引き上げられたのです。

しかし、2022年春から暗号資産の価格下落やいくつかの要因により、NFT市場は低迷し始め、同年7月にはOpenSeaが初の人員削減(20%)を発表しました。

「NFT市場の主な低迷要因」

  • 金利上昇など、マクロ経済の影響を受けて、リスク資産への投資が敬遠
  • 暗号資産市場への規制の影響
  • NFTの保有価値を疑問視
  • OpenSeaの元従業員がインサイダー取引

OpenSeaのボリューム(取引総額)とトランザクション(取引量)の推移

出所:DappRader

🍪もっとくわしく

OpenSeaは市場の減速だけでなく、競合との激しい競争にも直面しました。

一時はシェア97%でしたが、市場の急成長で、競合の参入も相次いだことから、2022年10月には73%ほどとなりました。

そこからOpenSeaはどんどんシェアを失い、2023年10月末にはわずか19%にまで落ち込みました。

対照的に、とある企業が2022年10月時点ではシェアわずか3%だったものの、2023年10月末には73%まで獲得することに成功しました。

出所:The Block

2022年10月にリリースされたBlur(ブラー)です。

多くのNFTマーケットプレイスが個人トレーダーに焦点を当てているのに対し、同社はプロトレーダー向けに構築していることが特徴です。

また、2023年5月にはVCのParadigm(パラダイム)と共同で、NFTを担保とした個人間の融資プラットフォーム「Blend」をリリースしました

これはNFT市場を金融市場化して、流動性を向上させながら市場を拡大することが狙いです。

自身のNFTを担保に暗号資産イーサリアムを借りることができ、貸し手にとっても従来の分散型金融(DeFi)プロダクトよりも10倍高い金利が魅力となっています。

こうした低迷するNFT市場を逆手にとったサービスにより、急速に事業拡大することに成功しているんです。

🍫ちなみに

OpenSeaは再び業界のリーダーとなるべく、‘OpenSea 2.0’に向かっています。

この意思決定の背景には、ユーザーから「OpenSeaはもはやNFT業界のリーダーではなく、フォロワーになっている」というフィードバックがありました。

それを受けて、運営文化・プロダクト・技術を一から見直し、プロダクトの大幅アップデートを計画しているんです。

そして、ユーザーから直接得たフィードバックをもとに瞬時に改善、開発をしていくことのできる、少数精鋭体制に移行したのです。

サムネイル画像:OpenSeaのサイト

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