「ゼロ」飲料や果汁は、ソーダやジュースの健康な置き換えなのか

2022年3月15日
全体に公開

日本は3月15日。昨日はホワイトデーを迎え、バレンタインデーのお返しをした方もいるのではないでしょうか。当然ですが、こちら米国には「ホワイトデー」なるものは存在しませんので、なんだか懐かしい響きです。

そんなホワイトデーにちなんで、今日は砂糖の研究をご紹介したいと思います。

私自身、実は何を隠そう「スイーツ男子」です。しかし、昔から「甘い物はダメ」と言われ続けてきたからか、少し罪悪感を持つこともないわけではありません。そんな時、つい手が伸びてしまうのが、人工甘味料や果物です。

砂糖は本当にダメなのか?砂糖がダメなら、人工甘味料や果物にすれば良いのか?

そんな疑問に答えようとしている論文を、今日はご紹介できればと思います。

この論文は、イギリスのBMJと呼ばれる医学雑誌に掲載された、「メタアナリシス」と呼ばれる手法を用いた論文です[1]。

私自身もこのメタアナリシスという手法を用いて研究をすることがあるのですが、この手法で研究を行う場合、基本的に解析対象となるデータは新しく研究に参加する人を集めてきてとったデータというわけではなく、これまでの研究ですでに報告されているデータをかき集めてくることになります。このため、比較的大きなデータを扱うことができるというメリットがあります。

結果として、今日ご紹介する研究では、約1000万「人年」ものデータを扱うことができています。ここで、「人年」という単位は、「人数」×「年数」を表す単位です。例えば、100万人のデータが10年分あれば、1000万人年ということになります。

この膨大なデータから、砂糖含有飲料、人工甘味料含有飲料、フルーツジュースそれぞれの消費量と2型糖尿病の発症との関連性について評価をしています。

この研究では、1日あたり平均的に250ml飲む習慣がどのぐらいの糖尿病リスクと関連するのかを推定しています。250mlというのは、500mlのペットボトルで半分なので、それぞれコーラのペットボトルを1日半分ほど飲む習慣、「コーラだと体に悪い」といってコーラ・ゼロのペットボトルを1日半分飲む習慣、「いや、コーラ・ゼロすら体に悪そうだから果物にしている」といって100%フルーツジュースを飲む習慣と置き換えられるかもしれません。

すると、1日あたり250mlのコーラを飲むグループ(実際には、砂糖含有飲料)で18%、コーラゼロで25%、フルーツジュースで5%の糖尿病発症増加との関連を認めていました。また、肥満の影響を調整してみると、それぞれ13%、8%、7%という数値をとりました。

これらの数字は、実際には「幅」のある数字で、その「幅」には重なりがあるので、これらの数字を単純比較してコーラの方が良い、フルーツが良いと論じることはできないのですが、これらの数字からは、「どの飲料を選んだとしても、習慣的に飲んでいる場合、2型糖尿病の発症リスクにつながるのでは」という結論が導かれます。

ただし、コーラゼロやフルーツジュースのデータでは、「出版バイアス」と呼ばれるバイアスが疑われている点に注意が必要です。「出版バイアス」というのは、研究を行ってみて否定的な結果が出た場合に、肯定的な結果が出た研究に比べて出版されにくいということに起因するバイアスです。

例えば、「きっとコーラゼロでも糖尿病は多く起こるだろう」と仮説を立てている研究者が、自分の仮説を証明するために研究をおこなって、「糖尿病は増えない」とデータが示した場合、「いや、そんなはずはない」といってその結果を公表せずに捨ててしまうということが起こりえます。

過去のデータを集めてきて行うメタアナリシスのような研究の場合、肯定的な結果ばかりが集まって、このような出版バイアスが増幅されてしまい、結果として、現実世界で起こっていることとは異なり、関連があるようにデータが導かれてしまうということが起こりうるのです。

少し横道に話が逸れてしまいましたが、この研究から導くことのできる結論は、「砂糖含有飲料の習慣的な消費は、2型糖尿病発症リスクとの関連が見られる」というものです。また、人工甘味料やフルーツジュースでも同様の関連が見られましたが、報告バイアスなどの可能性があり、前者ほど明確な答えはこの研究では得られませんでした。

この研究にとどまるものではありませんが、こういった研究を根拠に、砂糖の摂取は抑えるのが望ましいとされており、人工甘味料なども良い置き換えにならないかもしれない可能性が考えられています。

まだまだ明らかではない点も残されるものの、砂糖摂取の習慣は、どうやら2型糖尿病発症との関連がありそうです。2型糖尿病は、「しめじ」(神経、目、腎臓)に代表される各臓器の障害につながる生活習慣病の一つです。防げる部分があるのなら、防ぎたいものです。

ただし、あくまでここでは「習慣」的な摂取について論じており、たまに楽しむスイーツを否定するものではありません。そんな私も、この原稿を書きながらピスタチオのモンブランを楽しんでいます。

参考文献

1.        Imamura F, O’Connor L, Ye Z, et al. Consumption of sugar sweetened beverages, artificially sweetened beverages, and fruit juice and incidence of type 2 diabetes: systematic review, meta-analysis, and estimation of population attributable fraction. BMJ 2015; 351. Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26199070/. Accessed 14 March 2022.

応援ありがとうございます!
いいねして著者を応援してみませんか



このトピックスについて
Ujike Yoshinoさん、他10650人がフォローしています