45 【共通テーマ投稿】日本の産業成長に今、何が必要か

2023年3月19日
全体に公開

 NewsPicksの運営チームより、新しい試みとしてトピックスオーナーが共通のテーマで書く、「テーマで投稿企画」のお誘いがありました。ということで、私も書いてみたいと思います。

 日本の産業成長に何が必要か。様々あると思いますが、私からは3点あげておきたいと思います。私の今回の視点は個々の産業というよりは、もっとマクロレベルです。過去に本トピックスで取り上げたものもありますので、ここではエッセンスだけにして、関連トピックを読み進めて頂ければと思います。結構、月並みなことを言っていますが、このあたりを変えるだけで、本来、やるべきことに時間と資金をかなり回すことができると思っています。

その1 紙仕事を減らすこと

 かなり月並みな話題から入ります。しかし、その月並みな話題はもっと深刻に捉えるべきだと思っています。

 私は、なんでもデジタル化が良いとは考えていません。しかしながら、紙を出さなければいけない作業が多すぎると感じます。たまに、シンガポールから日本での様々な手続きが発生しますが、紙が多い。ウエブで入力するだけと思ったら、紙で出力して郵送してくださいとなる経験が何度かありました。海外にいるので時間がかかるので電子的な方法で良いかという質問に対しても答えはノー、国際郵便で、と言われることがあります。また、郵便小為替など日本国内でないと入手困難(ふつうは不可能)なものが必要なこともありました。日本にいる家族や知人に代行をお願いできないかと言われることもありますが、今の時代、皆忙しくしています。

 これは、海外にいるから特例を認めてくれという主張ではありません。日本国内にいても、こうしたプロセスは無い方がプラスでしょう。なぜ、そこまで紙にこだわるのか、という合理性がないからです。電子的なものは複製が簡単であり、信頼できない、ということなのでしょうか。単に過去の習慣が変えられないからでしょうか。

 似た場面として、ハンコが必要で手書きサインはダメだという場面もあります。ハンコはそこらへんで数百円でも入手出来て誰でも押せます。しかし、手書きサインはかなり似せて書いても、完全に同一なものを書くことは難しいですし、いざというときは筆跡鑑定でバレます。それでもなおハンコが良い、という点について、合理的な回答を得たことは一度もありません。

 無論、デジタル処理が出来ない方もいるでしょう。そうした人は、従来型で紙で処理すればよいだけの話です。問題なのは、デジタルで処理できるはずなのにそれをしていない、あるいは中途半端なデジタル化、使いにくいインターフェイスといったところです。

 こうした煩わしい工程にかかってしまう時間とお金を、本来の仕事に向けること、それが必要だと思います。かつて、SNSでそういう趣旨のことを書いたときに、「数時間ぐらい紙の処理に割いたら?、これが日本のやり方だから」というコメントもらったことがありますが、その数時間を意義のあることに使うべきではないかと思います。時間が無限にあるのであれば別ですが。(無限にあったとしても、意味のある時間に費やす方が良いかとは思うのですが)

 関連したテーマは何度か書いています。

その2 「過剰な言葉」を使った報道が無くなる事

 日本について、過大あるいは過小評価をするような報道が目立ちます。報道と呼べるのかわからないものまで含めると、日々、日本がダメという論調をみており、これを繰り返されれば、本来あっても良い自信もなくなるよな、と感じます。確かに数字を見れば成長をしていないという部分はありますが、それをずっとあげつらっていて何が面白いのかと感じざるを得ません。そこまでダメだ、問題だと感じるのであれば、そう主張するメディアや論者は、改善点もセットにしてあげるべきでしょう(妙な精神論に止まるのではなく)。

 これからの時代を担う若者はどう受け止めているのでしょうか。これから人生のゴールが見えている世代が、日本はダメだダメだといって、何かしているのであればよいですが、言っているだけという姿には気が滅入ります。ダメだと言われた日本を担うのは若い世代ですし、その世代に支えられるのは人生のゴールが見えている世代です。なんだか無責任な気がしませんか。

 機会があれば、次世代の若い人たちと対話をして記事にしてみたいとも思っています。

 今年の初めに、「中庸」な日本論について書きました。

 他方で、人目に付くタイトルにしないとクリックされない、という問題もあるでしょう。しかし、長期的にはそれをやっていると自らを滅ぼすことになってしまうのでしょうか。

その3 データや事実(定量)と合理的な推論(訂正)に基づくビジネスインテリジェンスを徹底化すること

 最近なのか、昔からなのか分かりませんが、データの使い方が恣意的だと感じられる記事、動画、音声等々のコンテンツが少なくありません。コロナ禍という特殊な時期があるので、経済データなどは少なくともコロナ禍前の基準を見なければ、意味がありません。2020年から2022年のデータをみて、ほら、日本はだめだという記事や動画を何回目にしたことか。

 しかも、そうしたデータを著名な学者や識者が何も言わずに使っていることもありました。編集段階で何も議論がでなかったのかとも思いました。高名な人が出ていれば信頼されやすくなりますし、公共のメディアで掲載されれば疑問も持ちにくいでしょう。もし、分かっていて、ページビューやトラフィックをとるためにやっているのだとしたら、罪深い所業と言わざるを得ません。

 軸の取り方が恣意的なもや、結論ありきを補強するためにデータを持ってきたりしているもの・・・今後機会があれば、そうした記事を具体的に挙げて、何が問題なのかということも論じてみたいと思います。

 この視点は、本トピックのかなりの記事に通底していますが、主要な記事を書きに挙げておきます。

 産業強化、というお題の入り口で終わった感はありますが、その前に基本的なところからと思い書きました。その程度はやっているはずだという声も上がりそうですが、そうでもない、というのが私の今までの感想です。

 年頭記事で「中庸な日本論」で書いたのは、まずは、冷静に自分自身を見つめなおすことが趣旨でした。それがスタート地点ではないでしょうか。そもそも論として、日本は様々な部分で力を持っており、色々やれるはずです。変化に鈍いという見方もありますが、私は個々のレベルではそうは感じません。そうした本来の力を出すために、ここで話したような3点は少なくとも課題だと思います。月並みで何気ないように見えるが深刻な問題、その早期解決が必要だと思いますし、すでに解が出ているのでやるだけでは無いかと思います。

(バナー写真:Unsplash/Louie Martinez

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