セコイア・キャピタルの会社3分割、最新アップデート

2023年7月27日
全体に公開

著名ベンチャーキャピタルのSequoia Capital(セコイア・キャピタル)が世界の地域別に会社分割すると発表したのが今年6月。

それからまもなく2ヶ月。

いくつかのアップデートがあったので、見ていきましょう。

☕️coffee break

セコイアは、具体的に会社を①米国・欧州、②中国、③インド・東南アジアの3つに分割し、2024年3月末までに中国とインド・東南アジアは独立した運営に変更すると発表していました。

アップデートは以下の通り。

●インド・東南アジア

アップデート:すでにSequoia Capital India、Sequoia Capital Southeast Asiaから、Peak XV Partnersにリブランディングを完了。

インド・東南アジアでは、これまでに世界最大の未上場EdTech「BYJU’S」、ホテルチェーン「OYO」を筆頭に、インドの102社のユニコーンのうち、約3割に投資してきました。

インドから世界へと拡大していくスタートアップを相次いで輩出してきた中で、米国のセコイアの投資先と、競合関係になる企業が増えてしまったため、分割しようというわけです。

米国投資を解禁か:これまでは投資先もインド・東南アジアに特化してきましたが、これからは投資先間の競合や、地理的な制限がなくなり、米国の投資家(LP候補)との面談を積極的に行っています。米国の各分野トップ企業への投資を狙うものと見られます。

●中国

アップデート:ファンドのLP獲得に奔走中

これまで高い運用成績を上げてきたことから、中国だけでなく、米国投資家も数多く出資していました。とはいえ、昨今の米中問題の悪化を考慮すると、一部の米国投資家はファンドへのLP出資を控える可能性もあります。

ゆえに、既存のLP投資家とのさらなる関係構築、新規のLP探しが最重要課題の1つになっており、11月には上海で3日間かけて、LP向けのイベントを開催する予定です。

次のファンドは人民元建て:昨年の80億ドルのファンドはドル建てでの調達でした。実は同時に人民元建てのファンドを杭州市政府に登録し、ファンド設立の計画が進んでいました。

ファンドは約200億元(約3925億円)を目標としており、アリババなどが本社を構える杭州市政府が約50億元(約983億円)を出資することが予定されています。

中国経済の成長が不振に陥っており、地方政府も負債を抱えて厳しい状況ですが、中国を代表するスタートアップを輩出してきたSequoia China(HongShan)に高い期待をしているわけです。

※ 米ドル建てのファンドから資金調達した中国スタートアップは、香港やニューヨークなどの中国外で、人民元建てのファンドから調達したスタートアップは中国本土でIPOするのが一般的です。

なお、Sequoia Capital Chinaは、アリババ、バイトダンス、DiDiなど、中国テックを代表する企業に投資を行い、運用資産は560億ドルを超えています。

代表のNeil Shen(ニール・シェン)氏は、自身も起業家として、2度も米Nasdaq上場を経験している人物です。

シンガポール拠点開設を検討:米中の両国に対して中立なシンガポールで、中国人起業家の事業立ち上げ・拡大を支援すべく、現地拠点の開設を検討しているようです。

また、拠点開設後にはシンガポールから、東南アジアのスタートアップに投資することも検討しています。

🍪ちなみに

最後に、米国セコイアです。ここでは、組織再編に動いています。

①パートナー5人が退社し、投資チームは15%減の28人に

注目すべき点は、マイケル・モリッツ氏が第一線から退いたことと、暗号資産投資メンバーの退社です。

マイケル・モリッツ氏は、TIME誌出身でセコイアで初めてスタートアップ投資に携わり始めたものの、Google、Yahoo!、PayPal、eBay、YouTube 、Stripe、Instacartに投資するなど、伝説のベンチャーキャピタリストとしても知られています。

今後は、2010年の立ち上げ時からアドバイザーとして関与していたセコイアのウェルスマネジメント事業「Sequoia Heritage」に注力します。

また、昨年11月に投資先のFTXが経営破綻しました。

セコイアが投資したのは運用資金の3%未満であったものの、2つのファンドを通じて、計2億1350万ドル(約298億円)を投資。ファンドに出資したLP投資家に謝罪し、一部の資金を引き上げることを許可する事態になりました。

今回、FTXへの投資を担当していたDaniel Chen(ダニエル・チェン)氏、Michelle Fradin(ミシェル・フラディン)氏も退社するなど、FTX破綻以来、暗号資産担当メンバーは3人が退社します。

②投資先の採用を支援するHR部門を縮小

好景気でスタートアップにも追い風が吹いていた2021〜2022年初めまでは、投資先の採用ニーズが3倍にまで増加したことで、SequoiaでもHRチームを拡大してきました。

しかしここにきて投資先の採用ニーズが落ち着いたため、HRチームの3分の1に当たる7名を解雇する予定です。

サムネイル画像:Wikimedia Commons/Coolcaesar

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